ゴルフボールは全打数に関わる唯一のギア。だからプロは使用するギアの中でも、最も慎重に決めるのだという。今回取り上げたスリクソンZスターシリーズが世に出たのは2009年。歴代のトップ選手たちはどのような視点でこのボールを選び、実績を挙げてきたのか。そして、このボールはどんな進化を遂げてきたのか、振り返った。

プロが「使って勝てる」と評価する理由

Zスターツアー通算883勝。

※各選手の使用ボールは当時のもの 
※6月6日時点の編集部調べ。通算勝利数は国内外の男子・女子・シニアのツアー勝利合計

画像: 2023年─全米プロ優勝ブルックス・ケプカ(Z-STAR ダイヤモンド)

2023年─全米プロ優勝ブルックス・ケプカ(Z-STAR ダイヤモンド)

ブルックス・ケプカが、「ヒデキのショットは風に強い、なぜ?」とZスターシリーズを使うきっかけになった話がある。これについて神野さん(前述)は、「PGAツアーに帯同する宮野(敏一さん)から聞いた内容ですが……」と前置きの後、「ケプカ選手がトラックマンを使って他のツアーボールと比較すると、スピン量・ボール初速・打ち出し角は同じなのに、『こんなに違うのは? ディンプルしか考えられない』と尋ねたと……」その後ケプカはダイヤを選び、2023年の全米プロを制覇した。

画像: 2019年─全英オープン優勝 シェーン・ローリー(Z-STAR XV)

2019年─全英オープン優勝 シェーン・ローリー(Z-STAR XV)

XVを初代から使うシェーン・ローリーは、2019年の全英オープン優勝後、「このボールは風に強い、それが有利だった」と話した。338個のディンプルパターンは3モデルとも基本的に同じ。「目指すディンプルは空気抵抗が小さく、風に強く、飛ぶことです。そのカギは2 つ。占有率(ディンプルが占める割合)と統一度(大きさが近いディンプルの配列)ですが、これは二律背反の命題。その最適バランスが現在の配列で、ディンプルの深さなどモデルごとに微調整していますが、5代目から根本は変えていません」(神野さん・以下同)

2009年から発売されたZスターシリーズのツアー初勝利は、その前年、11月の小田孔明によるカシオワールド優勝だった。小田はその後もZスターでプレーし、2014年の賞金王に輝いた。Zスター登場年の2009年は、石川遼と横峯さくらが賞金王と賞金女王のダブル栄冠。2013年には松山英樹と森田理香子が賞金王&女王。4名ともXVを使っていた。

画像: 2009年─賞金王 石川 遼(Z-STAR XV) 2009年時の石川遼はボールがスリクソン、クラブがヨネックス契約だった。多くのツアーボールを試打した結果、最も飛んだのがこのボール、と初代XVを選んで4勝を挙げて最年少賞金王になった

2009年─賞金王 石川 遼(Z-STAR XV)
2009年時の石川遼はボールがスリクソン、クラブがヨネックス契約だった。多くのツアーボールを試打した結果、最も飛んだのがこのボール、と初代XVを選んで4勝を挙げて最年少賞金王になった

2015年から16年はZスターを使うイ・ボミが2年連続賞金女王。「ボミ選手はボール選びにとてもこだわりがありました。打感の軟らかさに加えてアプローチの打ち出しが自分のイメージする高さを通るかどうかを基準にしていました。そして選んだのがZスターでした」

画像: 2015年・2016年─賞金女王イ・ボミ(Z-STAR) 2015年はメルセデスランク、獲得賞金、平均ストローク、パーオン率、平均パット数、パーセーブ率、バーディ数が1位の7冠。2016年は6部門が1 位で、2 年連続賞金女王

2015年・2016年─賞金女王イ・ボミ(Z-STAR)
2015年はメルセデスランク、獲得賞金、平均ストローク、パーオン率、平均パット数、パーセーブ率、バーディ数が1位の7冠。2016年は6部門が1 位で、2 年連続賞金女王

2022〜23年の賞金女王、山下美夢有はXV。「山下プロの場合は、XVの基本性能そのものが好みでした。しっかりした打感があって、ドライバーが飛び、ショートゲームで自分のイメージ通りにスピンがかかるという点です。だから、XVのニューモデルが出ると同時にスイッチしています」

直近では昨年、竹田麗央がZスターで賞金女王に輝いた。5 月の全米女子オープンでは竹田麗央が2位タイ。Zスター通算884勝目とはならなかった

画像: 2024年─賞金女王 竹田麗央(Z-STAR) 米国LPGAとJLPGAを兼ねるTOTOジャパンクラシックで優勝。2024年は初優勝から8勝を挙げて賞金女王&メルセデスランキングクイーンになった

2024年─賞金女王 竹田麗央(Z-STAR)
米国LPGAとJLPGAを兼ねるTOTOジャパンクラシックで優勝。2024年は初優勝から8勝を挙げて賞金女王&メルセデスランキングクイーンになった

海外メジャーでは、前述のケプカとローリー以外に、2011年の全米プロでキーガン・ブラッドリーがZスターで優勝。ブラッドリーはその後に出たダイヤへ「アイアンでのスピン量が合う」とスイッチ。女子ではパク・インビがメジャー7勝のうち6勝をZスターで達成。2019年の全米女子プロで優勝したハナ・グリーンもZスター。

そして、松山英樹が2021年のマスターズで悲願のメジャー優勝をXVで成し遂げた。「最初に使ったのは初代ZスターXで、現在のダイヤに似た性能のボールでした。XVは3代目からで、現行9代目までの期間、PGAツアーの勝利はすべてXVで達成しました」

画像: 2021年─マスターズ優勝 松山英樹(Z-STAR XV)

2021年─マスターズ優勝 松山英樹(Z-STAR XV)

Zスターの通算勝利数は、岩井千怜の米国LPGA初優勝(リビエラマヤOP)で883勝(6月6日時点)。

※Zスターは本稿の〆切の後も優勝を重ねている。PGAツアーのRBCカナディアンOP(6/5~6/8)でライアン・フォックスがZスター XVで優勝。そして、今年3戦目のメジャー、全米OPではJ・J・スパーンがZスター ダイヤモンドで勝っている。

画像: J・J・スパーン、全米オープンの最終ホール。約20メートルのロングパットを入れてバーディ、優勝を決めたシーン

J・J・スパーン、全米オープンの最終ホール。約20メートルのロングパットを入れてバーディ、優勝を決めたシーン

PHOTO/姉﨑正、岩本芳弘、岡沢裕行、三木崇徳

J・J・スパーンのメジャー優勝に貢献

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