まずは「SR」を打ってから、シャフトのフレックスを決める
GD この時期になると来年(2025年)モデルの噂が流れてきます。USGAの登録画像やツアー情報が漏れてきて、「テーラーメイド」、「キャロウェイ」、来年は「ピン」も同時期に新製品が出るようなことが聞こえています。2月には店頭に試打クラブが並び打つことが可能になると思いますが、今日は店頭における試打の注意点を教えていただけますか?
長谷部 ある程度、クラブなり、メーカーなり、スペックなりを決めて試打に行くことだと思います。その際に今使用されているマイクラブと比較をされるのが一番です。多くの人がマイクラブを持たずにフラっと行って、いきなり試打を始めてしまうことがあるのと、「何かお勧めはありますか?」というラフな質問を投げかけてしまうっていうことが結構あると思うので、なるべく何の目的で新製品の試打に行くのかを明確にしたほうがいいでしょう。
GD 自分のクラブを持っていくっていうのは悪いことではない?
長谷部 悪いことじゃないと思います。今使っているクラブの球筋とか、打点跡、ソールのこすり傷を見てアドバイスしてくれる店員さんがいると思うので、使い慣れたクラブを持ち込んでいただいて、それとの比較で新しいものを試すのが一番理想的だと思います。プロゴルファーは必ずそうやっていますからね。今のクラブと新しいクラブを比較して、替える、替えないを決めています。
GD 試打をする際は、今使っている同じメーカーものから打ったほうが、いいような気がするんですけど?
長谷部 そうですね。「ピン」を使っていたら「ピン」の新しいものを試すのが基本的な流れだと思います。ただ、毎年少しずつ変化をしたり、進化を求めているメーカーからすると、従来のものと全く同じものは出さないので、必ずどこかが変わっています。 そういう中で純正シャフトの性能が変わったり、ヘッドの重心位置も変わっているので、それが自分に合うか合わないかをきちんと見極めることが必要です。
過去のクラブと今のクラブの違いは、「テーラーメイド」、「キャロウェイ」で言えば、それぞれ独自の開発のコンセプトで流れができています。最近はモデル数が増えてきているので、「MAX」という名称のものがあったり、「LS」というモデルがあったり、その中間のスタンダードモデルと言われるものがあったりします。
3つの中で、「MAX」を使っていたから次も「MAX」でいいのかっていうと、必ずしも正解じゃない場合もあります。 メーカーの考えている進化とか変化に対して、全てのゴルファーがついてきてない可能性がありますよ。
GD 「店頭のデータは甘いよね」っていうことを、よく聞きますが、この噂は本当ですか?
長谷部 現実的にはドライバーで200~210ヤードがアマチュアのリアルな飛距離だとして、その飛距離を正確に提示しても購買意欲が出てこない。「なんだ、自分はそんなものなのか」って現実を突きつけられることに対して、それを良しとしないお客さんもたくさんいらっしゃる。
多少なりとも下駄を履かせるというか、コース球のデータに変換したりとか、ちょっと追い風的な話で、フラットな状態で良い結果になりやすい条件設定をしてあるというのはあると思います。
GD 今まで使っていたクラブを購入した経緯、動機というのは、重要なデータになりませんか?
長谷部 なぜ今のモデルに買い替えたのか、理由は可能な限りご説明いただいたほうがいいと思います。「それを踏まえてこのクラブに替えたんですね」ってことを理解してもらうことで推奨されるクラブも変わってくる可能性あります。
例えば重いから軽くしたのに対して、また重いものを勧めるのは、絶対NGになりますが、「軽いクラブに替えたけど結局ダメだったから軽さに疑問がある」ってひと言加えてもらえれば、少し重いものも試しましょうかみたいな推奨にもなってくると思うんですね。
GD シャフトのフレックスで「SRは万能的」という話を、この連載でもしてきましたが、「SR」を勧めてくる店員はどうなんですか?
長谷部 「R」を使っている方にとってみれば、「SR」をお勧めされるのは好奇心が高まるというか、自分もちょっとヘッドスピードが速いと認識されたのかって優越感があるじゃないですか。気持ちがくすぐられると思うので、悪い話にはならないです。
「S」を使っている方にいきなり「R」を勧めても、実際のところは合っていたとしても抵抗感はあると思います。「SR」だったら無難に選んでいただけるのであれば、「SR」を勧めるのは決して悪い気はしないので、「松竹梅」の真ん中を選びたい日本人のゴルファーにとっては、非常に心地良いスペックだと思うんですよね。
GD いい店員に当たればいいのですが、とりあえず「SR」を勧めておけば間違いないという店員も中にはいると思うんですが?
長谷部 お客様からのメッセージが少ない場合には結構取りやすい手段ですよね。 いきなり「R」を勧めても、プライドを傷つけてしまうんであれば、「SR」を打たせて、そこから上下に振るというのは取りやすい接客方法だと思います。十分でない情報の場合には、「SR」をお客様に説明の意味も含めておすすめすることはあると思います。
ただ、最終的に「このクラブがいいですよね」っていう結論を導き出そうとするときの説明に、お客様のフィーリングの話だとか、振っている様子とかをあまりせずに、「今のは飛んでいますよね」みたいなデータだけを強烈に押してくる店員さんはちょっと避けたほうがいいのかなって気がします。
アマチュアの場合、打点がバラつくのでいい結果も悪い結果も出やすい。そういった中で、「平均値がここだからいいですよ」だったらまだ話はわかるんですけど、「一番このクラブが飛びましたよね!」って強くお勧めする店員さんがいたら、それは注意かなと思います。