こんにちは。SPORTSBOX AI 3Dスタッフコーチの北野 達郎です。今回は2024年国内男子ツアー賞金王に輝いた金谷拓実選手のスウィングをスポーツボックスのデータと共に解説させて頂きます。
金谷選手のスウィングの特徴は、
①インパクトで胸と骨盤の回転角度が大きい
②ハンドファーストのインパクトで、胸は右に残る
の2点になります。また後半は「ハンドレイトとハンドファーストの違い」についても解説しています。それでは早速チェックしてみましょう!
胸と骨盤の回転が大きいタイプに合うストロンググリップ
まず最初の特徴の「胸と骨盤の回転角度が大きい」点ですが、金谷選手はインパクトで胸(CHEST TURN)が39度(左)、骨盤(PELVIS TURN)が42度(左)を向いています(角度はターゲットラインと平行が0度になります)。スポーツボックスAIが独自で調査したインパクトでの回転角度の海外男子ツアープロレンジ(範囲)は、胸が26度〜34度(左)、骨盤が32度〜43度(左)ですので、金谷選手はいずれも海外男子ツアープロレンジと比較すると回転が大きいと言えます。
この胸と骨盤の回転が大きいタイプには、ストロンググリップがマッチします。金谷選手のアドレスを見ると、左手は左手甲のロゴマークがはっきり見えるほど上から、右手は親指と人差し指の間のくぼみが右肩より右を指すほど下から握っていて、いずれもストロンググリップです。通常、インパクトで体が開くとフェースも開きやすくなりますが、金谷選手はフェースを閉じやすいストロンググリップで握ることで、フェースが開かないためのマッチアップをしています。もし体が開いて振り遅れによるプッシュスライスにお悩みの方がいれば、ストロンググリップを試しても良いでしょう。
ハンドファーストのインパクトで、胸は右に残す
2つ目の特徴は、「ハンドファーストのインパクトで、胸は右に残す」点です。「CHEST SWAY」は胸の左右の移動距離を表しますが、金谷選手はインパクトで胸はマイナス8.7cm(右)に残っていますが、プレーヤー正面からのシャフトの角度を表す「SHAFT FON ANGLE」は、マイナス4度(右)とハンドファーストでインパクトしています(胸はアドレスが0cm、シャフト角度は地面と垂直の位置を0度とします)。
この「胸は右、クラブはハンドファースト」のインパクトには主に2つの効果があります。
まず胸が右に残ることで、クラブのアタックアングル(入射角)はアッパーブローになります。そしてクラブがハンドファーストにインパクトするとインパクトロフトが立ちます。入射角がアッパーブロー、インパクトロフトは立つ、どちらも「スピン量を減らす」効果があり、ヘッドスピードが速いプレーヤーには効率良く飛距離アップすることができるので、金谷選手もインパクトの効率が良い選手と言えます。
同じアッパーブローでもハンドレイトとハンドファーストはどう違う?
最後にハンドレイトとハンドファーストの違いについて解説します。ドライバーは「アッパーブローで打つと飛距離が伸びる」とよく言われますが、実はアッパーブローだけでは飛距離は伸びません。下の画像は左が「ハンドレイト」のアマチュアの例、右が「ハンドファースト」の金谷選手の3Dアバターです。インパクトのシャフト角度が、アマチュアはプラス11度のハンドレイト。金谷選手はマイナス4度のハンドファーストです。
ハンドレイトの場合は「インパクトロフトが増える」ので、入射角がアッパーブローでもスピン量が増えてしまい、飛距離をロスします。しかし金谷選手のようにハンドファーストでアッパーブローならスピン量を減らせます。その違いを生むのは「骨盤の左右の移動距離」(PELVIS SWAY)です。左のアマチュアはプラス2.0cm(左)と、骨盤があまり左に動きませんが、金谷選手はプラス7.4cm(左)でしっかりと左に骨盤が移動しています。「胸は右、骨盤は左」という、この胸と骨盤の左右差によって体の軸は右に傾くので、その結果としてアッパーブローになるのです。ですので、手でボールに合わせたハンドレイトのインパクトではなく、まずハンドファーストのインパクトができるようにして、それから胸と骨盤の左右差を作るようにすると良いでしょう。
今回は金谷拓実選手のスイングデータを解説させて頂きました。国内男子ツアー賞金王に輝いた金谷選手。来シーズンは欧州ツアー(DPワールドツアー)やPGAツアーでも是非活躍して欲しいですね!