ツアー解説でおなじみの佐藤信人プロ。今回は大逆転でシードを獲得したベテランのダニエル・バーガーについて語ってもらった。
画像: 「スタッツを見るとパットにやや難はあるものの、他の部門はほぼトップ選手並みの数字になっています。腰が完全復調すれば、25年シーズンは復活の1年となるはずです」と佐藤プロ(PHOTO/Blue Sky Photos)

「スタッツを見るとパットにやや難はあるものの、他の部門はほぼトップ選手並みの数字になっています。腰が完全復調すれば、25年シーズンは復活の1年となるはずです」と佐藤プロ(PHOTO/Blue Sky Photos)

PGAツアーを追っかけている人でも、久々に聞く名前だと感じるのではないでしょうか。

フロリダ州立大2年の13年にプロ転向。16年のセントジュードで初優勝、その後、21年のペブルビーチまで4勝と、着実に勝利数を増やしていきます。17年にはプレジデンツカップ、21年にはライダーカップ代表にも選ばれました。

ところが21年の全米オープンでの予選落ちを最後に、腰痛により1年半、戦列から離れます。特に最初の8カ月はまったく動けない状態で、ゴルフや趣味のテニス、ボートはおろか、ウォーキングすらできない状態だったそうです。バーガーは、24年1月のジ・アメリカン・エキスプレスからツアー復帰します。

ところがLIVゴルフとのゴタゴタもあり、休養期間中にPGAのシステムが大きく変わりました。特に大きかったのが、24年から導入された、上位選手が出場できるシグネチャーイベント(昇格試合)です。従来であればシード選手だったバーガーも公傷明けで出られるはずの大きな試合への道が閉ざされたのです。

実際、24年はプエルトリコやドミニカで開催される小さな試合にも出場していますが、おそらくトップ選手として活躍してきたバーガーにとっては、初めての経験だったのではないでしょうか。なかなか結果が出ない日々が続いたバーガー。ウィンダム終了時はシード圏外の140位で、フェデックスカップ・フォールシリーズに入りました。

しかし、この頃からようやく調子を取り戻します。最終戦までの6戦で5回の予選通過。最終戦もシード圏外の127位で迎えますが、その最終戦のRSMクラシックで、優勝こそ逃したものの2位となり、ランク100位となって逆転でシード権を獲得したのです。おそらく彼のゴルフ人生を振り返ったとき、大きな一戦になるのではないでしょうか。ここでシード権が取れなければ、来年は今年以上に厳しいスケジュールとなり、耐えられずに消えていく可能性すらあったからです。

しかし、この土壇場の粘り、その源にある自信こそが、バーガーの強さなのでしょう。最終戦の3日目を3位で終えたインタビューでは、「シード権(125位以内)へのプレッシャーは?」と聞かれ、「まったくない。体が完全に戻るのは2年かかる予定だし、仮に準シードでも戻ってくる自信はある。嫌な感じに聞こえるかもしれないが、ここに出ている選手よりもレベルは上!」と答えたのです。

もちろん実績があってのことでしょうが、この自信こそが一流アスリートに求められる絶対条件ではないでしょうか。自分でも言うように、読者の皆さんの中には"嫌な感じ"がした方もいるかもしれません。ただ、彼の名誉のために、インタビューでは休養中に変わったシステムについて、愚痴や批判ひとつしなかったことは書き添えておきます。

※週刊ゴルフダイジェスト2025年1月28日号「さとうの目」より

復活前のダニエル・バーガー

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