
あまもと・はるか。●所属/明治安田●出身地/福岡県●生年月日/1998年7月23日
昨シーズン、開幕戦である「ダイキンオーキッドレディス」の4位タイを皮切りに8戦中6戦でトップ10入りする活躍で一躍知名度を挙げ、9戦目の「パナソニックオープンレディース」で初優勝。その優勝のおかげで、ギャラリーの反応が変わり、逆に自分を見失ってしまったという天本。
「初優勝の前と後ではギャラリーの方の反応が全然違って。本当にこれだけ大勢の方々に名前を知って頂いているんだな、と嬉しくて。本来は、私がやるゴルフを変えてはいけないんですが、やっぱりもうちょっと『魅せる』ゴルフをしようと思ってしまいました。
プレッシャーというか、ギャラリーの皆さんの期待に、『応えよう』とか『いいプレーしよう』とか、『もっと派手に』とかを考えすぎて、自分の持ち味を逆に殺してしまっていた。でも、結果が出ないと皆さんも楽しくないし、私の持ち味を楽しみに見てくださる方もたくさんいらっしゃると思うので、いい意味で『自分が自分らしいプレーをすれば、皆さんが見てくれる』ということを認識できました。あまり人に見られるっていうのも今まで感じたことがなかったので、そこは勉強になりましたね。
正直なところ、(勝った)次の週も行けるんじゃないかなと思っていましたが、空回りしてしまった、というのは反省点(※次週の「ワールドレディスサロンパスカップ」は2打足りず、予選落ち)。それを7月ぐらいに気付いて、『自分のゴルフってこうゆうのだったよな』というのに立ち返ってやり直したのが後半戦。いいところも悪いところも全部経験できた1年でした」
昨年は飛躍の1年となったが、その要因として、4回目のプロテスト失敗後に出会った鴻江寿治氏の考えへの理解が深まったことが、自身の飛躍につながっているという。

師事している鴻江寿治氏と
「4回目のプロテストを落ちた時点で出会ったので、『何かを変えないと好転しないんだろうな』っていう感じで、次のテストも落ちたらゴルフをやめるつもりでした。(鴻江)先生の指導は自分のそれまでのイメージとあまりにも違いすぎてびっくりしたのですが、『もうやるしかない』と、ある意味吹っ切れた感じで。最初は何言っているか全く理解できなかったんですが、これだけ変わるとやってよかったなと思いますね。
鴻江先生の教えでいうと私は典型的な『うで体(※)』で、シーズン中に体の使い方や力の伝え方というのは『うで体』の動きを中心に結構考えるようになったのですが、『スウィングをどう意識していますか?』と言われれば、あまり形も意識していません。
※鴻江氏は人間を猫背タイプで腕から動作を始めるとスムーズな『うで体』、反り腰タイプで足から動作を始めるとスムーズな『あし体』に分類する
それに『うで体』はスタートがあまりよくないので、最初から飛ばしていると途中で息切れする。ラウンドもそうやって考えていて、18ホールの中で、1~3番ホールあたりはすっと静かにスタートして、エンジンが掛かってきたなって思ったら、そこからバーディを狙いにいく。18ホールあると、タイミング的にどこかで悪くなることが必ずあるから、そこは耐えて、また自分の時間が来たらアクセルを踏む的な。ゴルフは長い時間があって、どうしてもラウンド中に体の状態が変わってしまうので。
『うで体』の動きや考え方が実行できていない時も、反対側の『あし体』にならないように、その中間で良しとするとか。理想の動きにならないときは結構あるので、それをパターン分けして、最悪の状況を迎えないようにストックしておく。(ソフトボールのレジェンド)上野由岐子さんも『何個か自分の引き出しを持っていると、その時に全部できるよね』という話をしていたので、それを作っていけたら年間を通して活躍できると思っています。
プロなので、いいときはみんないい。でも悪いときにどれだけできるかが一流と二流の違いな気がしています。悪いときでもなるべくマイナス値を作らないための方法を探っているんです」
最後に今年の目標と今後のゴルフ人生について聞いてみた。
「まずは早々に優勝を挙げることと、私はそんなに派手にゴルフをするタイプではないですけど、1戦1戦を真剣に向き合いながら、常に最終組、常にトップ争いをしているような選手になれるように極めていけたらなと思っています。先ほども述べたのですが、『うで体』はスタートダッシュしちゃうと途中でバテるので、8月くらいになって気づかないうちに『あいつ、振り向けばいつもいるよな、女王狙えるんじゃない?』となっているのが理想です(笑)。
年間女王目指してやる、というのが直近の大きな目標です。そこからアメリカに行きたいとか、憧れの人である宮里(藍)さんが成し遂げたようなことを現実にしていけたらと思っています。本当にいつまでゴルフをやるのかということは考えていなくて、ゴルフが好きなのでやれるだけやりたいというのもあるし、そこを一年一年、突き詰めていければ充実したプロゴルフ生活になっていくんじゃないかな、と思っています」
もうあと少しで、女子ツアーが開幕する。“スタートダッシュを狙わない”天本ハルカに注目だ!
撮影/浅田紀元