前回のコラムでは4月10日に発売されたフジクラ「スピーダー NX FW」を検証していきましたが、今回は同時に発売されたのハイブリッド専用モデル「スピーダー NX HB 」を検証してみたいと思います。
シャフト外観デザインはスピーダー NXシリーズのアイコンのロゴを配置したデザインは「NX FW」と同様です。
手元側にブラック、先端部分までがグレーの配色も「NX FW」と同様で、オーソドックスなカラーは様々なヘッドとのマッチングしやすい印象です。
シャフトラインナップ
重量帯はHB55・HB65 ・HB75・HB85・H95の5種類で、それぞれ3フレックスずつラインナップされています。H55~85はR・ SR・ Sの3フレックス、最重量帯のHB95にはSR ・S・Xの3フレックス展開。多くのバリエーションを用意することで同時に発売した「NX FW」ユーザーはもちろん多くのゴルファーの要望に応えられるラインナップになっています。

「スピーダー NX HB」シリーズ
シャフト特性とフィーリング
「スピーダー NX HB」にも「NX FW」同様NXシリーズのアイコンテクノロジーである「VTC」が搭載されています。NXシリーズは「VTC」による手元部分、中間部分、先端部分のバリアブルトルクコアによってドライバーからHYBRIDまでトータルセッティングが可能になっています。HYBRIDクラブはFWよりも更に操作性が求められるクラブです。
さらにグリーンを直接狙うのに使用する場合が多くなりますので、グリーンでボールを止めるための弾道の高さとスピン量が求められます。振りやすさと弾道安定性の両立を求められる「スピーダー NX HB」は非常に設計の難しいシャフトです。この難しいシャフト設計に「VTC」テクノロジーが非常に有効になっていると思います。HYBRID用シャフトに求められる操作性と弾道安定性を高い次元でコントロールされています。

スピーダー NX HB と試打ヘッドのエポン「AF-957 H21」
今回も検証するにあたって全重量帯の全フレックスを打ってみましたので、重量帯を3つに分けて検証していきたいと思います。
HB55/HB65
50グラム台と60グラム台はHYBRIDシャフトとして軽量の重量帯になります。ターゲットはFWのシャフトが40グラム台から50グラム台の重量をお使いの方、アイアンシャフトは50グラム台から80グラム台の方に合わせやすいと思います。
Rフレックスはシャフト中間部分から先にかけて動きを感じられます。インパクト時にフェースがややクローズアングルになることでボールを右へ逃がさず、つかまりの良い高弾道ボールが打ちやすいフレックス。SRフレックスはシャフトの手元側にゆとりがあり、切り返しの際に元調子の雰囲気を持った振り心地です。中間部分から先端部分にかけての動きの挙動も穏やかでインパクトエリアまでのコントロールのしやすいフレックスで厚いインパクトでしっかりとボールをとらえてくれます。HB55 ・65共にNX HBのシャフト設計の意図が感じられるバランスの良いフレックスです。
Sフレックスは手元側がややしっかりとした剛性感があります。シャフト重量も軽くインパクトエリアでのシャフトスピード感はスピーダー NXらしさを感じられます。ボールは高さがしっかり出て、つかまりすぎることがありません。狙ったラインにボールを出しやすいフレックスだと思います。
HB75/HB85
70グラム台と80グラム台のHYBRIDシャフトは最も需要が多い重量帯です。FWのシャフトが50グラム台から60グラム台のシャフト重量をお使いの方、アイアンシャフトは80グラム台から110グラム台の方がターゲットになります。

吉田氏が作成した「スピーダー NX HB」の75Sのグラフ
Rフレックスは中間部分から先の動きがあることでインパクト時にフェースが右に開いて当たる感じがなく、シャフトがオートマチックにボールをとらえてくれるのでボールの「上がりやすさ」と「つかまりやすさ」をやさしく実現してくれます。
SRフレックスは剛性感のバランスが良いですね。手元側に粘り感もあるので、切り返しのタイミングがとりやすく、中調子シャフトながらも元調子系シャフトの雰囲気を感じられます。中間部分から先端部分にかけての動きは穏やかですが、シャフト先端部分の動きでしっかりとボールのつかまりと打ち出しの高さを出してくれます。インパクト時の安定感も良く、NX HBのシャフトパフォーマンスを体感できるバランスが良いフレックスです。
SフレックスはSRフレックスに比べ手元側の剛性感がアップします。ある程度切り返し時にシャフトにテンションをかけて打った際にも頼りない感じがなくレスポンスの良さを感じられます。手元側が硬めで先端部分もしっかりとしていますので振り心地はスピーダー NXらしいスピード感があります。先端部分は「VTC」によるトルクコントロールで引き締まった印象ですのでダウンブローでの強めのインパクト時でもシャフトに嫌なフィーリングを感じることはありません。ボールの高さも出ますし、左右ブレもありません。しっかり打ち込むのに良いフレックスだと思います。
HB95
90グラム台のHYBRIDシャフトはFWに60グラム台から80グラム台の重量のシャフトをお使いの方、アイアンシャフトが100グラム台から130グラム台のスチールシャフトユーザーがターゲットになります。
SRフレックスはHB95の最も軟らかいフレックスですが、シャフト振動数も283CPMありますし、重量があるので十分手応えがあり、しっかりと打ち込める先端剛性もあります。重量があるシャフトのほうがスウィングプレーンが安定するといった方には良いと思います。最近使う方が増えている30度以上ロフト角度のあるハイブリッドクラブに装着するのに良いかもしれません。
Sフレックスは手元剛性も強いので、しっかりと切り返しができる方でも頼りなさを感じることはないでしょう。一般的なパワーのゴルファーにはハードですが、パワーヒッタータイプのゴルファーのダウンブローインパクトにも耐えられる先端部分の剛性感があり、HYBRIDシャフトに求められる方向安定性も確保されています。ハードなシャフトながらもボールの上がりやすさとつかまりを実現しながらも安定感もある仕上がりは「VTC」テクノロジーによるところなのでしょう。
XフレックスはSフレックスがもの足りないフィジカル面で強い方に試して頂きたいと思います。パワーのある方には硬さの中にもNX HBのシャフト特性であるボールのつかまりを感じられると思います。
シャフト振動数※テストクラブ/EPON AF957 HYBRID H21/40.5インチ/スピーダーNX HB
55 | 65 | 75 | 85 | 95 | |
R | 235CPM | 246CPM | 254CPM | 265CPM | - |
SR | 245CPM | 255CPM | 264CPM | 274CPM | 283CPM |
S | 256CPM | 264CPM | 272CPM | 280CPM | 291CPM |
X | - | - | - | - | 299CPM |
シャフト重量の選び方
ハイブリッドクラブのシャフト重量を選ぶ際にフェアウェイウッドとの流れに合わせる場合は、お使いのFWシャフトが50グラム台の場合”HB55かHB65”。60グラム台のシャフトをお使いの場合はHB75かHB85が適正になります。

アイアンの流れに合わせる場合はお使いのアイアンのシャフト重量に対して軽い重量のものから選ぶのが良いでしょう。
50グラム台から70グラム台のアイアンシャフトの方はHB55。
70グラム台から80グラム台のアイアンシャフト方はHB65。
80グラム台から100グラム台のアイアンシャフトをお使いの方はHB75。
90グラム台から110グラム台の方はHB85を目安に選ぶと良いでしょう。
最近はハイブリッドクラブのロフトバリエーションも増えていますので、ロフトが多めのハイブリッドクラブに入れる場合は一つ重めの重量を装着しても良いと思います。
シャフトフレックスの選び方
フレックスの選び方はお使いのフェアウェイウッドやアイアンのシャフトのバリエーションも多いので、シャフトの特性によって一概にどのフレックスが最適か言いきれません。しかし、ややしっかりとした剛性感のある中調子のシャフトをお使いの方はSフレックスがフィーリング的に合う場合が多いと思います。手元調子系のシャフトをお使いの方はSRフレックスがイメージ的に合うはずです。フレックス選びの際はNX HBの基準フレックスであるSRフレックスから試して頂くのをおすすめします。
スピーダー NX HB総評
今回、「スピーダー NX HB」を打って各重量帯に、非常に良く考えられたフレックス展開がされていると感じました。
HB55からHB85まではR ・SR・ S、HB95にはSR・S・Xのフレックスが用意されていますが、それぞれのフレックスのターゲットが明確に設定されていると思います。単純に「ヘッドスピードが速いから硬めのフレックスを選ぶ」というのではなく、プレーヤーのスウィングタイミングで選べるフレックス展開になっています。

NX HB
個人的にSRフレックスとSフレックスを比較した場合、大きく違いを感じられました。SRフレックスには中元調子系の要素を感じられ、Sフレックスには中先系の要素も感じました。使用しているアイアンシャフトによって感じ方が変わるのでしょう。
ハイブリッドクラブはフェアウェイウッドとアイアンの中間に位置するクラブです。フェアウェイウッドにはカーボンシャフトを装着しているユーザーがほとんどですが、アイアンにはスチールシャフトを使用しているユーザーが大半です。
「スピーダー NX HB」を設計するにあたって「スピーダー NX FW」とのつながりはもちろん、多種類存在するスチールシャフトを使用しているゴルファーにも違和感なく使えるカーボンのハイブリッドシャフトをどのように設計するか非常に難しい部分が多かったと思います。「VTC(バリアブルトルクコア)」採用によるシャフト設計によってシャフト重量とフレックスごとにHYBRIDシャフトに求められる要素とフィーリングを巧みにコントロールすることでその問題をクリアしています。アイアンにカーボンシャフトを使っている方もスチールシャフトを使っている方も違和感なく使用できる非常に完成度の高いシャフトに仕上がっています。
大手シャフトメーカーの「フジクラコンポジット」のメインブランドである「スピーダー NX」のハイブリッドシャフトにふさわしいシャフトです。多彩なバリエーションは多くのゴルファーに応えられるラインナップですので是非試してみて頂きたいと思います。