
2025年ザ・セントリー 3日目 (撮影/BlueSkyPhotos)
こんにちは。SPORTSBOX AI 日本アンバサダーの北野達郎です。今回はPGAツアーのシグネチャーイベント・RBCヘリテージで、約3年ぶりの復活優勝を挙げたジャスティン・トーマスのドライバースウィングをスポーツボックスAIのデータと共に解説させて頂きます。トーマスのスウィングの特徴は、
①アドレスはセンターに軸をセットして、インパクトにかけて右足側に軸を傾ける
②骨盤の上下の動きを使うので、縦方向の力が大きい
の2点です。また後半では上体が起き上がる一般アマチュアとトーマスを比較して、起き上がりを防ぐポイントについても解説しています。それでは早速チェックしてみましょう!
アドレスはセンターに軸をセットして、インパクトにかけて右足側に軸を傾ける
まずは左右の動き(ホリゾンタル)に注目しましょう。「SWAY GAP」は胸と骨盤の左右差の距離をそれぞれ表します(プラスは胸が骨盤より左、マイナスは胸が骨盤より右)。まずアドレスでの胸と骨盤の左右差はマイナス1.8cm(右)、トップではマイナス5.0 cm(右)とやや胸が右に骨盤より右に動き、インパクトではマイナス18.3cm(右)と、骨盤に比べて胸はかなり右足側へ傾いているのがわかります。

画像①胸と骨盤の左右差の比較/アドレスでは胸と骨盤の左右差は少ないが、トップからインパクトにかけて頭と胸は右足側へ傾いている
このアドレスからインパクトにかけて頭と胸が右に傾いて、胸と骨盤の左右差が大きくなると、クラブヘッドの最下点が右に移動するため、インパクトのアタックアングル(縦の入射角)はアッパーブローになります。ただしトーマスの場合はインパクトでの手の位置は左足寄りにあるので、通常だとインパクトはダウンブローになるのを頭と胸を右に傾けることで、ハンドファースト+アッパーブローのインパクトを作っています。このインパクトは飛距離が出るプレーヤーに共通する特徴の1つで、ロフトを立てたままアッパーブローにインパクトすることでスピン量を減らせるので、トーマスのようにヘッドスピードが速いプレーヤーの飛距離を伸ばす効果があります。
骨盤の上下の動きを使うので、縦方向の力が大きい
2つ目の特徴は、「骨盤の上下の動きが大きい」点です。「PELVIS LIFT」は、骨盤がアドレスの位置から上下にどれだけ移動したか?を表します。トーマスのトップ、切り返し、インパクトでの骨盤とデータを見ると、骨盤はトップでマイナス5.9cm(下)、切り返し直後(P4.5)でマイナス7.5cm(下)、インパクトでプラス2.3cm(上)と、トップから切り返しにかけて骨盤が最も低く下がり、インパクトにかけて骨盤が上昇しています。

画像②骨盤の高さの推移/トップから切り返し直後にかけて骨盤が最も低く下がり、インパクトにかけて上昇している
スポーツボックスAIでは、「PELVIS LIFT INTO IMP」というデータ項目があります。この項目では骨盤が最も低く下がった位置から、インパクトにかけてどれだけ上昇したか?をデータ化することで、バーチカルフォース(縦方向の力)の大きさを計る目安にすることができます。この切り返しからインパクトにかけての骨盤の上昇距離はトーマスでプラス9.8cm(計算式はマイナス7.5+【9.8】=プラス2.3cm)です。海外男子ツアーレンジは、プラス4.8cm〜プラス9.9cmですので、トーマスはツアープロの中でも骨盤の上昇距離が長く、縦方向の力を大きく使うタイプであることがわかります。トーマスといえば左足かかとが浮くほど左膝がピンと伸びたインパクトが特徴的ですが、この骨盤の上昇距離のデータはトーマスが地面反力を大きく使っている事を裏付けるデータと言えますね。
骨盤が上昇しても頭は下がり続けているから、前傾が起き上がらない
最後はアマチュアゴルファーとトーマスを3Dアバターで比較してみましょう。左の2枚の写真は一般アマチュア、右の2枚の写真はトーマスです。左のアマチュアはトップからインパクトにかけて骨盤と頭は上昇して、ともにプラスの数値になるのに対して、右のトーマスはトップからインパクトにかけて骨盤は上昇しても頭はマイナスの数値のまま下がり続けているのがわかります。

画像③3Dアバターでのデータ比較/左のアマチュアは骨盤と頭は上昇しているのに対して、トーマスは頭が下がり続けている
トップからインパクトにかけて骨盤とともに頭も上昇すると前傾が起き上がるので、トップやトウヒットのミスにつながりますが、トーマスのように骨盤は上昇しても頭は下がり続けられれば、前傾がキープできるのでインパクトも安定します。ポイントは骨盤を上というより後方(背中側)へ使うイメージを持つことです。トップから切り返しにかけて左膝をボール側の前に踏み込んでから後方の背中側へ伸ばすことで、骨盤が前に出ることなく縦方向の力を使えるようになります。
今回はジャスティン・トーマスのスウィングを解説させて頂きました。昨年のZOZOチャンピオンシップでも1打差の2位タイに入るなど、復調の兆しを見せていたトーマスが約3年ぶりの復活優勝をしたことで、来月の全米プロが非常に楽しみになりました。2017年に優勝した時と同じクエイルホロークラブで開催される全米プロでのトーマスのプレーに注目です!