先走りのシャフトよりも、手元の軟らかいシャフトがトレンド
GD どれくらいの腕前があれば、その違いを感じられるんですか?
長谷部 こんな話をしちゃうと、「すごく上手な人じゃないとわからないんじゃないか」と思うかもしれませんが、実はそんなことはなくて。自分でも十分その差がわかるし、「ウッドほど長くない、短い番手だからフィーリングの違いなんてわからないんじゃないか」って思いがちですけど、実際打ち比べてみるとめちゃめちゃ差がわかります。インパクト前後の挙動とか打感とか。
何種類ものシャフトを打ち比べる機会はそうそうないんですけど、「ゴルフフェア」とか日本シャフトがやっている試打会に行って打ち比べていただくと明らかにその違いがわかると思います。どれが一番振りやすいかは一目瞭然なので、「重いものはダメだ」とか「軽いものは合わない」といった先入観を捨てて、7番アイアンを振ってもらったほうが剛性の変化がわかると思います。
GD 「モーダス105が合わないからモーダス110にしよう。でも110は5g重くなるからどうなんだろう?」みたいな単純な話じゃない?
長谷部 『モーダス110』のスペック表を見るとこのシャフトは若干前重心なんですよ。バランスポイントが先端側にあって、50パーセントを切っているんです。スチールシャフトでも普通は50から52パーセントくらいなので、モーダス110は前重心の特徴的なシャフトになります。
GD 前重心ということは、ヘッドが走るってことですか?
長谷部 走ると思います。ヘッドを重くせずともバランスが出やすいので総重量は重くならないと思います。
GD 『モーダス105』は評判のいいシャフトなので、むしろ『125』とか『120』を使っている人が『110』にしたら急に良くなるというケースが想像できます。
長谷部 それはもちろんあると思います。『120』で番手ズラしをしていたりとか、フレックス調整をして使っている人はスムーズに移行できる可能性もあるし、『モーダス105』を硬いと感じている人が『110』を打ったら手元の軟らかさを十分に感じられて、同じSからSにスムーズに移行できるということもあるので、そういった意味では上からも下からもスイッチする人が出てくるんじゃないですか。
GD モーダスシリーズは『5シリーズ』と『0シリーズ』、どっちが人気なんですか?
長谷部 どっちも人気ですし、出荷数になるとメーカーのプロパー採用の本数が大きく影響するので『モーダス105』がダントツだと思うんですけど、『ダイナミックゴールド』からの『モーダス125』へのスイッチや120グラムあたりの重量になると、女子プロでも使ったりする選手がいるくらい人気ですね。工房の方のお話だと『120』、『105』、『115』の順で人気だそうで、『125』や『130』の傾向はそのときどきで変わってくるようですね。
GD ここまでの話を聞いていると、ウッドのシャフトで大人気の『ベンタス』に似ているように聞こえるんですが?
長谷部 スピン量を抑える今回の『110』は5年前から開発がスタートしているものなので、今のウッドのトレンドを予測していたわけじゃないと思うんですけど、ヨーロッパツアーで求められる低い弾道を具現化しようとした時のひとつのアイデアであったと思います。
最新のウッドシャフトはどちらかというとドライバーヘッド開発にかなり左右されていて、大慣性モーメントのヘッドに対応するために先端のトルクを絞ってガチっとしているシャフトが最近増えていて、結果的に手元が軟らかく感じるものが多い。剛性分布を一括りにはできないんですけど、最近のウッドシャフトのトレンドは、手元が軟らかめで先端硬めのシャフトがツアーでは人気で『ベンタスブルー』などはそういう傾向だったりするのかな。
GD そう聞くと、ベンタスユーザーとの相性が良いように感じますね。
長谷部 『ベンタス』とははっきり言えないと思いますが、ツアーで人気のシャフトに近い振り感はあるでしょう。今は昔ほど先走りのシャフトは好まれないじゃないですか。ウッドで言うとダブルキックとか「スピーダー」のように先が戻ってくるようなシャフトはツアーで求められてないんですよね。どちらかといえばしっかりした棒みたいなシャフトが好まれる中では、フィーリングとして手元の軟らかさが重要視されていますよね。
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