ツアー解説でおなじみの佐藤信人プロ。今回は、DPワールド(欧州)ツアー、カタールマスターズで、3年ぶり4勝目を挙げたリー・ハオトン(中国)について語ってもらった。
画像: 片足立ちパット練習を参考にしたい

片足立ちパット練習を参考にしたい

中国のリー・ハオトンに注目

画像: 欧州ツアー4勝のリー・ハオトン(中国)。「スウィングはダイナミック。シャットに上げてレイドオフ。自分と向き合った結果、『変えない』という結論に達して戦う思いがスウィングにも出ています」(佐藤プロ)

欧州ツアー4勝のリー・ハオトン(中国)。「スウィングはダイナミック。シャットに上げてレイドオフ。自分と向き合った結果、『変えない』という結論に達して戦う思いがスウィングにも出ています」(佐藤プロ)

好調と不調の大波を年単位で繰り返しているのが、プロ11年目の29歳、中国湖南省生まれのリー・ハオトン(李昊桐)。2月のDPワールド(欧州)ツアー、カタールマスターズで、3年ぶり4勝目を挙げました。11年、15 歳でプロ転向。14年にスタートしたPGAツアーチャイナで3勝を挙げ初代賞金王に輝きました。このとき19 歳。15年はPGAツアーの下部、ウェブドットコムツアーに昇格。11月に地元中国で開催されたWGC - HSBCチャンピオンズで7位とPGAツアーでは中国人として最高位のフィニッシュを果たします。16年にはボルボ中国オープンで欧州ツアー初優勝。

その後は欧州ツアーを主戦場としてきました。17年の全英オープンでは、最終日に63を出し3位に。18年1月のドバイデザートクラシックでは、ローリー・マキロイとガチンコの優勝争いを演じ1打差で振り切って優勝。リーの名を世界に知らしめる試合となりました。直後に世界ランクは自己最高の32位に。

マスターズ初出場を果たすとともに、翌19年にはプレジデンツカップメンバーにも選ばれます。ここまでは順風満帆と言っていいでしょう。しかし、不調の兆しはこの時期から。20年は18試合に出場、予選通過は半分の9試合に。翌21年は深刻で17試合中棄権1試合を含む14試合連続予選落ち、予選通過はわずか2試合という散々な結果に終わります。早熟な天才少年が、このまま消えてしまうのかと思ったものでした。

しかし一度沈んでも浮かび上がるのがリーの持ち味。22年6月、ドイツのBMWインターナショナルで4年ぶりの復活優勝。試合中は飛んでいくボールに、「行け!」「止まれ!」とほえまくり、ウィニングパットを決めると今度は号泣。「10カ月前はゴルフをやめようと思っていた」という涙ながらのコメントは今も印象に残っています。

これで完全復活と思いきや、23年は出場21試合で予選通過はわずか22試合。それも日本で開催されたISPS HANDAの31位が最高で、あとは翌週の韓国選手権の71位。再び引退の危機を迎えます。しかし24年には23試合で16試合に予選通過し、少し復調の兆しが。そして今年、前述のカタールでの4勝目となるわけです。2打差リードで迎えた最終日、リー・ハオトンはボギーを3つ出しましたが、すべて次のホールでバウンスバックしています。このあたりにも彼のガッツが出ている感じでした。

優勝後、彼がアップしたインスタグラムには、「自分なりの情熱を見つけ、それをやり通せ。他の人はどうでもいい。自分自身と向き合って戦え。最後のウィニングパットを決めてギャラリーの歓声を聞いたとき、900日以上のすべてが吹き飛んだ」との一文。成績がなかなか出ない選手にはとても刺さる言葉だと思います。これに多くのプロも共感したのでしょう。数多くの祝福の言葉が寄せられました。

フェアウェイキープ率30%台が示すように、ティーショットに苦労していることは確かです。フェードヒッターですが逆球も出るため、曲がるのを嫌がって強振するのか、「もっと軽く振ったら」と言いたくなるほど。しかし、悩んで周りの評価に自分を難しくしてしまうより、信じるものを見つけて徹底的に向き合う。こういったエネルギーをリーのスウィングにもプレースタイルにも感じます。

カタールでの最終日の18番、セカンドに向かうところで「今、トップは誰?」とカメラマンに聞くリーの姿が映りました。一打一打に一喜一憂しながら感情を出してやってきたリー・ハオトンがまったくボードを見ていなかったということになんとも不思議な感じがしました。「自分自身と向き合って戦え」を実践していたのかもしれません。

「片足パット練習」を参考にしたい

画像: 「手と足を逆にし、片手片足で打つ。通常はしないバランスで打つことで、自分のなかに大事なものを見つけることができるのでしょう。片手片足だと難易度は高いですから、片足両手から始めることもよさそうです。ティーを刺して、ボールの軌道を確認するドリルも参考になります」と佐藤プロ(撮影/姉崎正)

「手と足を逆にし、片手片足で打つ。通常はしないバランスで打つことで、自分のなかに大事なものを見つけることができるのでしょう。片手片足だと難易度は高いですから、片足両手から始めることもよさそうです。ティーを刺して、ボールの軌道を確認するドリルも参考になります」と佐藤プロ(撮影/姉崎正)

さて、リー・ハオトンの技で皆さんの参考になりそうなものはパッティング。彼はパットの名手ですが、独特なドリルを行っています。

動画でも公開しているそれは、左足1本で右片手打ち、右足1本で左片手打ちを繰り返すもの。通常やらないバランスでやることで体幹や軸を感じ、また体やヘッドの動きを確認しているのでしょうか。読者の皆さんも一度試してみる価値はありそうです。

※週刊ゴルフダイジェスト2025年4月15日号「さとうの目」より

▶▶▶米ゴルフダイジェスト誌のYouTube・ショートでリー・ハオトンの練習を確認する

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