マスターズ開催を翌週に控え、ひと足早くオーガスタ女子アマ決勝がオーガスタナショナルGCで行われた。コースに踏み入れてみると、芽の詰まった緑のフェアウェイ、美しく咲く花々、心地よく響く鳥のさえずりなど、思い描くオーガスタナショナルの姿がそこにあった。しかし、コースを回っていくうちに、予習のために見てきた、昨年までのコース写真に比べ、木々がかなりなくなっていることに気付いた。

上が土曜日に撮影した13番グリーン。木の間に空の青色が目立つ。下が昨年の大会中に撮影。グリーン奥は木々の身長が揃い、びっしりと緑の襖に覆われていた。上の今年の写真は木が倒れ、枝が折れたのだろう。何か、木が間引かれたように映る
例えば13番パー5。昨年撮影した写真と比べると、グリーン後方の木々が少なくなっているのが分かるだろう。昨年はびっしりと緑の襖で満たされていたグリーンの背景が、今年は空が透けて見える。初見であればただ美しく見えるかもしれないが、長年見続けてきたファンであれば違和感しかないはずだ。ほかにもティーイングエリアの左右が並木に囲まれていた17番や12番パー3も木が少なくなり、これまでとは違った印象を感じる。
街中のいたるところに災害の爪痕が
街まで足を延ばしてみたが、コース近くの閑静な住宅街もブルーシートが被せられたままや無残にも崩れ落ちた家屋がいまだそのまま残っていた。さらに多くの庭先の木がなくなり、以前とは違い閑散とした風景が広がる。

住宅の前には切り株や掘り起こされた土が広がるところが多い

修理が進んでいない住宅も散見する。関係者の話では「昨年訪れた時は家があった場所でも、更地になっているところもあった」という
現地の人に話を聞いてみると「多くの木が倒れて、家屋の倒壊も多くありました。送電線は道に垂れ下がった状態。場所によっては10日以上電気が来ない地域もあったりと、かなり深刻なダメージを受けました」。
街全体が大きな被害を受けたハリケーンからの復興の真っ最中。オーガスタナショナルGCも被害を受けながら、コースの美しさや戦略性が変わらない姿で大会を開催できるまで回復した。そこで行われるゴルフの祭典・マスターズを求めて世界中からゴルフファンが街にやってくる。初開催された1934年以来、地元民たちボランティアやキャディとして大会の運営を支えてきた。その彼らは同時に自分たちの生活を取り戻そうと頑張っている。パトロンたちが一喜一憂するトップゴルファーの一打一打が人を集め、街全体の復興を後押ししていく。
今年もまた花咲く4月になった。マスターズが今週開幕する。今のオーガスタナショナルの姿を、テレビで確かめてほしい。
PHOTO/Masaaki Miyazawa、Blue Sky Photos