ツアー解説でおなじみの佐藤信人プロ。今回は、2月のジェネシス招待でPGAツアー2勝目をマークしたラドビッグ・アバーグ選手について語ってもらった。
画像: 2月のジェネシス招待でPGAツアー2勝目をマークしたラドビッグ・アバーグ(PHOTO/Bule Sky Photos)

2月のジェネシス招待でPGAツアー2勝目をマークしたラドビッグ・アバーグ(PHOTO/Bule Sky Photos)

今シーズン開幕前、「今年は真価を問われる1年になるぞ」と密かに思っていたのが、ラドビッグ・アバーグでした。それが早々と2月のジェネシス招待で、23年11月のRSMクラシック以来のPGAツアー2勝目をマーク。しかも多くの選手が難しいバック9で苦しむなかスコアを伸ばし、残り6ホールで4打差のビハインドをひっくり返す圧巻の優勝でした。

スウェーデン生まれ、テキサス工科大出身の25歳。同大時代の22年に世界アマランクで1位になると、翌23年PGAツアーユニバーシティ制度を利用してプロ転向。プロ初優勝は8月、欧州ツアーのヨーロピアンマスターズ。11月には前述のRSMクラシックでPGA初優勝を飾りました。さらにライダーカップの欧州代表にも選ばれました。

ところがその後、24年に限ってみると2位が3回あるものの未勝利に終わっています。RSMの優勝後は一流選手がそろう試合に出場することが増え、また初めて試合するコースといった事情も影響したのでしょう。しかし3回の2位は、ペブルビーチ、初メジャー挑戦となったマスターズ、そしてプレーオフ第2戦のBMW選手権。

プロ転向からわずか2年の選手としては上々の成績ですが、アバーグに期待するのは優勝、それも大きな試合での優勝です。ボクが真価を問われると感じたのも、そんな理由からでした。ちなみにこれまで予選ラウンドで2度同組になったジョーダン・スピースは「ここ何年かで間違いなく一番いい選手」と評価。その2試合は2位のマスターズと優勝したジェネシスだけに、一流だけが感じる一流の雰囲気を察したことは間違いありません。

今年のジェネシスは、ロサンゼルスの山火事の影響でリビエラからサンディエゴのトーリーパイン ズに変更になりました。コースも含めたサンディエゴについて、「世界で一番好きな場所」「海を見るだけで落ち着く」と言っていたアバーグ。

ちなみに1カ月前に同コースで開催されたファーマーズインシュランスでは、2日目までトップタイながら、終わってみれば42位と失速。解説をしていて3日目に覇気のない表情が気になりましたが、どうやら3日目から嘔吐など食あたりのような症状に苦しめられ順位を落とし、翌週のペブルビーチは熱が出たり節々が痛くなる風邪のような症状で途中棄権、体重が5キロほど落ちてジェネシスを迎えての優勝です。

さて、アバーグのゴルフといえば、なんといってもショット力の高さでしょう。特にドライバーは、昨シーズンのトータルドライビングでランクは4位です。また、プレーの早さも有名で、ヘッドをポンと置いたら、サッと上げて打つ。中継ではよく「ロボット・マシンのようだ」と形容されます。

もちろんパッティングも早い。プレー中やインタビューへの雰囲気も態度もテンションが常に一定で、常にリラックスして落ち着いている感じです。成績の良し悪しを気にしていないのか、悲壮感がないんです。それが性格なのか、卓越したプロ根性なのかわかりませんが、たとえばミスをしてもキ ャディと笑顔で話すシーンが映し出されるのがアバーグです。

ジェネシスの最終ホールのティーショットも、緊張も不安、動揺も感じさせることなく、フェアウェイど真ん中にサッと打って、同伴競技者のトニー・フィナウの球を越え、セカンドはグリーンオーバーしたものの、2メートルのウィニングパットを決めての勝利です。

今年始まったインドアツアー「TGL」でも活躍、大観衆が騒ぐ雰囲気にのまれないのが強さでしょう。アバーグを見ていると、ショットの間はまったくゴルフのことを考えていない感じがします。ゴルフは打たない時間のほうが長く、そこで健全な時間をすごすことが、よいラウンドにつながるのだと思います。強いプロは信じる能力と忘れる能力が強いと僕は思っています。言い訳しても愚痴を言っても、何ひとつ良いことがないのがゴルフ……僕も含め見習いたい態度です。

さて、今回の優勝で、今年のメジャー制覇、ライダーカップにも弾みがついた感じがあるアバーグ。ますます楽しみですね!

アバーグの参考ポイント=始動からテークバックを早くし“考えすぎ”をなくす

画像: ヘッドを少し手前(自分側)に置いて、スッと球のほうにスライドさせたらすぐにバックスウィングを始める。始動からテークバックのリズム速いリズムとプレーを、練習で取り入れるといいという佐藤プロ

ヘッドを少し手前(自分側)に置いて、スッと球のほうにスライドさせたらすぐにバックスウィングを始める。始動からテークバックのリズム速いリズムとプレーを、練習で取り入れるといいという佐藤プロ

アバーグは始動のきっかけも早く、ヘッドを少し手前(自分側)に置いて、スッと球のほうにスライドさせたらすぐにバックスウィングが始まる感じ。ゴルフ歴が長い人はとかく考えがち。アバーグの始動からテークバックの速いリズムとプレーを、せめて練習だけでも取り入れたら、何か気づきがあると思いますよ。

※週刊ゴルフダイジェスト2025年4月8日号「うの目たかの目さとうの目」より

アバーグのスウィングをAIが分析

アバーグのフェアウェイウッド連続写真

アバーグのクラブセッティング

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