ツアー解説でおなじみの佐藤信人プロ。今回は、チャールズ・シュワブチャレンジで優勝したベン・グリフィンについて語ってもらった。
画像: 「オールラウンダーで、どのスタッツも平均より上と安定しています。そのへんはルーキーイヤーから今に至るまでの成績につながっているのでしょう」(佐藤プロ)

「オールラウンダーで、どのスタッツも平均より上と安定しています。そのへんはルーキーイヤーから今に至るまでの成績につながっているのでしょう」(佐藤プロ)

先日のチャールズ・シュワブチャレンジで優勝したベン・グリフィン。PGAツアー唯一のダブルス競技、チューリッヒクラシックをアンドリュー・ノバクとのコンビでの初優勝に続き“個人戦”で2勝目を飾りました。

一度はプロの世界を諦め、サラリーマン生活を経て復活したという異例の経歴の持ち主です。ノースカロライナ生まれ、大学も地元のノースカロライナ大出身の29歳。大学時代に3勝し、オールアメリカンにも2度選ばれたPGAツアーにはよくいる“いい選手”ですが、決して順風満帆なプロ人生を歩んできたわけではありません。

プロ転向は18年。いきなりカナディアンツアーで優勝するも、ファイナルQTで100位タイと振るわず19年はコーンフェリーとカナダを掛け持ちで戦います。しかしその年のQTはセカンドでまさかの敗退、戦う場を失ってしまいました。

時期を同じくしてコロナ禍に襲われ、親に金銭的な援助を受けることは嫌とサラリーマンの道を選ぶのです。父は不動産業を営み、母は住宅ローンの融資担当者。そこでグリフィンは母と同じ資格を取得し、母と同じ会社で働きます。サラリーマンになってあるとき、知人の誘いでプロアマに出場し63でラウンド。そこはコーンフェリーツアーの開催コースで、その知人の勧めで経費負担を受けマンデートーナメントに出ることを決めます。

その数日前に自分のゴルフを応援してくれた祖父が亡くなり、また、朝、家を出たらオフィスに行くはずが何気なくゴルフ場に行ってしまう出来事が。心の中では自分はゴルフをしたがっているというサインとも感じたようです。この試合の水曜日が祖父の葬式。

しかし両親にも促され、水曜日には戻るつもりでマンデーに出ると65で突破。本選はあえなく予選落ちしますが、マンデーに誘ってくれた知人が周囲にも声をかけてくれ、ロード・アベット社CEOのダグ・ジーグが向こう2年間の経費をすべて面倒見ると名乗りを上げ、またゴルフの道に戻りました。グリフィンのウェアの胸には今も、「ロード・アベット」のロゴが輝いています。

さて心機一転、21年にQTを28位で突破すると、翌年は優勝こそなかったもののコーンフェリーで2位が3回、ランク8位でPGAツアーに昇格を果たします。ルーキーイヤーとなった22-23年はランク63位でシード獲得、23-24年は57位でシードを守ります。

そして一度はゴルフ界を離れて戻った“脱サラプロ”は25年、花開きました。PGAツアーにおけるグリフィンの立ち位置は、エリック・コールらと並び、試合を休まない選手の代表格。今年は出場できる18試合にすべて出場。チューリッヒの優勝で全米プロにも出場し8位タイに入り、チャールズ・シュワブで優勝しました。もしかしたらスケジュール組みに変化が表れるかもしれません。

もうひとつ彼の特徴が、Xでのゴルフ通にはたまらないエッジの効いたつぶやきです。たとえば3月のバルスパーで優勝したのがビクトール・ホブラン。前にこの連載で紹介しましたが、調子が悪いと試合に出ても仕方がない、というタイプ。調子が上がらず火曜日まで出場するかどうか悩んでいました。

また翌週のヒューストンでは「マネジャーがサインしてしまったので仕方なく出場」したミンウー・リーが優勝。ある記者が優勝予想は今週、出るかどうかを悩んでいる選手を探すことといった記事を配信しました。するとそれに対し翌週のテキサスオープンについて「今、出るかどうか悩んでいる」とつぶやいたのが、皆勤賞男のグリフィンでした。

ベン・グリフィンはX

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「I’m not really sure if I’m going to play this week.(今、出るかどうか悩んでいる)」とつぶやいた。

成績がよければマスターズの出場権が得られるテキサスオープン。2月にはメキシコ、コグニザントクラシックで2週連続4位タイとなり、世界ランクも自身最高の48位になったグリフィンですが、徐々に後退、マイケル・キムとの激しい50位争いを演じます。結局51位に終わったグリフィンは初のマスターズ出場を1打差で逃しました。翌日、32回目のマスターズ出場をビジェイ・シンが断念したというニュースが流れると、「オレは準備できているんだけどね」とつぶやくのでした。

ベン・グリフィンのX

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「I’m ready.(オレは準備できているんだけどね)」と一言。

マスターズの翌週はシグネチャーイベントのRBCヘリテージ。マスターズで敗れたローズの戦いぶりに感動、素晴らしいと称えた後、「疲れたろうから1週間休んでいいよ」とつぶやくグリフィンは、この試合でウェイティング1番でした。

現時点での世界ランクは15位(6月10日現在)とジャンプアップ。プレーオフシリーズへの進出や来年のマスターズ出場など、新たなステージに立つグリフィンの今後が楽しみです。

◆参考ポイント=あごの動きに注目! 切り返しで浮かせて、力みをなくす 

画像: ベン・グリフィンの切り返しのあごの動きに注目

ベン・グリフィンの切り返しのあごの動きに注目

バックスウィングで引いたあごがトップからダウンでやや浮き上がり、首の角度が変わります。少し顔を起こすといったほうが適当でしょうか。プロでもスウィングの天敵は力み。力むとグリフィンとは反対にあごを引く動きが出て沈み込む動きとなり、多くのミスの原因にもなる。ボクも練習しましたが、彼のあごの動きを試してみましょう。

動きの小さなアプローチで、特にザックリの多い人には効果的な打ち方です。

PHOTO/Getty Images, Tadashi Anezaki

※週刊ゴルフダイジェスト2025年6月17日号「さとうの目」より

ベン・グリフィンがツアーの経費を告白

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