開幕を翌日に控えた水曜日、オーガスタナショナル内にあるパー3コースで、パー3コンテストが開催され、多くのパトロンたちの歓声が上がっていた。もちろん、その間もパー3コンテストに参加していない選手は本コースをラウンドしたり、ドライビングレンジやパッティンググリーン、アプロ―チエリアで最終調整を行った。

大会期間中、日が出ているうちにモアを見られるのは、水曜日のみだ
そして、練習ラウンドの最終組が出た後、もうひとつのグループが最終調整に入った。コース管理の面々だ。
大会中は日の入り後、夜間にコースの整備が行われる。もちろんコース内からはメディアも排除されるため、その様子を眺めることはできない。しかし、大会初日の前日だけは、パー3コンテストが開催されている傍ら、コース内でデモンストレーションのようにコース管理が始まる。芝を借るモアが横一面に並び、芝を借り込んでいく様子はマスターズでの選手のプレーに匹敵するような迫力を感じた。
世界トップのコース管理技術を持つオーガスタナショナルGCであっても、これだけ大きな大会をクラブだけで行うことは無理。そこで世界のゴルフ協会から応援を集め、世界中の優秀なコース管理担当者がやってくる。もちろん、それぞれの国や地域のゴルフ協会で名の知れたトップ技術者のみが声がかかる。そのため彼らにとっても、マスターズでコース管理を行うことは夢であり、この上ない栄誉なのだ。

夕日が照らす中、コース管理が行われる様子は幻想的にさえ映る
以前、取材した日本で腕利きと評判のグリーンキーパーが「マスターズに派遣してもらって、いろいろ学ばせていただいた。コース管理には自分なりに自信がありましたが、まだまだ知らないことは多いと身をもってしりました」と話してくれたことを思い出したが、ただ自分の技術で大会に貢献するだけではなく、大会の管理を経験することでレベルアップできる。それほどオーガスタナショナルのコース管理技術は世界でも並ぶものはいないのだ。
「マスターズでコース管理を担当」といえば、それはもはや最高の経歴で、技術力や知識の高さを証明するものになる。コース管理界では一種のブランドだ。

木の根元には茶色の松の葉っぱが大量にあるが、上を見上げても茶の葉っぱはない。違和感しかなかったが、メンテナンスカートで茶色の葉っぱが運び込まれて地面に敷き詰めているのを見て、納得した
ちなみに、コースは緑一色に染まっているが、木の下は茶色となっていてコントラストが美しい。ここには松の葉が敷き詰められているのだが、もちろんその木が落とした葉ではない。コース整備時にスタッフが手作業で、乾燥させた松の葉を敷き詰めていく。運が良ければその様子を見ることもできる。
プレーヤーばかりか大会運営にかかわるものすべてが、世界中から集められたトップばかりなのがマスターズ。この試合にかける多くの人の努力が、見るものを引き付ける試合を生み出している。