溝が減ったウェッジはスピンがかかりにくい。それは知っていても、自分のウェッジの状態がどうなのか判断がつかず、なんとなく使い続けている人は意外と多い。しかし、グローバルでボーケイウェッジを担当するアクシネットゴルフのコーリー・ジェラードさんは、「溝が摩耗したウェッジは、スピン性能のみならず、スウィングにも影響を及ぼす」と警鐘を鳴らす。ウェッジの溝について、その真実を聞いた。

「75ラウンド」がウェッジ交換の一つ指標

ウェッジでは特に重要な役割を果たすフェースの「溝」。溝の一番の目的は、溝の中に芝や砂、水分という余計なものを取り込むこと。そうすることで溝の端にボールが引っかかってスピンがかかる。当然溝が減ってくれば、異物を取り込む量が減り、十分なスピンを得ることは難しくなる。

「ウェッジで十分なスピンの効果を得るためには、75ラウンドでの交換が一つの目安と考えています」と言うのは、ボーケイウェッジのグローバル マーケティング ディレクターを務めるコーリー・ジェラードさん。

画像: COREY GERRARD(コーリー・ジェラード)。アクシネットゴルフで、ボーケイウェッジのグローバル マーティングディレクターを務める。PGAのライセンスを持つプロゴルファーでもある

COREY GERRARD(コーリー・ジェラード)。アクシネットゴルフで、ボーケイウェッジのグローバル マーティングディレクターを務める。PGAのライセンスを持つプロゴルファーでもある

「最新のSM10は、年々バージョンアップするスピンミルド(SM)の技術や独自の重心設計によって、高いスピン性能を有するだけでなく、それを安定してコントロールできるように進化しています。そして打点部分の強度を2倍にする特別な熱処理も施しています。しかし、それでも溝の摩耗は避けられません。
75ラウンドは一つの目安で、ウレタンカバーのコースボールではなく硬い練習ボールをウェッジ練習に使う、またバンカーも練習するといった方であれば、より摩耗のスピードは早まります。ちなみにツアープレーヤーの場合、使用頻度の高いロブウェッジは年4回、サンドウェッジは3回、ギャップウェッジは2回、ピッチングウェッジは1回という“4-3-2-1”が交換の目安。もちろんこれより多いプレーヤーもいます。ウェッジの溝は、常にフレッシュな状態を保っておきたいのです」

画像: ボーケイ SM10のグルーブ(溝)。ボーケイソー(VOKEY SAW)というカッターで精密に溝を刻み、溝のエッジ部分もルールに沿って正確に削っていく。溝と溝の間の細かなテクスチャーも同時に削り、スピン性能を上げる

ボーケイ SM10のグルーブ(溝)。ボーケイソー(VOKEY SAW)というカッターで精密に溝を刻み、溝のエッジ部分もルールに沿って正確に削っていく。溝と溝の間の細かなテクスチャーも同時に削り、スピン性能を上げる

画像: 摩耗したウェッジ。溝のエッジは丸まり、溝自体も浅くなっている

摩耗したウェッジ。溝のエッジは丸まり、溝自体も浅くなっている

昔は長年使い込んで、見た目にも溝がつぶれているウェッジを使っているプロもいたが、現代ではそういったプロはまずいない。

「中には新品のウェッジだとフルショットに近い領域でスピンがかかりすぎて、スピンマネジメント(スピンコントロール)がやりにくいというプレーヤーもいます。その場合は、自分の想定した“ウインドウ”(ボールが飛ぶ高さ)を通るまで馴らして実戦に投入するわけですが、いずれにせよ適正スピンの賞味期限はやってくる。スピンのかかりすぎを警戒するプレーヤーであっても、1本のウェッジを使い続ける期間が伸びるわけではないのです」

75ラウンドが一つの目安として、溝の摩耗が進んでくると具体的にどんな影響が出てくるのか。

「打ち出し角が高くなり、結果キャリーの距離が落ち、そして落下してからのランが増えます。加えてスピンマネジメントにバラつきも出るので、ターゲットに安定して寄せることは難しくなる。もちろん、溝の摩耗は一晩のうちに起きるわけではないのでその変化には気づきにくい。摩耗した溝でもまったく機能しなくなるかといえば、そんなことはありませんから。ただ、新品のものと打ち比べれば、その違いは腕前に関係なく誰でもわかるほど明確です」

弾道計測器での確認も効果的。目安は「ロフトの半分の打ち出し角」

溝が減ってきているかは、弾道で確認できるというジェラードさん。もっともわかりやすいのは、落ちてからのボールの転がり。明らかにランが増えているようであれば交換のタイミングと考えていいようだ。

画像: 打ち出し角の変化で溝の摩耗をチェック。基本はロフト角の半分の打ち出し角。60度なら30度、56度なら28度。それを超えるようなら交換のタイミングだ

打ち出し角の変化で溝の摩耗をチェック。基本はロフト角の半分の打ち出し角。60度なら30度、56度なら28度。それを超えるようなら交換のタイミングだ

「落ちてからのランで見るのが明快ですが、必ずしもコース上じゃないと判断できないわけではありません。最近はローンチモニター(弾道計測器)が普及していますから、インドアでも確認が可能です。見るべき項目は“打ち出し角”。自分に合ったソールグラインドのウェッジを使っていることが前提ですが、基本ルールとして、例えばロフト60度のウェッジであれば、打ち出し角がその半分、つまり30度であること。厳密にはさらにマイナス2度の28度です。30度を上回る打ち出し角であれば、溝の摩耗が進んでいるとみていいでしょう」

スピンがほどけるウェッジは、球を押さえ込みたくなる

もうひとつ、ジェラードさんがウェッジの摩耗に関して興味深い話をしてくれた。

画像: 「摩耗したウェッジを使っていると、打ち出しを低くしようとしてロフトを立ててインパクトしたくなる。これはバウンス効果を失うので危険です」(ジェラードさん)

「摩耗したウェッジを使っていると、打ち出しを低くしようとしてロフトを立ててインパクトしたくなる。これはバウンス効果を失うので危険です」(ジェラードさん)

「溝が摩耗したウェッジは、打ち出し角が上がって、キャリーも落ちるという話をしました。問題なのはこれを“自分のせいだ”と思ってしまうこと。想定する弾道よりも高く上がって飛ばない。するとプレーヤーはどうするかというと、ボールを右足のほうに寄せて、ロフトを立てて当てようとします。確かにボール初速は上がって、球も低くなるでしょう。でも1度ロフトを減らす(ロフトを立てる)たびに、バウンスも1度減ってくるわけです。バウンスのお助け効果が弱まり、地面に刺さりやすく、ダフリが頻発します。それが続けばアプローチショットそのものの調子を崩してしまう可能性も。その点でも溝が摩耗したウェッジを使うことは避けるべきなんです。
 
また別の機会にお話ししたいと思いますが、多くのプレーヤーにとってバウンスはゴルフをやさしくしてくれる大切な存在。これを自ら減らす方向に変化させてしまうのは本当に危険です」

溝の擦り減ったウェッジを使い続けることで、アプローチがおかしくなるなんて恐ろしい。さっそくウェッジの溝をチェックしなければ。
3本あるいは4本、一気に交換するのは大変だ……。

画像: バンカーで主に使うといった使用頻度の高いウェッジの溝は常にチェックしておこう

バンカーで主に使うといった使用頻度の高いウェッジの溝は常にチェックしておこう

「私たちがウェッジの溝の状態を確認してほしい時には、“一番使用頻度の高いウェッジを見てください”と言います。もちろん4本いっぺんにボーケイウェッジに替えてもらえるのが我々は嬉しいですが(笑)。まずはよく使う1本。それが常にメンテナンスされていて、しっかりとスピンがかかる状態にしておくこと。それで、ゲームが変わり、スコアも良くなります」

ウェッジは“スコアリング・ツール”だというジェラードさん。まずは一番よく使うウェッジの溝を常にフレッシュな状態にしておくことが、腕前に関係なくスコアアップの大事な基本と言えそうだ。

PHOTO/Hiroaki Arihara

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