女子プロのツアーコーチである森守洋柳橋章徳大西翔太中村修の4人が、もうすぐ終わろうとしている2024年の女子プロゴルフツアーの出来事を振り返る。
 
座談会①を読む

今季の米女子ツアーに参戦した古江彩佳(6位)、西郷真央(9位)、笹生優花(19位)、畑岡奈紗(30位)、渋野日向子(64位)、西村優菜(69位)、勝みなみ(78位)の7人が80位以内でシード権を確保。竹田麗央がTOTOジャパンクラシックの優勝で出場権を獲得。さらに最終予選会で、トップ合格の山下美夢有をはじめ、岩井千怜、岩井明愛、吉田優利、馬場咲希の5人が出場資格を獲得。来季の日本勢の米女子ツアー参戦は13人となり、過去最多9人だった今季を更新することになった。最終予選会の4日目で1打足りずにファイナルラウンドに勧めなかった原英莉花が、来季は米女子の下部ツアーで戦うことを明らかにしている。

最多、最強の顔ぶれと言われる来季の日本人女子プロたちの米ツアーでの戦いの展望と課題を4人がディスカッション。

画像: 座談会に参加した左から森守洋コーチ、大西翔太コーチ、柳橋章徳コーチ、中村修コーチ

座談会に参加した左から森守洋コーチ、大西翔太コーチ、柳橋章徳コーチ、中村修コーチ

中村: 来季は米女子ツアーに日本から13人が参戦しますが、どうでしょう。

森: 柳チャン(柳橋コーチ)ともよく話すんだけど、海外挑戦はチーム編成が全てです。どういうチーム編成で臨むのか、いかに選手が日本と同じような環境で戦えるようにできるかというのがすべてだと思いますね。

中村: 日本ではない環境でやる時に影響するのはチーム編成が大きいってことだよね。

森: そこだけですよ。ホーム&アウェイにおけるハンディなだけです。だから多分、日本のシード20位くらいの選手が行っても、環境が整っていたらシードは獲れるんですよ。それくらい日本人の方がスウィングレベルは高いから。チーム編成が上手く作れて、本人が日本とメンタル的に同じように出来たらいいだけで、でもそれって目に見えないものだから、「芝が違う」とかってなるじゃないですか。

画像: 日本人男子のフロントランナーである松山英樹もチームを組み、米PGAツアーを戦っている(PHOTO/Getty Images)

日本人男子のフロントランナーである松山英樹もチームを組み、米PGAツアーを戦っている(PHOTO/Getty Images)

中村: 柳橋コーチは23年に稲見選手の帯同で行きましたが、どうでした。

柳橋: 彼女(稲見)が最初に行ってた時は、私全然いけるかもしれない、むしろこっちのほうが環境合ってるし、楽しいし、やれている感じも全然ある、と言うコメントはしていたんです。でもやっぱ、上手く行かなくなってきた時に、芝とか環境のほうにドンドンと流れて行っちゃうので。そういう時に、周りが本人にある意味勘違いさせるじゃないけれど、いやいやお前天才だから全然できるから余裕だよっていうモードにもっていくだけで選手の気持ちの持ちようって違うから。その辺を含めチーム編成って凄い大事だなって思いますね。

森: アウェイとか関係ない、凌駕したメンタルを持っている選手はいいんですよ。でも普通はやっぱりアウェイを感じたなかでゴルフをしちゃうんですよ。でもそれってたぶん、どの選手もルーキー時代に日本でもツアーに出てきた時と一緒だと思うんですよね。若いから勢いで行っちゃうか、行けないかはあるんだけれど。

中村: 最初は端っこで練習しだすじゃないですか。それが段々と真ん中に寄って練習するようになってきて。

森: そうそう。

大西: 10年前とかは(上田)桃子さんとか(原)江里菜さんが練習場の真ん中で球を打っていて、みんな挨拶に行くのがあったけど。それが無くなりましたよね。今はやりやすい環境になってるのかなって思いますけど。

中村: 国内でしなくて良くなった気の遣い方みたいなことを、向こうでもイチからやっていかなといけないということだよね。チーム編成的なことを考えると。今、行っている選手たちの場合だとコーチが行っている選手はあまりいないかな。

柳橋: いないんじゃないですか。

中村: 畑岡奈紗選手は向こうでコーチをつけたりしていますけどね。言葉も出来るようになっているというのがその点では大きいかな。

森: 言葉が出来てきたから自分の居場所とかホーム感が出てきている選手は十分通用しますからね。

画像: 竹田はクラブ面は父が、スウィング面は母がサポート。家族全員で渡米というわけにはいかないだろうが、“チーム麗央”は家族が中心になることは間違いないだろう(撮影/姉崎正)

竹田はクラブ面は父が、スウィング面は母がサポート。家族全員で渡米というわけにはいかないだろうが、“チーム麗央”は家族が中心になることは間違いないだろう(撮影/姉崎正)

中村: そうなると楽だよね。それが出せないうちはチーム内で出せるようにすると。

森: そう。補って、日本と同じゴルフをさせてあげられるように。

中村: 食事とかですよね。お米を食べたいというふうになったりするわけよ。この前、桑木志帆を連れてロスにトレーナーと3人で合宿の行ったんだけど。朝ごはんはパンじゃなくてご飯が食べたいって言うわけ。ということは俺が作るんだろうなってことになり、ご飯を炊いて、朝ごはんを作るんだけど。

森: 偉いね。

中村: (原)英莉花選手も行ってたから、一緒に練習したり食事したり。それでちょっと考えたんだけど、13人もいるんだから、料理人をシェアしたらいいんじゃないかと考えたわけ。近い場所に泊まったりとかして、シェフをシェアして日本食でも食べられるようにするとか。一人の選手が抱えて日本から連れて行くのってなかなか大変じゃない。

柳橋: 去年、僕が行った時は、それやっていましたよね。マネジメント会社が主催して、出場している日本人プロの有志がレストランとかお好み焼き屋さんとか自分が食べたいモノを作っている人を一軒家に呼んで。そこに(西郷)真央選手とか山下(美夢有)選手とか、自分のタイミングで来たりして。

森: 美味しいの?

柳橋: 普通に美味しい。だって日本食だもん。向こうで普通にお好み焼きとかラーメンとか食べれたりするから。

中村: 食事も含めて、そういう“島国的”なハンディ部分をどうやってプラスに変えられるか、来季から米国生活になる4人(竹田、山下、岩井姉妹)には特に注目したいですね。

(つづく)

つづき(女子プロコーチ座談会の3回目)はこちら

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