バンカーはダフリOK! グースネックは理にかなっている
GD 今年の「ジャパンゴルフフェア」は大盛況でしたが、気になったものとして、「リンクス」の『マスターモデル』の復刻版と、「ピン」から往年の名器『EYE2』を彷彿とさせるバンカー専用ウェッジ『BunkR(バンカー)』がありました。
リンクス『マスターモデル』は1970年代から90年代にかけて日本で大流行したウェッジです。特にバンカーでの機能が高く評価されたウェッジでした。“オリエンタルマジック”と言われた青木功プロが使用していたこともありますが、ほぼすべてのプロ、トップアマ、それに影響されたアマチュアまで使用していました。一方、ピン『EYE2』は、アメリカを起点に大人気となったウェッジです。フィル・ミケルソンが学生時代から使用していて、現在でもEYE2形状のウェッジを使用しています。
同じタイミングで日米で人気を博した往年の名器が蘇った。これは偶然なのか、それとも現在主流のティアドロップウェッジに何らかの問題が生じていて、それを解決するために投入されたのか。そのあたりを今日はお話いただけますか。
長谷部 今回取り上げる2本のウェッジはバンカー専用で生まれたサンドウェッジのことを指すんだと思うんですけど、そもそもアマチュアからするとバンカーは難しい、だからやさしいバンカー専用のウェッジが欲しいという中で生まれたのがピン『EYE2』ウェッジであり、リンクスだと思います。そのクラブを「ウェッジの名手」と言われるフィル・ミケルソンとか青木さんが使っていたというところが、ひとつ注目しなければいけないところなのかなと思います。
2人とも手首を上手く使って多彩なテクニックでアプローチをします。そんな技を持っている2人がグースネックのちょっと変わったフェース形状のものを使っているというところが気になりますね。
GD この2本に共通するのは極端なグースネックであり、リーディングエッジが丸く出ている。そしてフェースのトウ部分がストレッチしている点です。一見、異形に感じる顔ですが、フェースが開きやすい。またソールも独特でバウンスがしっかりついていて、砂に潜らず跳ね上げてくれるというのが共通している機能だと思うんですけど。
長谷部 「リンクス」に関しては、そのままの形状で使っていたプロはいないと言われるぐらいフェースからソールからガリガリ削って使ってたという話を聞いたことあります。実際、私もリンクスをベースにしたウェッジ開発の裏側にいたので、倉本昌弘プロが削ったというリンクスを見させてもらったこともあります。
プロがカスタマイズしやすい原型がそこにあって、ちょっと手を加えることですごく良くなったというのがあるんじゃないかなと思います。今回の復刻版もそういった(削って完成させるもの)目で見させてもらいました。
GD この2本のウェッジと現在の『クリーブランド TA588』をルーツとするティアドロップの間には、日本では『ジャンボ MTNⅢ ウェッジ』があり、『マッシーサンド』があり、『マルサンド』があり、グースネック文化が1990年の終わりまでありました。
一方、アメリカのウェッジで人気だったのは『ベンホーガン』、『ウィルソン』でしたが、そこに『クリーブランド TA588』を使うタイガー・ウッズが登場して、世界的に現在のティアドロップ人気という流れになっています。
長谷部 オフセットの少ない、いわゆる出っ刃ウェッジが主流になったのは、日本人選手がアメリカに行った時に洋芝でボールが沈んでいる状況でウェッジショットをするとダフッてしまうことがあって、日本メーカーの設計に影響して少しずつオフセットが小さくなっていったという記憶もあります。
また、バンカー専用のウェッジで考えるとオフセットはあっていいものなのですが、オフセットに対しての考え方は日本とアメリカの打ち方の違いもあるのかなと思います。
GD ティアドロップが出てきた当初は、バランスがD8、D9もしかしたらEバランスみたいにヘッドがかなり効いているものがほとんどで、どちらかというとオートマチックに打ちたい。
片や「リンクス」はヘッドを削ったりしているためにバランスは軽めで手先の操作ができた。操作性のいいウェッジとオートマチックなウェッジという両者まったく違うものが戦い合っていて、結果的にオートマチックが選ばれたっていう感じがします。
長谷部 そうですね。バンカーでは軽いヘッドで綺麗に振り抜けるのは、いわゆる「技を持っている人」でないと使いこなせなかったという言い方もできると思うので、一般のアマチュアはダフることを前提にちょっと重めのウェッジを使ってもらい、フェースを開くというのも加減が必要なんですけど、フェースを開いても開かなくてもバンカーショットではバウンスが利いているものが打ちやすかったという結果にも表れたと思います。
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