「風」といえば3月を連想するが、実は低気圧が発達して暴風が発生するのがこの時季。せっかくのラウンドで「風が強いから今日はダメだ……」ではもったいない。そこで週刊ゴルフダイジェスト6月3日号では、ショットメーカーであり、日本のみならず海外の風も経験してきた佐藤信人プロから、強風でも崩れないショットの打ち方を教えてもらっている。「みんゴル」では2回に分けてご紹介。【2回中1回目】

解説/佐藤信人プロ
さとうのぶひと。1970年生まれ。千葉県出身。ツアー通算9勝を挙げるショットメーカーであり、日・米ツアーの解説業もこなす。大学時代をアメリカで過ごし、日本ツアー参戦後は欧州に渡るなど世界の風を知り尽くす
風をチェックする箇所には優先順位がある
佐藤 まずコースに着いたら雲の動きを見てください。その日の大まかな風向きを把握しておけば、ショット前に焦ることはありません。
GD 打つ直前にはどこをチェックしますか。
佐藤 芝を放り投げたり視界に入りやすい手前の木やピンフラッグで風をチェックする人がいますが、見てほしいのは弾道の頂点付近の木の動き。アイアンショットで風の影響を最も大きく受けるのが、その高いゾーンだからです。
GD トーナメントでは芝を放ったりフラッグを見ているシーンをよく見ますが、不要ですか。
佐藤 プロの場合、風力が弱く把握しにくかったり微妙な強さを知っておきたい時にやることはあります。彼らはそのわずかな違いに対応できるショット力がありますから。アマチュアの人の場合、そこまで神経質にならなくてもよいと思います。
風のチェックポイント

打つ弾道を必ずイメージする
チェックポイント①
弾道の頂点に近い高い木の先端を見る
風の影響を大きく受けるのが木よりも上のエリア。弾道の頂点付近の木の揺れを見ておけば、その前後数メートルの風向きを把握できるため最も重要。
チェックポイント②
目標近くの木の先端を見る
グリーン周りの木が高い場合、上空の風を把握するのにフラッグよりもヒントになる。グリーンの奥ではなく両サイドの木の先端の動きを見るのがポイント。
チェックポイント③
大まかな風向きは雲の流れで把握
よほどの荒天でない限り、1日の中で風向きが大きく変わることはまれ。ティーオフの前にその日の雲がどちらに流れているのか確認しておくとよい。
手前の風向きは見る必要なし!
手前の木が大きく揺れているとそこに目を向けがちになるが、ボールが打ち出された直後は風の影響を受けにくいためチェックの優先度は低い。
フラッグは見なくてOK
一般的な旗ざおは2メートル強しかなく上空の風は把握しにくい。ただし、グリーン周りに高い木がなかったり微風の状況ではフラッグの揺れがヒントになる。
木よりも高いところの風向きが大事
最も風の影響を受けるのは木の先端よりも上で、ボールが失速してくる弾道頂点から木の頂点まで箇所。木よりも下の高さはその木が風よけの役目を果たすため風の影響は少ない。

風の影響を受けやすいのは木よりも上
向かい風専用アドレス
GD 前後左右の風向きがありますが、どう対応したらいいでしょうか。
佐藤 最も厄介なのが影響を受けやすいアゲンストです。前述したように、できるだけ木の高さから出ない低い球を打つのが鉄則。
GD 通常のスウィングと変える点はどこでしょうか。
佐藤 スウィングは変えません。動きを変えると別のミスが出るので、アドレスを変えます。後述する4つのポイントを変えれば、低い球を打つ準備はOK。
GD フォローや左右の風はどう対応すればよいですか。
佐藤 左右の風は、このアドレスで弾道が低くなるため影響を受けにくくなります。気になるようなら構える方向を左右に振って調整しましょう。フォローの場合、そもそもアマチュアのミスの大半がショートなので通常通り振る、強風の場合は番手を1つ落とすが正解です。

低い球は打つ前が勝負です
番手選び
アゲンストの強さは強と中の2段階で考える
風が強いほど番手を上げるが、経験の少ないアマチュアの場合細かく調整するのは難しい。佐藤プロが推奨するのは2段階。ちょっと強いなと思ったら2番手、かなり強いと思ったら3番手上げるのを推奨。
専用アドレス4つのポイント
専用アドレス①
目線肩より下げる
ボールにセットした後で目線を左肩より下げることで自然と左肩が低い構えになり、ロフトが立って打ち出し角が低くなる。構えた後に風向きを確認すると目線が上がるのでNG。構えた後に風は読まないよう注意。

構えたら打つことに集中する
専用アドレス②
ボール位置ボール1つ分右足寄り
普段よりもボールつ分右足寄りにセットする。そうすることでロフトを立てて当てることができ、打ち出し角が低くなる。手元の位置は普段と同じ左股関節の前になるように意識しよう。

ボールの位置は右足より
専用アドレス③
スタンス左足を引いてオープン
ボールにセットしたら左足を靴半足分引いてオープンに構える。そうすることで、インパクト後の手元の通り道を作ることができ、フォローが高くなりにくい。右足の位置が決まってから左足を引くのがポイント。

オープンに構える
専用アドレス④
グリップ指1本分短く握る
普段よりも指1本分短く握ることでシャフトのしなりを抑えられ低打ち出し低スピンのボールが打ちやすくなる。また、番手を上げてロングアイアンを使った場合でもミスショットを減らすことができる。

短く握る
TEXT/SHOTANOW PHOTO/姉㟢正 THANKS/かねひで喜瀬カントリークラブ
※週刊ゴルフダイジェスト6月3日号「アゲンストに負けないアイアンショット」より一部抜粋