大本命シェフラーの対抗馬になるのは……
他を寄せ付けない強さで年間王者となったスコッティ・シェフラー。2025年シーズンのランキング争いも彼が大本命となることは間違いないでしょう。
2024年シーズンの振り返りでも紹介しましたが、シェフラーの強みは恵まれた体格を生かした「飛ぶのに曲がらないショット」です。これは飛距離を求められるPGAツアーのコースセッティングと非常に相性がいい。
技術的な部分で死角がないとすると、気になるのはモチベーションとコンディションの維持ですが、こちらも障壁になるものはなさそうです。
2022年に続く2度目のマスターズ制覇を成し遂げたシェフラーですが、意外にもマスターズ以外のメジャー優勝はゼロ。そのためキャリアグラスラムというもう一段高い目標が次のモチベーションになるはずです。

スコッティ・シェフラー(PHOTO/Blue Sky Photos)
コンディションの面では、1月開幕に変更となった2024年シーズンを最高の形で終えられたため、こちらも問題はなさそう。賞金とフェデックスポイントが大きい「シグニチャーイベント(昇格大会)」とメジャー大会を中心に、いくつ優勝をもぎ取れるかが焦点になりそうです。
対抗馬はザンダー・シャウフェレや松山英樹といったランキングトップ10に入っている選手ですが、中でも注目したいのがローリー・マキロイです。
36歳のシーズンとなりますが、ドライバーの飛距離は健在。2024年シーズンのトータルドライブ(平均飛距離とフェアウェイキープ率の順位の合計値)は6位、平均飛距離は320ヤードとツアートップクラスを誇ります。さらには地元の欧州ツアーにも参戦しており、シェフラーよりも6試合も多く消化していることから、体力面の心配もなさそう。王者シェフラーの強力な対抗馬として期待したいと思います。

ローリー・マキロイ(PHOTO/Blue Sky Photos)
日本人は5人が参戦
24年シーズンのルーキー・オブ・ザ・イヤーには、33年ぶりのアマチュア優勝を果たしたニック・ダンラップが選出されました。そしてダンラップと同じく、ツアールーキーとして奮闘したのが久常涼です。23年の欧州ツアー上位の資格でPGAツアーにフル参戦した24年シーズンは、27試合に出場し17試合で予選通過。5月の全米プロでは18位、8月のウィンダム選手権では3位に入り25年シーズンの出場権も獲得できました。
ABEMAツアーで3勝を挙げ、シードを獲得。その後、欧州ツアーのQスクールからフランスオープン優勝、そしてPGAツアー参戦とチャレンジングなキャリアを重ねる久常。今年も一部欧州ツアーの大会に出場するなど、着実に経験を重ねています。上位に絡む活躍がなかったのでなかなか日本では取り上げられませんが、初めてづくしのツアー1年目でこの成績は立派です。2年目となる25年シーズンは、今年の経験を糧に優勝争いに絡む活躍を見せてくれるでしょう。

左からニック・ダンラップ、久常涼(PHOTO/Blue Sky Photos)
日本人選手は松山と久常のほかにも、予選会で3位に入った金谷拓実、米下部ツアーのポイントランキングの上位資格を持つ大西魁斗、そして久常と同じ欧州ツアー上位の資格で出場権を獲得した星野陸也の3人が、ツアールーキーとして参戦します。
1年目は移動やコンディション調整など、プレー以外の部分で苦労することもあるでしょう。3人とも自力も経験もある選手ですが、周りの選手のレベルもこれまでより1段上がってくるため思うように結果がついてこないかもしれません。
そんな状況になったとき、焦らず自分のプレーと向き合えるかがポイントになるでしょう。毎試合、上位や優勝だけを目指していてはフィジカルもメンタルももちません。あえて現実的な目標を設定し、着実にクリアしていくことで1年を通して安定したプレーをしてほしいと思います。
「勝ち切るガッツ」や「運」も大事
近年、下部ツアーやQTに出場している選手を見ていても、PGAツアーで戦う選手との能力差はほとんど感じられません。ダンラップのように学生であってもすぐに活躍できそうだなという選手も多くいます。日本人選手のレベルも非常に高く、PGAツアーに限らず欧州やアジアで活躍する選手が増えています。
これらは計測機器やスウィングの分析方法、トレーニングなどの手法が確立され、それがジュニアやツアーの出場権を持たない若手プロでも簡単にアクセスできるようになっていることが要因だと思っています。さらにはそのデータやメニューを、選手によって適切に伝え分けるコーチのスキルも上がってきています。
つまり多くの選手が非常に高いレベルにひしめき合っており、「誰が勝っても不思議じゃない状況」を作り出しているのです。そんな中でも勝利をつかみ取れるのは、「勝ち切るガッツ」や「運」といった目に見えないものを持った選手になるでしょう。
何でも数字で説明がついてしまう時代。選手の秘めた力やドラマが生まれる予感のPGAツアーから、2025年も目が離せません。