プロを教えるコーチは、選手以上にそのスポーツに精通していなければならない。つまり、コーチの頭の中には、アマチュアゴルファーがまだ知らないたくさんの「真実」が詰まっている。月刊ゴルフダイジェスト2月号スタートした連載「目からウロコ」。その0話目ともいうべき、2025年1月号の内容を「みんなのゴルフダイジェスト」でお届けする。

ゴルフのスペシャリスト
目澤秀憲コーチ

画像1: “最先端”を覗いたら見えてきた「飛んで曲がらない」の真実! ゴルフ界の新世代コーチ×野球界のこだわり男の異色の対談

ゴルフ界の最先端を知り尽くすコーチ。現在は河本力、金子駆大、永峰咲希、阿部未悠などを教える。

野球のスペシャリスト
館山昌平

画像2: “最先端”を覗いたら見えてきた「飛んで曲がらない」の真実! ゴルフ界の新世代コーチ×野球界のこだわり男の異色の対談

元プロ野球選手。現在は自身の経験を生かし、マルハン北日本カンパニー硬式野球部の監督を務める。

▼野球界でもゴルフ同様弾道計測器がマストアイテムに

画像: 左:ゴルフで使う最新測定器「フライトスコープ」 右:野球で使う最新測定器「ラプソード」

左:ゴルフで使う最新測定器「フライトスコープ」
右:野球で使う最新測定器「ラプソード」

野球はよく「根性もの」の題材になるため、前近代的な指導法をイメージする人が多いかもしれないが、実は最新のテクノロジーを取り入れた科学的なコーチングが当たり前となっている。その点はゴルフ界とよく似ている。

・対談前にちょっとだけ入れ替えレッスン!

画像: お互いにレッスンし合うことで、新しい発見があった。

お互いにレッスンし合うことで、新しい発見があった。

シーズンオフにまとめてラウンドするという館山さん、野球は遊びでしか経験のない目澤コーチ。お互いにレッスンし合うことで、新しい発見がいくつもあった。

目澤のピッチングを館山がチェック
「力が入らないリリースになっています」(館山)

画像: 館山さんが目澤コーチのピッチングフォームを指摘

館山さんが目澤コーチのピッチングフォームを指摘

目澤コーチは、投げるときに体が先行しすぎて、かなり後ろのポイントでボールを放していた。これだと肩への負担が大きく、うまく力を伝えられない。

【目澤の気付き】「ゴルフでも突っ込むとクラブは振り遅れる」

ピッチングでの体の突っ込み同様、ゴルフでもダウンスウィングで体が先行しすぎると、クラブが振り遅れてフェースが開き、ボールがつかまりづらくなる。もちろん、飛距離も出づらい。

野球もゴルフも最も大事なのは“力が入るインパクト”

ーー今はゴルフのスウィング分析にも使われる「運動連鎖」の概念は、スポーツの分野では元々、野球の投球動作分析のためのものだった。それだけ、速い球を投げる投球動作と、遠くへ飛ばすゴルフスウィングはよく似ているということでもある。

館山: その人が投げられる最大スピードというのは、身長×体重×可動域で決まってしまうのですが、実際にそのスピードが出せるかどうかは、動きの「連動性」によるところが大きいと思います。とくに可動域に問題があると、連動性が損なわれる可能性が高い。あまり知られてないですが、プロ野球のピッチャーはみんな柔軟性が高くて、たとえば180度開脚して両ひじを地面につけることができない人はひとりもいないんです。

目澤: ゴルフ界でも、身長と体重に加えて「可動域」が大事だということがやっと浸透してきて(※編集部注:少し前までは単に体重が増えれば飛ぶという誤解が広まっていた)、とくに女子は3つのバランスがいいアスリート体形の選手が増えてきました。

館山: ボクが最初に選手を見るポイントは「骨格」で、それに合ったリリースポイントになっているかどうかということなんです。

目澤: ああ、やっぱり。それはゴルフでもまったく一緒です。

インパクトからの「逆算」が理想の弾道を作る

打つ瞬間だけは合理的であることが大事

―― かつてゴルフ界には、リー・トレビノのような個性的なスウィングのプロが多くいたが、いわゆる「ボディターン時代」にはスウィングがやや画一化された。それがここにきてまた、B・デシャンボーやS・シェフラーなど、個性派スウィングのプロが増えている。これは「数値化」と関係があるのか。

館山: 野茂(英雄)選手の投げ方やイチロー選手のバッティングは教科書には載ってないんですが、それでも活躍できたというのは投げる瞬間、打つ瞬間の体の使い方が理にかなっていたということなんです。逆にそうでなければケガをしてしまう。たとえば、子どもたちを教えるときは、ケガをしないための後押しというのが一番大事なので、その子の骨格を見て、仮に投げ方が個性的でも投げる瞬間の腕や手首の角度が合っていればそれも「能力」ととらえて、フォームを直したりしないんです。

目澤: ボクがコーチングのベースにしている「TPI(※)」でも、骨格や可動域を重要視していて、プロと同じように振りたくても、可動域が足りないからできない場合もあるということを大前提にしてレッスンするようにしています。もし、それでもプロと同じように振りたいのであれば、先に可動域を改善しなくちゃいけない。今は動画サイトで何でも見られるから、逆に「完コピ」を目指す人が増えていて、それはちょっと困った現象です。
※TPIとは「Titlist Performance Institute(タイトリスト パフォーマンス インスティテュート)」の略

「正しいインパクトへの道筋を大事にしている」(目澤)

画像3: “最先端”を覗いたら見えてきた「飛んで曲がらない」の真実! ゴルフ界の新世代コーチ×野球界のこだわり男の異色の対談

ダルビッシュ有
ダルビッシュ投手の武器である変化球、とくにスライダーは、「ラプソード」でスピン軸、スピン量を研究して生み出されたという。

スコッティ・シェフラー
いわゆる「オーソドック」とはかけ離れたシェフラーのスウィング。それでも世界ナンバー1なのは、インパクト効率が抜群だからだ。

誰かの「完コピ」は理想のフォームではない

館山: 野球は採点スポーツじゃないので、「いいフォームで投げたい」とか、「誰それの真似して投げたい」というふうになってくると、ちょっと危ないんです。百歩譲って、誰かの真似をして投げたらすごく感覚がよかったということがあったら、その感覚を大事にしてほしい。いい形で投げられた、で終わってしまうと意味がないんです。

目澤: ゴルフだと「飛距離が出るのがいいスウィング」みたいな風潮があるんですが、ボクはそれにはあまり賛成できないんです。むしろボールを曲げたりだとか、風に乗せて狙ったところに落としたりだとか、そういうことのほうが大事だと思っていて、それって館山さんがおっしゃった「感覚」の部分だなと。「理想のスウィング」はひとつじゃなくて、実はゴルファーの数だけあるんですよね。

館山: ボクもそう思います。

Q.逆算ってどういうこと?
A.「力が入るインパクトから巻き戻して考えるんです」(目澤)

画像: プロに応じたスウィング作りが基本となる

プロに応じたスウィング作りが基本となる

複数のプロを指導する目澤コーチ。何かひとつの「理想のスウィング」があるわけではなく、そのプロに応じたスウィング作りが基本と話す。

取材・文/菅原大成 写真/有原裕晶、Getty Images 協力/RAYCOM BASE CAFÉ

※月刊ゴルフダイジェスト1月号「“飛んで曲がらない”の真実」より

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ゴルフの世界だけを見ていてはゴルフを究められない。その信念のもと、目澤コーチが今、気になること、気になる人を掘り下げていく。月刊ゴルフダイジェスト2月号から始まった新連載「目からウロコ」はMyゴルフダイジェストで掲載中!

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