
ゲーリー・ウッドランド。米国カンザス州出身、1984年5月生まれの40歳。2011年からPGAツアー参戦、ツアー4勝。2019年、ペブルビーチで開催された全米オープンでメジャー優勝。写真は2022年、当時はウィルソンのキャップだったが、今はコブラと契約し、コブラのキャップ
2019年の全米オープンチャンピオン、ゲーリー・ウッドランドが先頃PGAツアーの「カレッジアワード(勇敢賞)」を受賞しました。この賞は耐え難いほどの困難を乗り越えた彼にふさわしい賞といえるでしょう。
それは2023年4月のことでした。普段は楽天家で明るかった彼が突然睡眠障害とパニックに襲われたのです。医師に相談しMRI検査を受けると、不安や恐怖をつかさどる脳の部分に損傷があることがわかりました。薬で症状を抑えながらプレーを続けましたが、精神状態が危うくなったといいます。プレショットルーティンは支離滅裂で集中力を欠く状況に、このままでは競技を続けられないと、9月に腫瘍を取り除く手術を受ける決断をします。
彼が病気を最初に打ち明けた相手はジャスティン・トーマスでした。ゴルフをしている最中にウッドランドの異変を感じ、何かあったのかと尋ねると、「実は脳腫瘍だ」という答えに絶句したそうです。「我々は同じ事務所なので彼がいつ検査を受けるかなどを教えてもらい、リマインダーをセットして〝上手くいくといいな〞とか〝どうだった? 〞とかメッセージを送りました。友人として、仲間として、無力感を覚えたけれど、彼や彼の家族に寄り添っていたかった」とトーマス。

脳腫瘍を患い、2023年9月に開頭手術を受けながらも翌年1月からツアーに復帰したゲーリー・ウッドランド。2012年に創設されたPGAツアーの「カレッジアワード」を受賞し、今年のコグニザントクラシックin パームビーチの試合会場で表彰された
たとえ苦難が待ち受けていても「必ずやり遂げる」というのがウッドランドの信条。死をも覚悟した脳の手術。頭に野球のボール大ほどの穴を開け病変の大部分を取り除きました。退院のとき彼は車椅
子に頼りませんでした。
「この場所に歩いて入った。歩いて出ていく」。2日後には自宅でパットを打ち始め、裏庭でアプローチの練習もしましたが「転びそうになった」と自嘲気味に語りました。彼はゴルフ以外のどんなスポーツでも成功したであろう身体能力の持ち主。

カレッジアワードの受賞トロフィとウッドランド。今季の平均飛距離は315.6ヤードでツアー4位。豪打も復活!
高校ではバスケットボールで将来を嘱望されていました。ゴルフに転じ全米オープンを含むツアー4勝を挙げた彼を支えてきたのが豊富な練習量。手術を受けても「アスリートとしてこれを乗り越える」と誓い、「心臓が鼓動を刻んでいる限りプレーすべき」と切磋琢磨し、わずか4カ月後にツアー復帰を果たすのです。
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※週刊ゴルフダイジェスト2025年4月1日号より(ARRANGE/Mika Kawano PHOTO/Blue Sky Photos、Getty Images )