そもそも日本シャフト『NSプロ モーダス3』シリーズってどんなシャフト?
3月15日に日本シャフトの新作『NSプロ モーダス3 ツアー110(以下・ツアー110)』が発売されました。『NSプロ モーダス3(以下・モーダス3)』の初代が登場したのは2010年。トーナメントでのスチールシャフトのシェア率アップの目的でN.S.PROブランドを持つ日本シャフトが開発したツアーブランドシャフトです。
2010年に初代として発売されたモデルは『NSプロ モーダス3 ツアー120(以下・ツアー120)』。大手メーカーのアイアンにも多く採用されているシャフトなので、使用したことがある方も多いのではないでしょうか。 今回発売された『ツアー110』は2020年に発売された『NSプロ モーダス3 ツアー115(以下・ツアー115)』以来、5年ぶりの新製品となります。

3月に発売された『NSプロ モーダス3 ツアー110』
今回は3月に発売された『ツアー110』を検証していきますが、検証する前に改めて『モーダス3』シリーズをおさらいしたいと思います。
『モーダス3』とは3つの要素から成り立つシャフトという意味
まず『モーダス3』のネーミングですが、3つの要素から成り立つシャフトという意味になります。 その3つの要素とは「高低/左右・距離・方向性」です。私の記憶では初代モデルの『ツアー120』は開発段階では日本のツアープロだけでなく、PGAツアーで戦う選手の使用も念頭に開発されたシャフトです。
当時、日本シャフトがモーダス3のファーストモデルにどのような特性を持たせるか色々と検討したと聞きます。日本のトッププロのテストから始まったこのプロジェクトは、海外ツアーでスチールシャフトのトップシェアを持っていたブランドの特性とは違う、それまでにない特性を持つ『ツアー120』をファーストモデルとして投入された経緯があります。
それ以来、PGAツアーの選手はもちろん国内のツアープロの使用率を高めるために「高低/左右」弾道を操ることができる打ち分け性能。「距離」番手毎に必要とされる確実な距離性能。「方向性」ターゲットに対しての正確な方向性能。 これら3つの要素をポイントにツアープロの意見や要望を取り入れたモデルを常に開発して新モデルとして投入。
勝利を追及するためのシャフトとして発売から15年もの間に数種類のモデルが追加され、今回新たに『ツアー110』が加わったことで『モーダス3』シリーズのアイアン用のラインナップは、ツアー105・110・115 ・120 ・125 ・130の全6種類となりました。
日本シャフト『NSプロ モーダス3 ツアー110』はどんな特性を持つ?
では、『ツアー110』を検証していきたいと思います。『ツアー110』は R 、S、Xの3フレックスが用意されています。
まずはメインのフレックスでもあり、多くの方が興味のあるSフレックスから検証していきます。 テストクラブは「EPON AF307」の7番アイアン、37インチ(60度法)。各フレックスのスペックデータは以下の通りです。
フレックス | シャフト重量 | トルク | キックポイント | 振動数 |
R | 105グラム | 1.8 | 元調子 | 312CPM |
S | 110グラム | 1.6 | 元調子 | 326CPM |
X | 115グラム | 1.5 | 元調子 | 337CPM |
Sフレックスの振り心地は?
フレックス | シャフト重量 | トルク | キックポイント | 振動数 |
S | 110グラム | 1.6 | 元調子 | 326CPM |
Sフレックスは振り始め、全体的にハリ感があるしっかりとしたシャフトだと感じました。元調子の表記だったこともあり、もっと手元側に粘りがあってタメが作れるようなフィーリングをイメージしていたのですが、手元側は硬めで切り返しのレスポンスの良いスッキリしたシャフトです。
中間部分から先端部分にかけてもシャープさがあり、シャフト先端部分の動きが少なく、スピード感があります。 シャフトの動きに合わせたスウィングをすると、インパクトで深く入りすぎず、ボールはクリーンにヒットできます。 もちろん打ち込んでインパクトすることでしっかりと厚いインパクトも可能なシャフトですが、多くの方がイメージする元調子シャフトとは違います。 最近のプロのスウィングに合わせて開発された新設計の元調子シャフトといった感じです。

「『ツアー110』は新設計の元調子シャフト」
練習場のレンジボールでの弾道としては打ち出し角度は高くなりすぎず、やや抑えられています。バックスピン量は多すぎず、少なすぎずといったところでしょうか。ボールのつかまりに関してはシャフトを自然に振っている時には左に巻き込みにくい印象です。
元調子シャフトはボールがややつかまるというイメージがある方にもターゲットに対してライン出しがしやすいと思います。 Sフレックスはパワーのあるプロやアスリートゴルファーのスウィングで切り返した時に元調子の感覚を感じられるくらいのフィーリングです。 シャフト重量が110グラムですので、一般的なゴルファーにもこの重量帯のニーズは多いと思いますが、スウィングタイプによってはやや硬めに感じるフレックスです。 Sフレックスでもツアープロやアスリートゴルファーの求める今までのイメージとは違うフィーリングの新設計の元調子シャフトです。 アマチュアゴルファーが使う場合は自分の求める弾道が出るかどうか実際に打ってみて判断する必要があるでしょう。
Rフレックスの振り心地は?
フレックス | シャフト重量 | トルク | キックポイント | 振動数 |
R | 105グラム | 1.8 | 元調子 | 312CPM |
続いて、Rフレックスを試打していきます。Rとしてはしなり量が少ないイメージでスッキリとした振り心地。 Sフレックスほど硬くはありませんが、手元の粘り感はほんの少しでレスポンスの良い切り返しを生みます。シャフト先端部分の動きは少なく、インパクト時にボールに対してヘッドが深く入る感じはありません。
練習場のボールでの弾道は7番アイアンの弾道としては高さが抑えられた中・高弾道。 バックスピン量も多すぎず、少なすぎずといった感じです。 ツアープレーヤーを基準に設計されているRフレックスですので、左に巻き込みにくい弾道でイメージよりもしっかりとしています。
切り返し時にシャフトがタメを作ってくれる感じはあまり感じず、自分で切り返し時にタメが作れる人のほうが合うと思います。 装着するヘッドやクラブのバランスで印象が変わるフレックスだと思いますので、様々なアレンジの可能性を感じます。 低重心設計のアイアンヘッドとのマッチングも面白いと思います。 今までにない設計の元調子シャフトですので、一般的なゴルファーはRフレックスを基準に選んで良いと思います。
Xフレックスの振り心地は?
フレックス | シャフト重量 | トルク | キックポイント | 振動数 |
X | 115グラム | 1.5 | 元調子 | 337CPM |
最後にXフレックスを試打しましたが、Xらしく手元剛性が高く、しなりの少ないしっかりとしたシャフト挙動はプロ、アスリートゴルファー向けのシャフトだと実感させてくれます。 スッキリとしたシャープなフィーリングの元調子シャフトですので、最近のプロやアスリートゴルファーの求める設計らしくフィジカルの強い方には切り返し時に粘り過ぎることなく、心地良いタイミングの取りやすさを感じられると思います。
硬めの先端部分の動きはヘッドが垂れることがないのでインパクトで深く入り過ぎず、ボールをクリーンにヒットできるインパクトを実現してくれるでしょう。 一方で、切り返し時にパワーがないゴルファーだと手元側がしならせきれずにアウトサイドからのスウィング軌道になり、弾道が低くくなったり、左への引っかけのミスが出やすくなると思います。 そのようなミスが出る場合はXフレックスはオーバースペックと判断して良いでしょう。
アイアンシャフトは装着するヘッドの重心設計やスウィングタイプによって印象が変わると思います。しかし、今まで手元調子のシャフトを使うと手元が粘り過ぎてスウィングイメージと合わない方や、インパクトが深く入り過ぎる方、アイアンの弾道が高過ぎて抑えたい方や、多すぎるバックスピン量を低減したいと思っている方は試してみて下さい。
今までにないフィーリングの新設計の元調子シャフトでとくにXフレックスにその特性が顕著に出ています。
番手ずらしがオススメ
『ツアー110』は、私のようなシニアゴルファーがイメージしている手元調子シャフトではなく、最近のプロやアスリートゴルファーのスウィングに合わせて開発された新設計の元調子シャフトです。

『ツアー110』のSフレックスをどうしても使用したいゴルファーには番手ずらしがオススメ
Sフレックスはアマチュアゴルファーも使う方が多いフレックスだと思いますが、試打した際に硬く感じるような方には是非番手ずらし製作で使ってみて欲しいと思います。
6番アイアン用のシャフトを7番アイアンのヘッドに装着して、1番手軟らかいほうへの番手ずらしを実際に製作し、打ってみましたが、個人的に手元側にしなりを感じやすくなり、弾道も好みのイメージに変化がありました。参考までに今回試した番手ずらしのシャフト振動数を記載します。装着するヘッド重量やシャフトレングスによって数値は変わりますが、参考にしてみて下さい。
フレックス | 振動数(6番シャフトを7番に) | 振動数(7番シャフト) |
S | 319CPM | 326CPM |
X | 331CPM | 337CPM |