ツアー解説でおなじみの佐藤信人プロ。今回は、ザ・プレーヤーズ選手権でプレーオフの末にローリー・マキロイ敗れたJ・J・スパーンについて語ってもらった。
画像: 「母はフィリピンとメキシコのハーフ、父はアメリカ人。アイアンの上手さを表すスタッツ、SGアプローチグリーンは、4月9日現在C・モリカワに次ぐ2位です」(佐藤プロ)

「母はフィリピンとメキシコのハーフ、父はアメリカ人。アイアンの上手さを表すスタッツ、SGアプローチグリーンは、4月9日現在C・モリカワに次ぐ2位です」(佐藤プロ)

第5のメジャーと言われるザ・プレーヤーズ選手権は、マキロイの通算28勝、19年以来の大会2勝目で、史上8人目となる同選手権の複数回優勝で幕を閉じました。しかし今回紹介するのはマキロイではなく、プレーオフの末に敗れたJ・J・スパーンです。

サンディエゴ州立大出身の34歳、ロサンゼルス生まれのコアなドジャースファンで、チームのロゴの入ったヤーデージブックを使っているほどです。

本当にいろいろなことが起こった試合でした。ひとつでも違っていたら、結果はまったく別なものになっていたでしょう。まず、最終日となるはずだった日曜日は、荒天により約4時間の中断。最終組のスパーンがホールアウトした時点で、すでに暗くなり、プレーオフでは3ホールは必ず行う規定ですから、12アンダーで並んだ2人のプレーオフは翌日の月曜日に持ち越されました。

スコアだけを見れば、4打差リードでスタートしながら、追うマキロイに追いつかれたスパーン。PGAツアー1勝と通算27勝のキャリアを考えても、はた目にはそう映るでしょう。しかし中断再開後は、勝ち切れなかったマキロイと粘ってよく追いついたスパーンというイメージに。中断が1時間くらい短く、あのまま行っていれば、スパーンがよい流れのままプレーオフに臨めた感じでした。

プレーオフは16、17、18番の3ホールで行われます。ところが風は、日曜日とはまったくの逆。16番がフォロー、17番、18番がアゲンストに変わります。浮き島の17番パー3の風の読みが勝負になる、と誰もが思っていました。

驚かされたのはプレーオフに入る前の練習です。練習場は打席から16番と同じフォローでしたが、17番のショットを試すため2人は反対を向き、3番のグリーンに向かって打ったのだそうです。ちなみに日本では打席で反対に向いてコースのほうへ打っていいという環境がまずないので、そもそもそういう発想がありません。それと日本選手に限らず、もしトラックマンのような測定器を持っていないとこのようなケースのときに不利だなあと感じました。

そして本番、マキロイは9番アイアンでグリーンをキャッチ。対するスパーンの8番アイアンで打った「思った以上に高く上がったボール」は、風に押し戻されることもなくグリーンを越えてまさかの池ポチャ……。そのとき、風が一時的にやんだのか、アドレナリンが大量分泌したのかはわかりません。ただ、マキロイをして「完璧なショットだっただけにかわいそう」という会心の一打であったことは間違いありません。

余談ですが、21年からプレーオフの打順は、これまでのくじ引きから、先の組で上がったほうからおよび同組の場合はスタートホールの順番と変更になりました。つまりこの試合では、マキロイが先に打ちます。プレーオフ1ホール目、飛ばし屋のマキロイはフェアウェイど真ん中へ。横綱相手の試合、これがプレッシャーになった可能性もあり、アドレナリンの分泌につながったのかもしれません。

PGAツアーの公式YouTubeでザ・プレーヤーズ選手権のプレーオフを振り返る

画像1: Every shot from THREE-HOLE PLAYOFF | THE PLAYERS | 2025 www.youtube.com

Every shot from THREE-HOLE PLAYOFF | THE PLAYERS | 2025

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ただ、グッドルーザーという言葉がありますが、この敗北がスパーンのファンを増やし、またメディアの好感度を上げたことは間違いありません。上位に名を連ねた4日間、そして敗北後の取材の対応が実に好感が持てたのです。

〝第5のメジャー〟であると同時に、難コースで戦ったアーノルド・パーマー招待から入ってくる選手が多く、総じてイライラを隠せない一流選手も少なくなかった。そうしたなか、悔しい負け方をしても、その辺にいる若者のように淡々と話すスパーン。

17番の池ポチャのシーンについては試合後、「ボクもまだ見ていないんだよ」と記者と一緒にビデオを見ながら説明。「あなたはキャリア目標を成し遂げたのか?」という記者の質問に対しても、「自分はエリートではないし、プロ転向した頃を思えば、自分が築いた1勝して10年くらいプレーしたキャリアは立派なもんだと思う」。

サンディエゴ州立大3、4年時には、オールアメリカンにも選出されていますが、推薦やスカウトではないウォークオン(Walkon)と呼ばれる、コーチのテストに合格しての一般入部。そこからはい上がってきた選手でもあるのです。

PGAにはいわゆる華やかなエリートがゴロゴロしていますが、彼の立ち居振る舞いや発言に、そうではない普通の選手の一面を垣間見た気もします。そのこと自体も新鮮でした。

さて、スパーンのゴルフですが、何よりアイアンの名手です。スウィングは至ってオーソドックスで美しい。言うのは簡単ですが、皆さんも一度はここを目指してみたいですよね。

◆参考ポイント=頭と尻の高さを変えずに回転するドリルでムダのないスウィングに

画像: 頭と尻の高さを変えずに回転するドリル。頭を壁に付けてのシャドースウィングや、誰かにクラブで頭を押さえてもらってのスウィング練習が、前傾角キープに効果的.

頭と尻の高さを変えずに回転するドリル。頭を壁に付けてのシャドースウィングや、誰かにクラブで頭を押さえてもらってのスウィング練習が、前傾角キープに効果的.

J・J・スパーンは、スウィング中に頭と尻の高さが動かず、前傾角が崩れません。体の中だけが捻転、回転するといった理想的なスウィングです。このスウィングを作り上げるには、ボクもよく現役時代にやっていた頭を壁に付けてのシャドースウィングや、誰かにクラブで頭を押さえてもらってのスウィング練習が効果的。実際にやっているPGAの選手も多く、トミー・フリートウッドたちがやっている姿もよく見ます。

※週刊ゴルフダイジェスト2025年4月29日号「さとうの目」より

佐藤プロが注目する期待の海外で活躍する選手たち

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