
大好きな沖縄で体のケア、トレーニング、練習、ラウンドなどの準備中に話を聞く機会をもらった。「シーサーには男女があって雄は口を開けて威嚇といいものを口の中に入れる、雌は口を閉じていいものを逃さないというような意味があるそうです」。上原も自身に“経験”を取り込み、決して逃さない
今年12月で42歳になる上原彩子の冒険は、まだまだ続いていた。
コロナ禍を挟んで米LPGAツアー参戦11年目となった23年、前年の公傷制度を使って出場した6試合で予選通過した4試合のポイントが約39の加算にとどまり、シード権を喪失してしまった。しかし、次のステージが現れるのが“もってる彩子”のすごみである。
米女子下部、エプソンツアーに挑戦しようとしていた矢先、「LET(レディスヨーロピアンツアー)」に目がいったのだという。
「今まであまり見ていなかったんですけど、改めてスケジュールを見たら、試合も多いしアフリカや、オーストラリアやアジアなどいろいろな場所で開催される。何だかすごいな、面白そうだなと思って、行ってみたい、となったんです」
この“ワクワク感”をすぐに実行するのが上原彩子というプロだ。
多様性ある欧州ツアー。「いろいろな人種の皆が参戦しています。年齢層もバラバラです」
Qスクール1次はインドとモロッコで開催された。
10月のインドでの参戦を考えたが、ビザの関係で断念、12月にモロッコに渡った。
「モロッコは初めて。なんだかもう世界って広いなと感じました。若い日本選手が4、5人挑戦していたのにも驚きましたね」
1次を12位で通過、最終は翌週、同じモロッコの首都、マラケッシュのコースで行われた。
「すごく広い飛ばし屋有利なセッティングと、狭い感じでトリッキーなコース、タイプの違う2つのコースで行われるんです。やはりアメリカのほうがレベルは高い感じでしたけど、欧州選手中心ですがアメリカやアジアの選手も多く、いろいろな人種の皆が参戦しています。年齢層もバラバラです」
45位となった上原は、20位までのほぼ準シードの下のカテゴリーとなった。
24年のLET初戦は2月のケニア(マジカルケニアレディス)。キャディは毎試合、ツアーが準備してくれる「現地の方」にお願いする。
「自分で全部決めてプレーするので、キャディバッグを担いでもらうだけでいいんです」
英語が通じない場面も多いが、「ラウンドしながら現地の言葉を教えてもらったり。もう忘れましたけど(笑)」。
さて、初戦で11位に入った上原。
「風が結構強くて難しかったんですけど、コースは面白かった。砲台グリーンもあって、そこでいかにパーセーブしていかにスコアを作るかがポイントでした」
マネジメント力は、年々上がっている自負はある。
「でも、ケニアでの一番印象的なことは、キリンやシマウマが普通にコースを歩いていたこと。最終日の18番では、フェアウェイにいたキリンがいなくなるまで試合を中断するんですよ」
エピソードを探しては、楽しそうに話をしてくれる。上原が世界で転戦できる力はここにもある。
「実は、予想以上に試合が下りてこなくて、2戦目は4月の南アフリカ(ジョーバーグレディス)に。でも空いた週は、エプソンツアーにも出場していました」
臨機応変。いや、上原彩子は今も“挑戦者”なのだ。
初戦の好成績が効き、1度目のリランキングで上位に入り、その後はほぼ全試合出場できた。
「つなぎつなぎで。スペイン(ラ・セラオープン)で7位に入って、次のフランス(ラコステレディス)に出られたり、予選落ちのない最終戦にもギリギリ出られて37位となり、80位以内はキープして終わりました」
15カ国17試合。ポイントランキング(Order of Merit)74位となり、「今年は準シードみたいな感じで、出場できる試合も増えます」とワクワク感も増す。
上原は昨年、ヨーロッパを一人で回った。自分で飛行機、レンタカー、ホテルなどを予約し、食事もほとんど自炊。米を持参し鍋で炊いた。
「運転できるところはレンタカーで。ツアーのオフィシャルホテルや交通も利用しましたけど、やっぱり、経費がすごくかかるんです。今、本当に高くて簡単に外食もできない。キッチン付きのところにして。でも、移動距離もアメリカより断然長いし、ご飯を自分で全部作るのはやっぱりたいへん。隙間時間に観光もして楽しかったです。そんなに遠くに行かないですけどね」
今年は、8年の付き合いになるトレーナーの玉城寿乃さんがほぼ一緒に帯同する。海外転戦では体が一番大事。強い味方となる。
ヨーロッパツアーの印象を聞くと、「アメリカは、前はアンジェラ・スタンフォードやクリスティ・カーなどベテランもいたけど、今は若手に総代わりした感じですよね。エプソンは、LPGAを目指す若い人が多い。でもヨーロッパはベテランとルーキーが入り交じっていて面白いです。サウジの試合なんかLPGAより賞金が大きい大会もありますし」。
LETでトップ10に入るとLPGAのファイナルQスクール受験の権利を得られるという。
「本当によい選手もいて、アメリカでも全然通用すると思います。ランク2位のマノン(・ヘンぜライト、33歳、ドイツ)なんかトータルで上手い。ドイツでは19歳のヘレン・ブリームもめっちゃ飛ばしてガタイもよくて、昨年スペインで勝って、今年一緒にできて嬉しい。優勝争いのときのメンタル的な課題などありますけど ゴルフのレベルはすごく高いです」と、ここはベテラン力を発揮して、選手たちを冷静に分析する。

ショートゲームのSGが突出して高い上原。課題のショットに関しても日々磨いている