2022年の「日本女子オープン」の舞台ともなった紫CCすみれCは、硬く速くアンジュレーションの強いグリーンに14番から17番まで難しいホールが続く難コース。9月開催だった「日本女子オープン」はラフが深かったこともあり4日間でアンダーパーは3アンダーで優勝した勝みなみ選手と2アンダーの申ジエ選手のわずかに二人だけ。吉田優利選手はイーブンパーの3位タイで終えていました。
今大会では水曜日に降雪があり初日はまだグリーンに軟らかさもあったものの最終日に向けて硬さを増し、グリーンのスピードも11.75フィートとグリーンを狙うショットのクオリティ、パットの技術が試されるセッティングになっていました。ピン位置も大きくないグリーン面積の傾斜の少ない狭いエリアに切られていましたので、ピンから逃げてセーフティに乗せると傾斜のかかる難しいパットが残り、ピンを攻めてそのエリアにボールを止められれば“報酬”があるというものでした。しかしピンを狙ってグリーンを外すと少し砲台になったニアサイドのピンに対する難しいアプローチが残るので選手にとっては狙う怖さと戦いながらのプレーになっていました。

最難関ホールとなった17番パー4はやや斜めに配置された細長いグリーンに傾斜が入り組む。最終日は手前から27ヤード、右から5、左から4ヤードに切られていた(写真/中村修)
初日を68、2日目は圧巻の64、最終日は71と「あんまり今の自分に結果どうこうはなくて、自分が良いプレーをしたいし、納得のいくゴルフがしたいし、ただ自分が気持ちよくゴルフをしたいだけ」と周りのスコアや結果にとらわれずに自分が追い求めるゴルフをするという強い意志を貫いた勝利だったように思います。そうだったからこそ、難しいピン位置に対してもピンを攻め続け最終ホールのバーディパットを外したことを悔やむ姿が印象的でした。
スウィングを見てみると、23年当時と比べて手元が上がっているというか、ヘッドを下げて構えるように変化しています。アプローチでもパットでも、短く持ってややハンドアップで構えクラブの重心を下げたアドレスが見て取れました。
低く構えると手首のコックを使ってクラブを立てる動きが入りやすくなりますが、手元を上げてヘッドを下げて構えると手首の動きは少なくなります。テークバックの左腕が地面と平行になる位置でシャフトが90度寄り下回っていることからも手首の動きが少ないことが見て取れます。

手元を胸の正面から外さずにテークバックし、左に踏み込んで切り返す(写真/岡沢裕行)
バックスウィングの終盤では、背中をターゲットに向ける深いトップから左へ踏み込んで下半身を先行させて胸を開かずに腕を下ろしています。そうすることで上半身と下半身の捻転差が作られ、3日間平均飛距離246.167ヤード、FWキープ率83.33%(全体の2番目)という飛距離と方向性を兼ね備えた結果を残しました。

胸を開かずに下半身リードで回転力を使って切り返し、左ひざを伸ばす縦の力を使って一気に体をターンさせる(写真/岡沢裕行)
スウィングのエネルギーとなる三大要素である水平方向の力、回転力、縦方向の力のバランスが良く、そのタイミングも狂わないテンポの良さがありました。中継ではアドレスに入っても動きを止めずにリズム感良く動き出し、スムーズにフィニッシュへと振り抜いていました。これまでの3勝とは違った「自分の納得がいくプレー」で挙げた4勝目は吉田選手にとってターニングポイントになるかもしれません。
今週のLPGAでどんなプレーを見せてくれるか期待も膨らみます。