これまで10年以上ジュニアゴルファーを取材してきたなかで、ゴルフを始めたころは純粋に楽しんでいたはずが、親からの圧力や暴力などさまざまな要因によって、ゴルフと縁を切り、さらには親子関係まで破綻してしまった家庭も目にしてきた。ゴルフと親と子の関係とはどうあるべきか、問題提起をしていく。
 
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――ここまでの闇。小3からゴルフを始め、香妻陣一朗や時松源蔵といった世代を代表する選手と同じ九州地区で競い合ってきた小浦和也プロ。その激戦区から全国大会にコマを進めるのは容易ではなく、最大のサポーターだった父親からの優しくも厳しい叱咤が日々行われていた。

画像: 小浦和也とその父・浩二さん。いまでは仲の良い親子だが、小浦がジュニア時代には聞き手であるヤマダが驚愕する出来事も

小浦和也とその父・浩二さん。いまでは仲の良い親子だが、小浦がジュニア時代には聞き手であるヤマダが驚愕する出来事も

ヤマダ: 時には強く怒られたり、物も飛んでくるような激しい“指導”もあったようですが、技術的な指導をかなりやっていたのですか。

父: ゴルフを始めた最初のころ、ちょこっとだけです。僕自身が教えられるような腕前じゃなかったし、技術はやっぱりプロの先生がいいと思って親子レッスン教室に入りました。

小浦: 週末、親父と遊びたかったんですが、仕事関係の人とラウンドに行っていていない。それでゴルフができれば一緒にいられると思ったんです。

父: 当時のコーチがよく褒めてくれるとてもいい方で、和也はすぐにゴルフが好きになってましたね。あきれるくらい打っていましたね。

小浦: どれくらい打てるか記録をつけていて、3時間で1000球打ったことがありました(笑)。記録更新、褒めて! みたいな感じだったんだと思います。

ヤマダ: 上達も早かったんじゃないでしょうか。

父: ある程度ボールが打てるようになってからは、町内会のコンペに出たりして。僕が仕事で行けない日に代わりに出て優勝してきたことがありましたね。あれは鼻が高かったです。

――ボールを打つことが楽しくて仕方なかった小浦少年。しかし上達をするにつれ、父親の指導が熱を帯びていった……。

父: 和也には3歳上の兄がいて、一緒にラウンドに行っていました。技術は教えないけれど、「上手くなるためにはどんなことをすべきか」みたいな考え方を2人には口酸っぱく言っていました。

小浦: ラウンドする前に親父に目標スコアを宣言するんです。今日は75で上がってくるわって。それで結果との差分×1キロを走らされていました。例えば85だったら10キロ。家の手前10キロ地点で車を降ろされて「早く帰ってこないと真っ暗になるぞ」みたいな。

ヤマダ: ラウンド後になかなかの距離ですね。目標をあえて低くするようなことはしなかったんですか?

父: そんなん言い出したら「なにセコイ目標なんか立てて」って許しませんでしたよ。そこは上手く手綱を締めたり緩めたり、子どもの様子を見ながら会話していました。

小浦: 親父が上手いことあおってくるんすよ。「オマエはそんなもんか!」みたいに。そうすると、なにクソ! って感じで高めの目標を言ったりする。兄弟そろってまんまと術中にハメられて。帰り道、兄貴と走りながら親父への恨み節を言いまくってました。

父: 一度、大雨の日に、和也を練習場に置いてきたことがあったな。理由はよく覚えてないけど、いいかげんな態度で練習してたんだろうな。それで怒って先に車で帰りました。

小浦: 外は真っ暗でさらに家まで20キロ以上。しかも大雨で電車が止まって動かない。親父は一度言ったことは撤回しないと分かってたので歩いて帰りました。最後には限界がきて、家まであと3キロくらいのコンビニの公衆電話から母に電話をして迎えに来てもらったんです。そのころには日付は変わっていました。

ヤマダ: 警察官に見つかったら保護されそうですね。

父: この話でいまだに残念だと思うのは、なんで残り3キロを歩けなかったんだということ。和也ならやりきると思ってたんですが。

小浦: あの暴風雨のなか頑張ったけど(笑)。

父: やっぱり目標は、ちょっと無理だろくらいの高さに設定するのがいいんですよ。達成すれば殻が破け、無理だと思っていたことが当たり前にできるようになると思っています。

――「褒めて伸ばす」や「小さな成功体験を重ねる」といった、いま風の教育法とは異なる力技で息子の成長をリードしていった父。ともすれば「ゴルフをやめる」と言い出しかねないやり方のように見えるが、小浦プロは一度もそう思ったことはないそうだ。これは単なる偶然か、それとも小浦親子だけが持つ不思議な絆のようなものなのか。次回、その理由をさらに深掘りしていく。

第3話「『やめちまえ!』って自信をもって言えますか?」は明日(2025年5月4日)19時に公開予定。

語り手/小浦和也
1993年生まれ。専修大学のときナショナルチーム入りし、2年連続で「日本オープン」のローアマになるなど輝かしい実績を挙げ2014年プロ転向。2023年に初シード権を獲得した

聞き手/ゴルフダイジェスト・ヤマダ
ジュニア担当として全国の選手と親御さんに取材を続ける。自身も8歳から競技ゴルフをしてきた元ジュニアゴルファーで1児の父。

※この記事は、週刊ゴルフダイジェストの「ありがとうの闇」を再構成したものです

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