「MT-28」「MTIウェッジ」など数々の名器を世に送り出し、日米両ツアーで多くのプロ支給品を手がけたクラブ設計家、宮城裕治氏が流行に惑わされないクラブ選びとクラブ設計の真実をクールに解説。今回はドライバーの重心高と選び方について教えてもらった。
画像: 最近は高重心系のドライバーが増えている!?(写真はイメージ)

最近は高重心系のドライバーが増えている!?(写真はイメージ)

アマチュアはスピン量2500回転くらい欲しい

みんゴル取材班(以下、み):月刊ゴルフダイジェストの人気連載「こちら東灘区ギア研究所」で「スリクソンZXiドライバー」のヘッド計測データが公開されました。ちょっと意外だったのは4モデルすべて<低重心率>が70%を超え、「ZXi」と「ZXi MAX」が<非常に高重心>、「LS」と「TR」も<高重心>に分類されていることです。

宮城:<低重心率>はフェース面上の重心高さ<SS>を表しています。重心を深くすると<SS>が上がり、浅くすれば下がります。深重心の「ZXi」や「ZXi MAX」が高重心になるのは当然として、浅重心の「LS」や「TR」は意図して高重心に設計されているはずです。

み:ねらいは何でしょう? 気になって調べてみたら、ピンの「G430LST」やキャロウェイの「パラダイムAi SMOKE◆◆◆S」などけっこう高重心系があります。アスリートモデルといえば低重心・ロースピンと思っていましたが。

宮城:その誤解を広めたのはクラブメーカーです。低重心・ロースピンを飛距離に直接結びつけて語ってきたからです。しかし、物を飛ばしたり投げたりするスポーツでスピンを悪のように言っているのはゴルフだけです。大谷翔平やダルビッシュがショートアームで投げているのはスピンを入れるためだし、ヤリ投げの選手もスピンをかけて飛ばしています。スピンが浮力だからです。「ZXi」もスピンを必要とするプレーヤーからのフィードバックで高重心になったのでしょう。

み:スピン量が少ないとどんなデメリットがありますか?

宮城:ボール初速が70m/s以上出るならスピン量2000回転以下でも飛びますが、65m/sくらいだとボールがドロップし始めます。女子プロが60m/sくらいでも飛ぶのは打ち出し角が高いからです。ふつうのアマチュアのヘッドスピード、ミート率、打ち出し角だと2500回転くらいは欲しい。ちなみにUCLAのゴルフ部を訪問したとき、彼らは2200から2500回転を目指して練習していました。

み:大学生ならヘッドスピードはプロと変わりません。意外とスピン量が多いですね。

宮城:最近はプロもスピンが減りすぎるクラブを避ける傾向があります。理由はスピンが少ないとチーピンなどの危険球が出やすいからです。

み:スピンが多いとサイドスピンも増えてよけいに曲がるのでは?

宮城:バックスピンとサイドスピンを分けて考えること自体が間違っています。ボールが回転するのは一定方向で、球が曲がるのはその軸が左右に傾くからです。スピン軸はスピン量が多いと傾きにくく、少ないと傾きやすくなります。

み:なるほど。ずばり、ふつうのアマチュアには低重心系と高重心系のどちらがおすすめですか? 「ZXi TR」や「ZXi LS」が高重心なのでヘッドスピードだけでは決められないと思いますが。

宮城:その通りです。ヘッドスピードによってスピンは増減しますが、打点や入射角も大事です。ぼくがフィッティングをするときには依頼者のクラブを見てフェースの打痕やソールの傷をチェックします。打点がフェースの下に集まる人はスピンが増えるので低重心系、真ん中よりも上に当てられる人はスピンが減るので高重心系をおすすめします。

み:入射角と重心高の関係についても教えてください。

宮城:低重心系の恩恵が大きいのはシニア層です。パーシモンでゴルフを覚えて上からボールを潰すように打っている人は低重心系を使うことでちょうどいいスピンで飛ばすことができます。逆にただヘッドスピードの出ないアマチュアは高重心系がいいでしょう。重心が高いとヘッドが上から下に動こうとするので振りやすくスピードが上がります。スピンが増えて飛ばなくなったとしても球が曲がりにくくなるので結果的に前に行きます。

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