
「前澤杯」開催までのいきさつを語った倉本昌弘JGTO副会長
昨年の日本ゴルフツアー選手権で石川遼と前澤友作氏がプロアマでラウンド。そこで石川が新たな大会をするにはどうすればいいかと前澤氏に相談したことから始まった。前澤氏はそれならと自宅に石川と倉本の2人を招いて新形式のトーナメントの話し合いが行われたという。
「(前澤さんは)はじめは全然乗り気じゃなかったんです。考えながら……、『でも経済を回すという意味で、不特定多数のファンの方からお金を集めるのは必要なんじゃないの。企業からお金を出してもらってやるのではなく、ファンの方からお金を出してもらうという形ならどうか』。ネットで、前澤さんはお金を出さないんだみたいなことを言われたけど違うんです」
3人の話し合いからスタートし、ファンから集めた賞金で大会を行うという新たなスキームが誕生した。12月に、前澤氏が自ら選手を集めて、大会の趣旨などを話したところプロたちも賛同し、新規大会が開催されることとなった。
お金を払ってプロと回る新しいプロアマの形式(1組100万円、購入した参加者は一緒にプレーするプロ選手をオークション入札方式で指名可能)に、アマチュアからの声は上々。倉本が3日間プロアマに出場したなかでも「初日は友人が(チケットを)買ってくれて、昨日はご家族、今日は千葉の方と回りました。昨日の方からは本当に楽しかったと今朝メールをいただきました」と、選手と回るプラチナチケットに感動したファンもいたという。
また「ソン・ヨンハン(韓国選手)と一緒に回られたご夫婦は関西から来られて、『私は10年来のファンでこうやって回れる機会をもらえるなんて思ってもみなかった。本当に良かったです』」と、お金には変えられない感動を得たという新たなファン層につながるのではないかとも話した。
ふつうの企業のプロアマだと回れることができない、新たなプロアマの大きなメリットだ。しかし改善点もある。
「(一緒に回った方から)話を聞くと、チケットの売り出しが始まってから初めて知った方もいました。プロモーションを早めにやる必要がある」
当初賞金総額を4億円に想定したが、プロアマチケットの売り上げが目標に達せず3億3000万円にとどまり、賞金総額は2億円(一部は運営費)に減額することになった。
「リリースの仕方が悪いんです。『最高4億円』じゃなくて、『2億円を補償します、集まれば4億になります、賞金は6億になります』となればすごいと思うでしょう」
それでも、「プロアマに参加していただいた方からクレームはまったくありませんし、一緒に回った方から来年もぜひ出ますと言っていただけました」と新方式による大会の成功を実感していた。
「前澤さんもまた来年もやる意欲はあると言っていただいているんで、みんなで改善点を出し合いながらよりよい大会にしていきたいです」
新形式の大会は男子ツアー人気回復につながる可能性がある。
「日本のゴルフ界のなかの新しいスキームを作ったのが前澤杯だと思っています。女子だろうとシニアだろうと、このスキームはないんです。新たに作ったという意味で大きなこと。60年前のスキームがいまでも続いていて、それを打ち破ったのですから」と、その波及効果にも期待した。
大会を主宰する前澤氏はもちろん、プロアマに賛同した選手、そして、多くのゴルフファンにより、さらに進化した「前澤杯」が来年も開催されるかもしれない。