
ながいのぶひろ・1969年生まれ、埼玉県出身。日本大学ゴルフ部を卒業後アメリカ修学して最新のスウィング理論を学び、帰国後、ティーチングを広める。2006年レッスン・オブ・ザ・イヤー受賞。「90歳を過ぎてもボールを打つときは目の色が変わる。とても真面目で誰にでも優しい素晴らしいプロでした」
【王道②】ボール&ゲームコントロール術
「向きと球筋の関係も教わりました。欧米の選手はドローヒッターであろうがフェードヒッターであろうが、コースに対しては同じ位置にティーアップしている。これをすごく説明してくれて。僕なりにアレンジし形にして、今もレッスンに使っています」

「陳さんにはグローバル目線と観察力がありました。僕は、海外選手が肩のラインに真っすぐ打ち出す姿を見ると、自分と勝負している感じがすごくするんです」
手書きの資料(画像A)を見ながら解説してもらおう。

画像A/「フックとスライスは技術的にはオフプレーン。プレーン自体を右に向けたうえで右に打ち出してボールを回してくるといった打ち方です」と永井。また、「ボックス」という言い方も使う。「ストレートヒッターは球がボックスの右端を動くし、ドローヒッターはボックスの中に入るし、フェードヒッターはもう1つ隣のボックスに行きます」
「まず、言葉の定義を再確認しましょう。ボールが左に曲がっていくショットに対して、ドローとフックという言葉があり、右に動いていくショットに対してフェードとスライスがあります。定義がしっかりできていなくて、狙ったところに行くとフェードで行かないとスライスと言ったりする方もいる。陳さんの考え方は、ショルダーライン(肩のライン)というものがあり、それとターゲットラインを平行にし、構えを作るというのが大前提で、ショルダーラインに対して平行に打ち出すというのが原則。これがオンプレーンという考え方です。
そして、オンプレーンでボールを動かす時に中に引っ張り込むからドロー(Draw)で、外にフェードアウトさせるからフェード(Fade)。ボールの動きを言っているんです。僕も世界のトップ選手を実際に見て感じた共通点は、肩と平行に打ち出してボールを動かしていること。D・デュバルもタイガーも松山英樹もです。それを、各ホールに対して当てはめていくのがボールコントロール術。狭い空間に対してもきちんと向きが取れるようになる。陳さんがマスターズに6回出場して全部予選通過できた理由の1つはそこにある。意外に対応ができていない日本人選手は多いと思います」

ターゲットラインとショルダーラインは平行に。打ちたい球筋で向きは変わる
ドロー、フェード、フック、スライス。言葉の定義を再確認
ボールをコントロールしながらコースを攻めていくというゲームコントロール。
「ドローヒッターの陳さんも当然フェードを打つ時はあります。でも、こういう話をしてくれました。何かの試合で“陳清波殺し”として、ドローヒッターが狙いにくいように全部のピンを右側に切ったそうです。でも陳さんは、『私には全然そんなことは関係なく、ただ向きだけ合わせればよかったから、その試合にも勝ったんだよ』と(笑)」
国内でもシードを取れる選手と取れない選手の差はその辺にあるのではないかと永井。
「例えば、メジャーに強い菊地絵理香選手は、確かに素直に球をコースに入れている。彼女と同じところにティーアップして同じ球筋で打ってラウンドすると、スウィングを変えるわけではなくても、必ず結果は変わりますよ」
また陳は、ゲームの流れもとても大事にしていたという。
「『ゲームが停滞する時がある。いい感じだけれどバーディが取れない。そういう時はわざと適当に、雑にプレーしてボギーを打てばいい。ボギーで流れが動くからまたバーディが来たりする』とおっしゃっていて。ある意味無茶でも狙って、それが好転すればバーディになるし、グリーンをシビアに外してボギーとしても、それでまた流れも変わると。自分の範疇で自分でゲームを動かす。それはもう超一流の証しですよね」

アドレスをした時、肩のラインがどこにあるかしっかり見極めることが重要。「肩のラインに対して立つようにする。アマチュアの方は、ターゲットラインに対して立とうとするから右を向きがちなんです」
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THANKS/新富ゴルフプラザ
PHOTO/Tsukasa Kobayashi、小誌写真部
※週刊ゴルフダイジェスト4月29日号「陳清波の教えに学ぶ技術の王道」より一部抜粋