「長谷部祐とギア問答!」は、国内外大手3メーカーで、誰もが知る有名クラブの企画開発を20年超やってきたスペシャリストの長谷部祐氏に、クラブに関する疑問を投げかけ、今何が起こっているのか? その真相を根掘り葉掘り聞き出すものです。クラブ開発の裏側では、クラブ開発の裏側では、こんなことが考えられているようです……。

「距離管理」ではカバーできない専用クラブの必要性

GD ティアドロップが世に中に普及して20年が経ちました。その中でソール形状のバリエーションが増えてウェッジの中でのフィッティングが進んでいったわけですが、昔は自分に合うように削り込んで細工をして仕上げていました。削り込むことが前提でヘッドがやや重く作られていたことも、結局は自分の打ち方に合うウェッジを求めていくということでは、到着点は同じなんじゃないの? と思いますが。

長谷部 タイガーも(鋳造したままの)ローヘッドをフェース面とソールだけちょっと削って全体の研磨をせずにそのまま使っていたと言われていますけど、いかんせんバンカーだけに限って言えば、ヘッドが重いことはアマチュアにとっては重要なことだったと思います。
 
ただアプローチでザックリしてしまうとか、上手く打てないっていう人が多い中で、重いヘッドが逆にダフリのミスを誘発するというのは以前から言われていることで、自分も指摘していることなんですけど、じゃあ何をもってやさしいウェッジかとするとバンカーに限定すれば、つかまりのいいグースネックであったり、開きやすいトウ高なウェッジのような気がします。
 
リンクス『マスターモデル』やピン『EYE2』は形状からしても、フェースを開いてもトウ側の面積が広いので安心感があるし、最近トウの面鏡部がなくなってスコアラインが全部フェース全体に広げて作っているウェッジも出ていることを考えると、そういった形状のほうがアマチュアはバンカーでは打ちやすいんじゃないですかね。ただひとつ言えるのは『ドルフィン』など売れているやさしいウェッジの中には、オフセットが非常に少なく、フェース形状もオーソドックスなものも確かにあります。

GD もともとリンクス『マスターモデル』もピン『EYE2』もアイアンセットの中のサンドウェッジでした。セットの中のサンドウェッジでいえば『ジャンボ MTNⅢ』もそうですが、特別に専用設計したというよりは、距離を含めたロフトピッチから生まれてきたような気がします。たまたまこのサンドウェッジの性能がいい、特にバンカーショットが打ちやすいという見られ方をした。
 
現在のウェッジは、「何ヤードは何度で打ちますか?」という距離管理が主流になっていて、その中でなんらかの過不足が生じた場合、専用設計のものが必要なんじゃないかというのが、今回のリンクス、ピンの動きの背景にあるような気がします。

長谷部 そうですね。『ボーケイ』しかり、ロフトパターンを推奨して100ヤードを何度で打ちますか? 何番で打ちますか? みたいなところからフィッティングが始まるという話を聞いたことあります。
 
ということは、「距離換算でロフトを選びましょう」が推奨であって、だからバンカーが苦手な人がバンカーに入った時に何とかしたい、ピンに寄せたいということを考えた時には、ひとつの提案として、「ロフトで選びましょう」だけでは物足りなさを感じている人のために、「ピン」も「リンクス」ももっとやさしいクラブがあるよという、気づきを与えてくれているんじゃないですかね。

GD クラブのバリエーションが色々増えてきて、昔はウッドとアイアンかしかなかったのが、ウッド、アイアン、ユーティリティになり、ウッド、ユーティリティにもバリエーションが増えてきているので、14本の組み上げ方も1本は専用クラブにしても十分機能的なセット組みができるような気がします。

長谷部 飛距離や機能がかぶっているものをバッグに入れている人がけっこういます。フェアウェイウッドの7番とユーティリティがかぶっている、5番アイアンとユーティリティがかぶっているケースも多分あると思います。そういった重なってしまっている番手を1本除いて50ヤード以内のウェッジを入れる、もしくはバンカー専用のウェッジを入れるっていうのはありだと思いますよね。
 
2000年以降ウェッジに関して日本市場でUSブランドが席巻してしまい、結果としてアマチュアにとってはまだまだやさしくなくて、むしろ使用用途を限定しなくて距離感覚でしかないということになれば、シチュエーションで選んだほうがいいかもしれません。ちょっとヘビーなラフから打ち出すにはヒールの低いウェッジのほうが使いやすいですし、バンカーもソール形状が広い、フェースの大きいほうが打ちやすいことがあります。

GD プロギアの『R35』はロングヒット商品になっていて、ピンの『ChipR(チッパー)』も復刻したらすごく売れていて品薄状態になっています。現在の通常のクラブではカバーしきれない場面で重宝されているわけですが、そういった専用クラブが見直されることもあるのでしょうか?

長谷部 14本をきれいなセッティングでまとめたいという気持ちは自分もよくわかります。自分もウェッジを4本入れていて、46度から58度を4度刻みで同じブランドで統一したいという思いがありそうしています。ただその中で、最後の58度はその中でもモデルを選んで、自分でもソールに手を加えているので、サンドウェッジ(SW)の「S」はサンド(砂)の「S」ですけど、スペシャルウェッジの「S」の可能性もあって、その人特有の何か特別なクラブがあってもいいのかなと。
 
そう考えると、復刻版であるリンクス『マスターモデル』とかピン『EYE2』を彷彿させるバンカー専用ウェッジは興味深いクラブになりますね。

※2025年3月31日10時30分、一部加筆修正しました。

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