EZONE GT MAXを試打
ここまで打ったのが既存の2モデル。では、発売されたばかりの追加モデル「EZONE GT MAX」を見ていこう。MAXはシリーズ最大の慣性モーメントを実現し、安定した方向性で高弾道を打てるモデル。見た目の印象は「Type-S、Type-Dとはだいぶ変わってシャローですね」と中村。

ヨネックス「EZONE GT MAX」ドライバー(写真はロフト10.5度モデル)
「シャローで、投影面積が大きく、平べったくて長い。ということは重心が深く低い位置にあり、球が上がりやすいということですね。ヘッド自体が大きいので当たる安心感があります。加えて平べったいことで低いところから浅く入って少しアッパーに当たる感覚が出てくるので『球を拾って上げてくれるヘッドだ』という安心感が見た目から感じられます」

ヘッド形状は既存2モデルより長め。そのぶん「安心感を感じやすい」という
MAXも既存の2モデルと同じく、ロフト10.5度のヘッドに純正シャフト「RK−04GT」Sフレックスを組み合わせたモデルをHS43m/s前後で試打してもらった。データの平均値は以下の通りだ。
【EZONE GT MAX試打結果】
キャリー●233.0ヤード
トータル●252.0ヤード
ボール初速●61.5m/s
打ち出し角●13.9度
スピン量●2216.3rpm
中村からは「やはりブレの少なさによる恩恵がかなりありそうです」との感想。
「Type-S、Type-Dと比べると弾き感がありますね。といっても嫌な感じではないし、キーンとした変な打音にもなっていません。適度な弾き感で初速が出てる感じでしょうか。弾道は、逃げずに適度につかまえてくれて、スライスしにくそうな印象です。左右への曲がり幅はどのモデルも少なかったですが、MAXも同様ですね。
何よりブレが少ないです。ドライバーの場合は打ち出しがフェースの向きに85%影響されると言いますから、ヘッドがブレてインパクトで右にフェースが向いていれば右に飛び出すし、左を向けば左に飛び出すんです。でもMAXは慣性モーメントが一番大きいモデルなので、たとえばちょっと下目に当たるなどの打点ズレが起きてもヘッドがブレずに、ギア効果でうまくつかまえてくれます。
それは試打結果にも出ていて、まっすぐ打ち出して全然曲がらないし、飛距離も安定しています。曲げたくても曲がらないくらいですね。あと細かい点ですが、左右の打点ズレに強い一方、フェース面の縦幅はそこまで分厚くないのもポイントです。ティーをそこまで高くする必要がないので上下の打点も結構安定しやすそうですね。さらに適度にスピンが入ることで、ドロップすることなく適切に飛んでくれます」

ヨネックス「EZONE GT MAX」ドライバーのフェース面
総評するとMAXは「さらにミスに強いドライバー」。ドローバイアスが強いType-Dもアマチュアに“あるある”な悩みを解決してくれるドライバーと言えるが、それぞれどんなゴルファーに合っているのだろうか。
「MAXは右と左どちらにも曲がるという方でも曲がりを抑えてくれます。対してType-Dは、とくに右に打ち出す癖がある方に対してすごく効果が高いモデルと言えます。飛距離面もそうですが、ご自身の悩みに合わせて、よりOBにならずフェアウェイに残ってくれるほうが選ぶのが良いと思います」
シャフトを「REXIS KAIZA-LIGHT」に替えてMAXを試打
さて、ここまでは3モデルをすべて純正シャフト「RK−04GT」のSフレックスで試打してもらった。このシャフトについても中村は好感触のよう。「一番感じたのはタイミングの取りやすさですね」とのことだ。

ヨネックス「RK−04GT」シャフト(写真はSフレックスのモデル)
「そもそも純正シャフトって先中や中調子が多くて、中元調子で手元が粘るシャフトって珍しいですよね。3モデル、性能が異なるヘッドと組み合わせても違和感がない、ニュートラルで癖のない感じで、性能自体もヘッドスピードに合わせてちゃんとしなったり弾いたりしてくれました。個人的にはめちゃくちゃ振りやすかったですね。Sフレックスならヘッドスピード40m/sからちょっと飛ばし屋の45m/sくらいまでの方が、頼りなさを感じずに振り切れると思います」

純正シャフトの「RK−04GT」のタイミングの取りやすさを中村は評価
MAXにはRK−04GTに加え「REXIS KAIZA-LIGHT」も純正シャフトとしてラインナップされている。R、S、Xと3種のフレックスが用意されているのだが、そのいずれもが30グラム台であることが特徴となっている。

ヨネックス「REXIS KAIZA-LIGHT」シャフト。R・S・Xの3種がラインナップされ、いずれも30グラム台
実際にEZONE GT MAXの10.5度モデルと、REXIS KAIZA-LIGHTのSフレックス、Xフレックスをそれぞれ組み合わせて試打した中村は「軽いけどしっかりしている」という不思議な感触に驚く。

「REXIS KAIZA-LIGHT」シャフトの感触も確かめた
「40グラム台のXフレックスシャフトは最近出てきましたが、30グラム台のXフレックスはなかなかないですね。
まずSフレックスから試しましたが、素振りした段階で『軽い!』と感じます。ただ、重さはないですが全然ふにゃふにゃと頼りない感じはありません。そこがすごいんですよね。
カーボンの重量や強度って巻きで決まります。軽くするには巻きを減らす、そうすると強度が落ちる。重くするにはたくさん巻く必要があるけれど、そうなると硬過ぎてしまう。カーボンシャフト作りにはそういった難しさがある……はずだったのですが、技術の進化はすさまじいし、カーボンに関してヨネックスは一日の長があるんだなと思わされます。
僕のヘッドスピードでも抑えて振らなくていいぐらいちゃんとしっかりしています。ヘッドスピードなりにちゃんとしなり戻ってくれますね」

「REXIS KAIZA-LIGHT」の軽さとしっかりした感触に中村も驚く
Xフレックスも「軽いのにすごく張りがあって、不思議な感触です。全然当たり負けしななくて、張りと粘りのバランスがすごく的確でした。軽いけど、振り切ってもインパクトに向けてバシっと来てくれます。これのほうが逆に曲がらなくて合うという方も絶対出てくるでしょうね」
ただし「『ただ軽いから』というだけで選ぶのは薦めません」と中村。
「基本的には自分が振れる範囲で、重いシャフトを選ぶほうがスウィングも安定しやすいです。だからこそREXIS KAIZA-LIGHTは新しい選択肢ですよね。年齢を重ねて、どうしても体がついていかなくなったら、やっぱり軽いシャフトを組み合わせたほうが体に負担も少ないです。長くゴルフを続けるとなったときに、50~60グラム台しか選択肢がないとなるとさすがに14回振るのが苦しくなってくると思いますから『軽いのにSやXフレックスまで選べてしっかり振ることができる』選択肢が広がったのは良いことですよ」
岩井姉妹特別カラーモデルも
さて、EZONE GTシリーズと言えば岩井明愛・千怜姉妹が使用していて、選手の好みを反映した特別カラーモデルが発売されているのも特徴の一つだ。
「同じモデルでも見た目の印象は変わりますし、やっぱりツアーの取材に行ってプレーをよく見ているので、たとえば両選手がフィニッシュを取っている姿とか、ボールの後ろに立ってヘッドを目標へ向けているときなどに見えるターコイズブルー、マゼンタがすごく印象に残っていますね」

左が岩井千怜カラーモデルのマゼンタ、右が岩井明愛カラーモデルのターコイズブルー
こういった選手をフィーチャーしたモデルがあるのはもちろん「そもそもトップ選手が『良い』と言って、実際に使い続けている安心感って、選ぶ側からしてもかなりありがたいですよね」と中村。

実は特別カラーモデルは塗装のぶん重量に変化がある影響で、後方ウェイトの重量も通常モデルと異なる。「でも振った感触は全然変わりませんね。ただ若干ですが重心の位置が変わってるぶん、スピン量が少し減っているかなと思います」と中村
「これはドライバーに限らずなんですけど、岩井姉妹って海外に行ってもとくにセッティングを替えていないんですよね。もちろん彼女たちの技術あってのことですが、異なる環境でもそのまま使える性能があるっていうのは選手にとってもプラスに働いているはずです。
ドライバーもテストして『良いな』と感じてすぐ投入、そのまま昨年は姉妹で3勝ずつして、アメリカに挑戦する2025年も続けて使っていくという彼女たちの判断、これがやっぱりすべてを物語っています。それだけクラブへの信頼があるということなんだと思いますね」
ちなみに、岩井姉妹のカラーモデルといえば「Type-S!」と思うゴルファーは多いと思うが、実はType-DやMAXでもマゼンダやターコイズブルーを選べるという。
選手からの信頼もあり人気ドライバーとして広く知れ渡った既存の2モデル、Type-SとType-D。そしてMAXの追加でさらに選択肢は広がった。なお、今回試打した「YONEX FITTING STUDIO TOKYO」のような「ヨネックスフィッティングスタジオ」が35都道府県に93店舗ある。このスタジオには、ヨネックス自社工場にて所定の研修を修了したクラフトマンが常駐。ヨネックスのヘッドとシャフトの組み合わせを知り尽くした「スタジオ」でフィッティングすれば、あなたに最適な1本が見つかるはずだ。
撮影/小林司
協力/YONEX FITTING STUDIO TOKYO