プロ入り23年目を迎える上原彩子。日本で10年、アメリカで10年、シードを持ち続けて戦っていたが、昨年新たに「ヨーロッパ」というステージを見つけていた。故郷・沖縄で、新しい“冒険”の準備をしている上原を直撃した。

ここから10年、強く、長く!
「マネジメント勝負。勝つチャンスはあると思います」

画像: 昨年、有村智恵は双子を出産し、上田桃子は一線から退くなど同世代のプロたちには人生の転機があった。しかし、上原はあくまでマイペースだ

昨年、有村智恵は双子を出産し、上田桃子は一線から退くなど同世代のプロたちには人生の転機があった。しかし、上原はあくまでマイペースだ

「コースはアメリカとも日本とも違っていろいろなタイプがあります。芝はアメリカのポアナみたいな難しさはないですけど、アメリカは距離がすごく長くなって、メジャーはもう(パー4で2打目が)届かないホールも多くて。選手もめっちゃ飛ぶし、さすがにキツイなあという感じでした。ヨーロッパは、飛んでご褒美のあるホールもありますけど、その分リスクもある。たとえば、刻む選択や、フェアウェイの左サイドに置かないと絶対狙えないなど、マネジメントをしっかりしないといけない。戦略性があって面白いコースが多いんです」

必要なものを自分で探すから次のステージが見つかる、そこに挑戦するから居場所が手に入る。“もってる彩子″は、自分で作り上げてきた自分なのだ。

今、日本の女子プロのレベルはかなり上がっているという。

「同じ世代の人たちが活躍しているというのが大きい。前から、若い子たちはどんどん外に出たらいいと言っていました。すごくいい傾向です。外に出ないと中のよさもわからない。(有村)智恵ちゃんや(上田)桃ちゃん、(河本)結ちゃんなども、一度海外に出て、やっぱり日本がいいと帰ってきて活躍している。閉じこもるのではなくて、いろいろ挑戦して、最終的に自分がどうしたいって決めたらいいと思うんです」

実は上原も、未知のヨーロッパにはよい印象がなかった。

「欧州遠征もあったけど、アメリカに戻ったとき、ほっと感があった。簡単に欲しいものが手に入りますしね。たとえばイギリスはご飯が美味しくないしいつも天気が悪くて寂しいし、土日はスーパーも閉まっていたり。生活するうえではすごく不便だなと。でも昨年、初めてヨーロッパにどっぷり行って、ガラッと印象が変わりました。
 
歴史をすごく大事にしながら、今と共存していくという。パレスやミュージアムなども多く素晴らしい文化ですし、皆で助け合って、ヨーロッパを盛り上げていくという感じがあるんです。オランダでは普通に困っている人がいたら、手を指しのべる感じで『心が綺麗な人種なんだろうな』と。いろいろな人と出会って、新たなヨーロッパの見え方になった。モロッコでは、学校に行ける子や行けない子がいて、格差もすごくありながら同じ場所で生活していて。でも、皆すごく幸せそうなんです。人間の在り方、本質的なもの、本当に大事なものは何かを感じました」

Instagram

www.instagram.com

チャリティ活動にも熱心に取り組んできた上原。コロナ禍で自分を見つめ直し、より意識は高まったという。

「そういえば、選手4人で一緒にご飯を食べていたとき、皆、違う国の出身で。一人が『自分の国で大会がないのでいつか開催したい』と言ったんです。『日本でもやってよ』とも。韓国、中国、台湾で大会があるから、その流れで沖縄でもできたらいいなと思いました。沖縄のことをヨーロッパの人たちに知ってもらえるし、沖縄の観光にとってもいい。ゴルフする人だけではなくて皆さんに知って見てもらいたいんです」

上原が言うと現実になりそうだ。昨年1月には沖縄で日米親善マッチも行った。こちらも長く続けたいと考えている。

「ジュニアの頃、嘉手納基地のゴルフ場で、日米ジュニアの交流会があった。それをきっかけに世界で戦いたいという気持ちが芽生えたんです。ゴルフに限らず子どもたちが広い視野を持って、沖縄だけでなく世界に羽ばたいていけるように、何かチャンスを作りたいんです」

この大会を沖縄の言葉を使い「いちゃりばちょーでー」という名前にしたい。「一度会ったら皆家族という意味です」。

「やっぱり沖縄が好きです。沖縄のために何かをやりたい気持ちは常にある。外に出たからこそ、もっと好きなっていると思います」

2025年の初戦はモロッコでの大会で、その後いったん帰国し、国内女子ツアー開幕戦、地元開催のダイキンオーキッドレディスに出場し、翌週のオーストラリアからまた連戦となる。

今年の目標は?

「勝つことが一番。チャンスはあると思っています。昨年のスペインの試合も本当にチャンスはあったんですけど……チャンスがあるコースは多いので、今年は頑張りたいです」

ヨーロッパでも初戦からすぐに友だちができたという上原。

「アメリカはどうだったかなどを聞かれて、『日本で10年やったあとにアメリカに行って、ヨーロッパでまた10年やればいい!』という感じで言われました(笑)」

ここからまた10年、上原の世界は広がる、そして上原から世界はつながっていくのだろう。

なお、2025年3月1週目、上原の地元・沖縄で開催されるダイキンオーキッドレディスの週から、上原彩子の「いちゃりばちょーでー(沖縄の方言で「一度会ったら皆家族」)」という連載(公開は試合のある週に)をスタート予定。こうご期待!

THANKS/パームヒルズゴルフリゾートクラブ
撮影/櫻井哲也

※週刊ゴルフダイジェスト2月18日号 「上原彩子の冒険はヨーロッパへ」より

This article is a sponsored article by
''.