
18番グリーンで跪いたあと、雄たけびをあげるマキロイ
3日目を終えて首位に立ったマキロイ。2位のブライソン・デシャンボーとの差は2打。「今年こそマキロイがやってくれる」、そんな期待が会場を埋め尽くしていた。注目の最終組にはパトロンが集まり、ホールを終えるごとにその人数はさらに増えていく。はじめは帯同して観戦しようと考えていたが、その人数の多さと欧米人の身長の高さが相まって、日本人である週刊GD編集Tではどこに行っても2人をまともに見ることができない。そこで、早朝に18番グリーンに椅子を置いて場所取りをしてあったことから、フロント9を終えた時点で、早々に決着の場所・18番へ。最終組が来るまで18番で観戦することにした。

多くのパトロンが最終組に付いて回った
出だし2ホールでスコアを落として、デシャンボーに逆転を許したマキロイだったが、デシャンボーがスコアを落としたこともあり、9番を終えた時点でその差は4打。10番ではパトロンが「カモン、ローリー」と鼓舞。その言葉は「このまま何もなく行ってくれ」、そのように聞こえた。
続々と18番にほかのホールで観戦を終えたパトロンたちが集まってくる。最終組が12番を終えたころには人だかりで、椅子を置いてあるシッティングエリアの入り口がどこにあるかもわからなくなるほどだ。
彼らが見ている18番に設置されたリーダーズボードは、当たり前だが各ホールを終えるとスコアがすぐに無線で知らされ、スコアボードの数字が、今の時代当たり前でない“人力”で変更されていく。マキロイは10番まで順調にスコアを伸ばしていたが、11番でボギー、13番でダボ。アンダーを示す赤色の数字が小さくされることに合わせて、パトロンのため息が漏れる。
ジャスティン・ローズが後半にスコアを伸ばして追い付いてきた。驚きの声があちこちから上がり、マキロイが14番でボギーを叩くと、またため息。ローズが15番、16番の連続バーディを奪ってマキロイを逆転した。今度は悲鳴にも似た声。17番でローズがボギーを叩くと、「イエス!」の声。ローズが18番でパーオンに成功、拍手で迎え入れるパトロン。バーディを決めた、ため息と歓声が入り混じった声だ。
マスターズ日本公式Xでジャスティン・ローズの18番バーディパットを確認する
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x.comその時、遠くで大歓声が聞こえた。もしかしマキロイか? ローズもじっとスコアボードを見つめる。そしてマキロイの17番の欄に「12」が掲げられた。バーディで1打差の首位だ。その瞬間、パトロンたちが「ローリー、ローリー」と大合唱を始めた。
18番グリーンにマキロイがやってくる。3打目のバンカーショットをしっかり寄せると、多くのパトロンがグランドスラム達成の瞬間を待ち望んでいた。しかしマキロイはパーパットを決めきれずボギーとして、ローズとのプレーオフに突入。
プレーオフは18番と10番を交互に行うが、先ほどマキロイが打ったバンカーなどをコース管理がならし、プレーオフの舞台を整え終えると、パトロンから彼らに向かって感謝の拍手と歓声が向けられた。

優勝が決まった瞬間、マキロイは泣き崩れる。そしてキャディに抱えあげられるようにして起き上がった
そして始まったプレーオフでマキロイがセカンドショットをベタピンにつけ、ローズがバーディパットを外すと期待は最高潮に。いよいよ決着の時だ。一瞬の静寂。マキロイがバーディパットを沈めると一気に感情がはじけた。ついにやった。大歓声の中からマキロイの嗚咽が聞こえたが、みんな笑顔。ハイタッチをして自分のことのように喜ぶ。そして拍手。その興奮はマキロイの姿が見えなくなるまで続いた。

敗れて悔しいはずのローズだが、それを微塵も見せずにマキロイを称えた
18番では様々な国の言語で会話する声が聞こえた。ローズを応援していたパトロンもいただろう。でも、マキロイの悲願達成を目撃して、嘆く姿は皆無だった。コースに居合わせたパトロン全員が、マキロイを心から祝福していた。
PHOTO/Yoshihiro Iwamoto
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