
はせがわまどか 2002年生まれ。中学まで秋田で育ち、高校でゴルフ部に入部するため新潟の開志国際高校へ進学。高校3年でドラコン競技に目覚めドラコンプロの資格を取得。その後、神奈川大学へ進学して本格的にドラコン競技に参戦し、大学1年生のときに国内女子の日本記録となる『380ヤード』をマーク。世界一のドラコン女王を目指し奮闘する女子大生
アナログとデジタルを融合するZ世代
「私で大丈夫ですか〜?(笑)」
屈託のない笑顔で発したひと言目がこの言葉だった。確かに飛距離を競うドラコン大会の世界では知られた存在だが、競技ゴルファーとしては無名といっても過言ではない。そんな彼女が“ゴルフ”とどう出合い、どんな道のりを歩んできたのか聞いた。
「ゴルフを始めたのは10歳くらいからです。それまでもやりたいと思ったスポーツはもちろん、日舞やダンスまでほぼやらせてもらうことができました。両親に感謝です(笑)。中学に入ってゴルフの競技に少しずつ出るようになって、父からは『楽しいこと・自分の心が動かされるもの』という基準で選びなさいと言われ、高校進学と同時にゴルフに絞りました」

長谷川円香
ゴルフが好きでゴルフ部のある学校ということで新潟の高校へ入学したが、高2で競技ゴルフから離れてしまう。
「部活の人間関係ですね(笑)。つらくてゴルフ自体から離れようと思っていた高2の夏頃、SNSでたまたまドラコンって競技があることを知りました。今後のことも含め両親と相談して、試しにドラコン大会へ出場したら252ヤード飛ばしてアマチュアの部で優勝しちゃったんです(笑)。そこからドラコンにもプロ制度があることを知って高3でドラコンプロの資格を取得しました。父からは『やるからには日本一を目指せ』と言われ、本格的にドラコン競技に参戦することになりました」

「秋田の恵みがあったから日本で一番飛ぶ選手になれたと思っています」
勉強が好きだという長谷川は、卒業後は神奈川大学に進学し、そこでドラコン競技にひとりで取り組むことになる。
「大学1年でいきなり日本女子新記録の380ヤード飛ばしちゃったんです(笑)。ドラコンもゴルフと同じで競技者すべて同条件というわけではありません。たまたま私のとき風が吹いて好条件が重なって生まれたんですけど、記録は記録ですから。何が起こるかわからないですよね(笑)」
でも、なぜそんなに飛距離が出るようになったのか。
「もちろん練習もトレーニングもしています。でも小さいときから家のお手伝いで畑仕事をしていたのは、絶対に影響していると思います。ウェイトを持ち上げるより枝豆の茎を抜くほうがパワーいるし、足元も土だから自然とバランス感覚も付いたんじゃないですかね(笑)」
【飛ばしの秘訣①】
ひじを柔らかく使いヘッドを走らせる
にしても、ドラコン競技に参戦するくらいだから元から飛距離が出たと思うが、そうではないと長谷川は言う。
「高校ゴルフ部のときは、少しだけ飛ぶ部類だったかもしれませんが、みんなが驚くような飛びはまったくありませんでした。ドラコンをやるようになって飛ぶようになったんです」

フォローで腕を伸ばしている意識はない。ひじを柔らかく使うことで、遠心力が働きヘッドが走るので、このように腕が引っ張られて両ひじが伸びる形に自然となる
では、いったい何を変えて飛ぶようになったのか。
「大きく技術面と精神面、肉体面の3つがあると思うのですが、技術面から言うとまず“ヘッドを走らせる”ことでした。そのために大切なのが、脱力してひじを柔らかく使うこと。ひじの使い方が秋田で小学生のときお祭りで和太鼓やったときの感覚に似てたんですよね、飛ばしって。バチで太鼓を叩くときのひじの使い方とドライバーのヘッドを走らせる動きが(笑)」
一種の原体験が長谷川の飛距離UPの礎になっていたのだ。
ポイント
両足を閉じて打つことでヘッドが走る動きを覚える
ヘッドを走らせる感覚をつかむ練習として、両足を閉じて打つという長谷川。
「親世代のゴルファーの方はよくやった練習だそうですが、この両足閉じ打ちはヘッドを走らせるには最高の練習だと私は思っています」

ヘッドの動きを邪魔しない
ポイント
太鼓を叩くイメージ
腕やひじ、手首の使い方は、太鼓を叩くときのイメージだと言う長谷川。
「小学生のときお祭りで和太鼓をやっていたことがありました。ゴルフにもその柔らかい腕やひじの動きは通ずる点があると思います」

和太鼓の腕づかいが生きている
飛ばしの秘訣②につづく
PHOTO/Takanori Miki、Tsukasa Kobayashi
THANKS/南秋田カントリークラブ、秋田グリーンヒルゴルフ、秋田ノーザンハピネッツ
※週刊ゴルフダイジェスト5月6日号「長谷川円を知ってるか?」より一部抜粋