一強だった『ダイナミックゴールド』に一石を投じた『モーダス』
GD スチールシャフトと言ったら『ダイナミック』、『ダイナミックゴールド』。昔はこれ一択だった時代がありました。そこに「日本シャフト」が本格参入してきた結果、現在は日本シャフトユーザーが急激に増えています。軽量スチールシャフトに関しては、圧倒的なシェアを獲得していますが、ツアーの現場でも『モーダス』が使用率を高めています。
長谷部 日本シャフトの歴史で言うと1959年創業の老舗のパーツメーカーになります。そのスタートは中村寅吉プロが1957年にカナダカップで優勝したことで、日本にゴルフブームが到来し、スポーツ、レジャーとして根付いてきた頃に親会社である「ニッパツ」の会長さんが「ゴルフビジネスは面白そうだから、我々もチャレンジしよう」というところから始まっていると聞いています。製造の歴史は古くも軽量スチールとしての市場での存在感はここ30年ほどで確立されたブランドだと思います。
スチールシャフトはそれまで上級者向けで、一般アマチュア向けというよりはハードヒッター向けという印象が強かったんですけど、日本シャフトが軽量で100グラムを切るシャフト開発を積極的に取り組んだことで、「ダンロップ」の『ゼクシオ』や「ブリヂストンスポーツ」が採用した結果、軽量シャフト、イコール『N.S.PRO 950GH』が確固たるものになりました。
GD 今でこそ『ダイナミックゴールド』にもいろいろバリエーションが増えてきていますが、大元であるダイナミックゴールドは、それ以前の『ダイナミックシャフト』から進化してもう30年以上になります。『ツアーイシュー』というモデルがありますが、あれは公差の少ないものをピックアップして組み上げているという話ですが……。
長谷部 詳しいことは正式に発表されていないので、様々な情報から判断すると『ツアーイシュー』に限らず「トゥルーテンパー社」で作っているシャフトの重量や硬さなどの規格で選別されていて、『X100』や『S400』に分けられていると思います。ツアーイシューは「選別の精度を高めた」という言い方でたぶん間違いないんだと思います、確定はできませんが。
GD 何十年間も同じものが使われ続けて、それもツアーで認められているとなると、『ダイナミックゴールド』が持っているシャフト性能がひとつの答えなのかな?って思うんですけど。
長谷部 ひとつの答えであるし、それに慣れながらジュニアの頃から育ってきたプレーヤーが多かったのも事実だと思います。ただ日本のマーケットと日本のツアーに関していえば、『N.S.PRO 950GH』で育った選手も増えているし、「NS以外を打ったことはない」という選手も大勢います。
池田勇太プロも高校生の頃からNSユーザーと言っています。そういった意味では『ダイナミックゴールド』がアメリカではもちろん存在感があるんですけど、“メイド・イン・ジャパン“の日本シャフトが日本の市場で存在感があるのも間違いない事実だと思いますし、市販用がそのままプロ用として提供されている品質の高さも日本シャフト製の特徴ですね。
GD ジュニアの頃からの感覚が染み込んでいるから、このシャフトがいいんだということだと思うんですけど、『ダイナミックゴールド』は手元が軟らかくて先が硬い。『N.S.PRO 950GH』は手元が硬く先が軟らかい。真逆な性能になりますが、打ち慣れることがその後も影響してくるんですね。
長谷部 『ダイナミックゴールド』に慣れている、使いこなしている人は、なかなか『N.S.PRO950GH』には移行できなかったと思います。自分もそのひとりで、ダイナミックゴールドで若い頃やっていたので、「手元の軟らかさ」を失いたくなかった。また、カーボンシャフトにしても手元が軟らかく感じるものが良いという傾向があります。『N.S.PRO 950GHが合うか』と言われば、一番合わなかったタイプのゴルファーだと思っています。
GD 『N.S.PRO 950GH』は軽さがウリで、「ダイナミックゴールドが振れない」っていう人が移行したかと思います。その後、出てきた『モーダス』が現在、『ダイナミックゴールド』を脅かす存在になってきています。
モーダスは末尾の数字で『5シリーズ』と『0シリーズ』があって、“5シリーズはダイナミックゴールドに近しい性能”で、“0シリーズは独特な性能”という見分け方をしているんですけど、これで合っていますか?
長谷部 『5シリーズ』に関して言えば「クセのない剛性分布のシャフト」という説明になります。打ち手を選ばないと言ったら変かもしれませんが、様々なニーズに応えられる重量帯に分けられているのが5シリーズですね。
『0シリーズ』は「こういう球が打ちたいから、こういうシャフトが欲しい」というツアープロのリクエストに応えているシャフトです。「ダイナミックゴールドだと思い通りの結果が出ないから、こういうシャフトが欲しいんだよ」というニーズに対して開発し、評価を積み重ねてきたシャフトが0シリーズという言い方もできますね。
ツアープロが求める性能は、「こういう球を打ちたい時にこう挙動して欲しい」とか、「打ち込んだ時にはこういう球になって欲しい」というリクエストに対して、手元を軟らかくしたり、硬くしたり、先中を硬くしたり、剛性変化を付けているのが0シリーズだと思います。
GD 『ダイナミックゴールド』に競合しているのが『5シリーズ』?
長谷部 『モーダス125』は『ダイナミックゴールド』と競合していると言えますね。まったく同じかというと、「手元を少し硬くしてもらえると振りやすい」という日本のツアーで得られたフィードバックが加わっているので、ダイナミックゴールドベースの手元が硬いバージョンが『モーダス125』だと思います。
GD そんな違いがあったんですね。
長谷部 『モーダス115』は『125』の軽量バージョンという説明で良いと思うんですけど、『105』は「カルカタ」の代名詞ですよね。