女子プロのツアーコーチである森守洋柳橋章徳大西翔太中村修の4人が、もうすぐ終わろうとしている2024年の女子のプロゴルフツアーを振り返る。
画像: 座談会に参加した左から森守洋コーチ、大西翔太コーチ、柳橋章徳コーチ、中村修コーチ

座談会に参加した左から森守洋コーチ、大西翔太コーチ、柳橋章徳コーチ、中村修コーチ

オリンピックイヤーの今年、シーズン前半は代表選手争いが畑岡奈紗、笹生優花、古江彩佳、山下美夢有の4人で争われ、最終的に笹生と山下の2人が代表に。8月のパリ五輪で山下はメダルは逃したものの4位入賞、その山下と最後まで代表を争った古江彩佳は失意の中出場したアムンディ・エビアン選手権でメジャー初優勝を果たす。一方、国内ではプロ2年目の竹田麗央がメジャー2勝を含む8勝で年間女王に輝いた。

中村: オリンピックで山下選手は最後までメダルに届くかという期待を持たせてくれて、最終日の16番のパー3で池に入れてしまい残念だったけど、日本の選手が世界で戦えることを見せてくれた年でもあったんじゃないかな。しかも、それが身長150cmでHS40m/sの山下選手だったり、153cmの古江選手もだけど、いろんな選手に可能性があることを示してくれたと思うんだよね。今年一年の女子ゴルフ界の中ではそこは大きかったんじゃないかなと思いますよね。

画像: 小柄な体格ながら世界と戦った古江彩佳(左)と山下美夢有(右)(ともにAIG女子オープン、撮影/姉崎正)

小柄な体格ながら世界と戦った古江彩佳(左)と山下美夢有(右)(ともにAIG女子オープン、撮影/姉崎正)

森: これは、みんな分かっていることなんだけれど。日本人の技術レベルは1ミリも劣っていないですよね。むしろ体が小さいぶん、米国人よりも平均的に上手いんですよ。要はホーム&アウェイにおけるハンディに飲み込まれちゃうから、やられちゃうだけなんですよ。だからたぶん、日本のシード20位くらいの選手が行っても、環境が整っていたらシードは獲れるんですよ。それくらい差は無いというか。日本人のほがスウィングレベルは高い。

中村: その象徴的な出来事が、古江選手のベアトロフィー受賞で、これは日本人初ですよね。西郷真央の新人王とダブル受賞です。一方で、国内ツアーでは、2年目の竹田麗央選手が8勝を挙げて年間女王を獲りました。

画像: KKT杯バンテリンレディスで初優勝を挙げ、年間8勝した竹田麗央(撮影/姉崎正)

KKT杯バンテリンレディスで初優勝を挙げ、年間8勝した竹田麗央(撮影/姉崎正)

大西: 竹田さんは、去年、練習ラウンドなんかも一緒にしていたんですけど、ショットの内容はそんなに変わっていないんですよね。去年もショットはピンに行くし、パターも入っていたんですけど、でもスコアは今年とまったく違ったじゃないですか。スタッツ的には飛距離はほぼ同じですけど、精度が凄く上がっている。でもそういった技術だけじゃなくて、自分に自信を持つというところが去年と今年は全然違いましたよね。

中村: 勝ち方を覚えたというかね。技術的に本人が言うのはアプローチが上達したと言っているのと、無駄なボギーを打たなくなったということ。あとは、自信を持って振り切るということですね。夏のエビアンでラフにばかり行って一時期、振り切れなくなっていて。それをもう一回見直して、ちゃんと振り切るようにしたのが大きかったみたいですね。

柳橋: 森さんは最初から、「あの子は近いうちに100%来るから」って言ってましたよね。

森: 彼女がツアーに出る前にうちの合宿に参加したことがあって。それで、今年、優勝するたびに「合宿の成果出てるね」って言ったら、毎回丁寧に「ありがとうございます。合宿の成果が出ています」って返してくれて、凄いイイ子(笑)。たった1日か2日しか来ていないんだけど。

一同: 笑。

森: いや、だって既に出来上がってたからね、スウィング。何も言うことが無いんですよ。それくらいレベルが最初から違ったから。

中村: 柳橋さんは、竹田選手をどうみますか?

柳橋: いや。もう驚異的でしょ。ブッチ切りじゃないすか。欠点を探すのが難しいくらいじゃないですかね。今年は竹田選手の年でしたよね。

森: だから今アメリカに行くのは良いと思いますよ。選手は機を逃さないというのが大事なので。ピークは何回か来ると思うけど、そのピークの時にアメリカに挑戦をするというのは良いと思います。

中村: 叔母の平瀬真由美さんは、TOTOに勝った後の囲みで、アメリカに行って今の実力を試そうなんて気持ちじゃ絶対に通用しない。もう一度、イチからやり直すつもりじゃなければとてもじゃないけどやっていけないと、厳しいコメントをしていましたけどね。

森: いやぁ、僕は何勝もすると思いますけど。

中村: まあ、叔母さんだから厳しく言っているのもあるでしょうね。他に今年、気になったプロはいますか。

画像: 伊藤園レディスで優勝した山内日菜子(撮影/大澤進二)

伊藤園レディスで優勝した山内日菜子(撮影/大澤進二)

大西: 山内日菜子ちゃんとお父さんとご飯食べた時に聞いた話なんですけど、伊藤園で優勝する何週間か前に、宮崎空港へ向かう途中、橋から自殺しようとした人を止めたらしいんですよ。

一同: えぇ~!

大西: 飛び降りようとしている人がいて。日菜子ちゃんが「パパ止めて!」って言って、それでお母さんと3人で押さえて。その後に警察が来て、その人は助かったらしいです。本人は自分から言っていないけど、多分、表彰とかもされていると思います。

柳橋: それは運も引き寄せるわ。

森: 凄いね。世界の終わりじゃなく、終わらせないぞと。

大西: あと、よくゴミを拾うんですよ。これ拾ったら私良いことあるかもって拾う人いるじゃないですか。でも彼女はゴミすらも自分の体の一部って感じで拾っていく。

中村: 徳を積んでいるよね。それだけじゃなく、彼女は普段から良く練習してましたよね。

森: そうですね。だからパッと優勝も来るんですよね。あの混戦できましたもんね。

中村: もう宮崎に帰ってQTのために練習しようと思っていたのが、伊藤園に出て17番でチップインバーディ獲って優勝するわけじゃないですか。

森: まあゴルフの面白さですよね。

(つづく)

つづき(女子プロコーチ座談会の2回目)はこちら

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