解説/伊丹大介プロ
1976 年生まれ、宮城県出身。名門東北福祉大を経て2004 年にプロ入り。現在はジュニア育成やゴルフの普及活動を精力的に行っている
面白い動画がある。「テーラーメイドゴルフ日本公式チャンネル」(YouTube)の“Tiger Woods'Driver Clinic"というタイトルがサムネイル画像にあるものだが、チームテーラーメイドのタイガー・ウッズとローリー・マキロイ、ネリー・コルダの豪華3選手が登場する。
タイガー・ウッズ(左)
「ここ最近は徹底してフェードで攻める」
以前はドローヒッターだったが、近年は飛距離が落ちても置きに行くことを重視しフェードを多用
ローリー・マキロイ(真ん中)
“キッサーカット”でプレーの幅が広がった
フェードを打つようになりショットレパートリーが増えて、苦手コースでのプレーの幅が広がった
堀 琴音(右)
ドローからフェードに変えて完全復活
3年連続でシード落ちも、ドローからフェードに変え21年にツアー初優勝。ショットが安定し完全復活
注目していただきたいのは、16分強の動画の10分30秒過ぎ当たりからのタイガーがマキロイにフェードの打ち方を教えてもらうパート。マキロイのフェードをタイガーが「キッサーカット」と呼び、そのフェードを打って見せてくれと頼むと、マキロイが打ち方を解説してくれるのだ。
この「キッサーカット」、どうやらタイガーが考えた独特のネーミングで、「ン~ッア」とキスの擬音を口走りながらタイガーが投げキスをするようなポーズをするので、タイガーにとってはこのマキロイのフェードのインパクトイメージがキスに近いのか、はたまた弾道のイメージなのか、あるいはキッサーの「追従する」という「キスする人」以外の意味から名付けられたのか、その真意は定かではないが、タイガーはマキロイのフェードをそう呼ぶのだ。
フェードで結果を出す選手が続出!
世界No.1のスコッティ・シェフラーを筆頭に、PGAツアーではフェードヒッターの選手が目立って活躍している。国内女子ツアーでもフェードに変えて復活した堀琴音や2022年にフェードに変えた小祝さくらなど、フェードに球筋を変更する選手も増えてきた。
「ここ最近のタイガーはティーショットでフェアウェイに置きにいくときに、スライスに近いフェードを多用していますね」と言うのは伊丹大介プロ。
「パワーフェードという言葉が流行りましたが、マキロイのキッサーカットはよりコントロール性を重視した『ストレートフェード』と言える球です。最近のツアーでは男子も女子も、フェードのコントロールショットを多用する傾向があります。以前は左ドッグレッグの多いオーガスタはドローで攻めるのがセオリーでしたが、昨年のジョン・ラームなどは徹底してフェードで攻めていました。また飛距離がほしい女子プロも、以前はドローが多かったですが、最近は持ち球をフェードに変える選手が増えてきました。弾道の安定性はフェードのほうが有利でアマチュアの方にも同じことが言えます。アマチュアも“キッサーカット”を覚えれば、スコアメイクにきっと役立ちますよ」
“キッサーカット”は上級者への近道
フェードはドローに比べ、高い球が打ててランが出にくいため、ボールをコントロールしたい状況で打ちたい球だ。ドローにくらべてフェースローテーションが少なく曲がり幅が抑えられフェアウェイに置きやすい。
フェアウェイキープ率が格段に上がること間違いなし!
特にキッサーカットが有効な状況は、
・狭いホール
・左にハザードがあるホール
・右ドッグレッグ
今回はキッサーカットの特徴について解説した。明日の18時に公開する後編では、実際にマキロイがタイガーウッズに教えたキッサーカットのポイントをご紹介する。
PHOTO/Norio Tuburaoka、Tadashi Anazaki、Blue Sky Photos
THANKS/ガーデン藤ヶ谷ゴルフレンジ
※週刊ゴルフダイジェスト11月5日号「キッサーカットを打ってみよう」より一部抜粋