
兼濱開人プロ
かねはまかいと。90年生まれ、沖縄県出身。プロコーチ・森守洋氏の一番弟子で、プロからアマチュア、ジュニアまで幅広い層を指導する。「学芸大ゴルフスタジオ」ヘッドコーチ
Who’s Short Game Chef?
ショートゲーム専門コーチのパーカー・マクラクリンを知っているか?
パーカーマクラクリン氏はPGAツアーで1勝の実績を持ち、ショートゲームのうまさから現役時代にコーチ業をスタート。SNSでは「ショートゲームシェフ」として活動中※本人のインスタグラムより
まずはベーシックから覚えよう
〇第一の構え 「スタンダード」
スタンスは肩幅より狭く、ボールはスタンスの中央。ボールの真上に重心がくるように立つ。ライ角通りにクラブを置き、そのときのグリップ位置に手元がくるようにボールとの距離を調節する

「スタンダード」な構え
セミナーでパーカー(・マクラクリン)さんが繰り返し言っていたのが、スタンダードな「ベーシックピッチ」の大切さでした。いいアプローチの条件は、インパクトでヘッドが加速していることと、それにもかかわらずボールがゆっくり飛び出すことです。そのための要素が「ベーシックピッチ」には詰まっています。
まずアドレスではなるべくセンターにボールを置き、その真上に重心を持ってくる感覚で立ちます。これは持っているクラブの最大ロフトでインパクトするための準備です。フェースを開いたり、ボールを少し左足寄りに置くと、さらに出球を遅くすることができます。テークバックは手首をほぼ固めたまま体の回転で行い、フォローまでずっと体の回転で打っていきます。
重心はずっとアドレスの位置のまま、完全な振り子の動きで、シャフトを垂直にして当ててください。左に強く踏み込んだり、ハンドファーストにすると出球が強くなりすぎてしまいます。
30ヤード以内は全部コレでOK「ベーシックピッチ」

アドレス スタンスは狭くボールは真ん中
スタンスは左右の足をぴったりくっつけるか、わずかに間を空ける程度で十分。ボールを真ん中に置いて、なるべくシャフトを傾けないで構えることでロフトを最大限に使いやすくする。

左右の足に均等に体重をかけ、ボールの真上に重心がくるように構える
テークバック コックは使わず重心は真ん中のまま
サンドウェッジ(58度~60度)を使った場合、ノーコックスウィングで対応できる最長距離の目安が30ヤード。腕と体を一体にし、基本的に体の回転だけで打っていく。左右の体重移動も最小限に。

最下点が左に移動すると入射角が鋭角になり、ボール初速が上がってしまう
インパクト 振り子の最下点でヒット
ボールをクリーンに打つのではなく、まずソールが接地してその後でフェースにボールが乗るのが理想。インパクトのシャフトの角度は「垂直」。インパクトポイントと最下点がほぼ一致する。

ロフトを立てると初速が上がってしまうので、シャフトは傾けずに当てる
フォロースルー 胸を目標方向に回し切る
インパクトは「加速」しなくてはいけないが、手を速く振るのではなく、体の回転を大きく、鋭くしてスピードを上げる。フォローの早い段階で「へそ」を目標方向に向けるイメージで回す。

手だけを返したり、手と体がバラバラになると初速が安定しなくなる
初速を落とせば寄る確率は上がる
〇第二の構え 「ハンドアップ」
第1の構えよりもボールに近づき、手元を上げて構える。フェースは必ず開く(第1の構えはスクエア~オープンを状況に応じて選択)。パターの構えと似たイメージ。クロスハンドでも可。

ハンドアップ
「ベーシックピッチ」より、さらに初速を落としたい状況、たとえばカップまでの距離が近くて、しかも下りといったときには、まずフェースを開き、さらにボールに近づいてハンドアップにして構えます。そこからベーシックピッチと同様、手首は使わずに体の回転で打っていきます。
アドレスがパターに近いので、「ヒット」ではなく「ストローク」だと脳を“だます”効果があり、それも初速を落とす要素になります。パーカーさんは、グリーンエッジから5番アイアン、少し離れて7番アイアン、また少し離れて9番アイアンというふうに、番手を落としながら同じターゲットを狙うドリルがおすすめだと言っていました。
このドリルではグリーンに近いほど強く打ち過ぎるミスが出やすいですが、「ハンドアップ+フェースオープン」でパターみたいに打つと飛び過ぎません。アマチュアがアプローチで「カツーン」と強く打ち過ぎてしまうのは、普通のアイアンショットみたいに「しっかり当てよう」という意識があるからです。
この打ち方は打感が頼りないので、最初は不安ですが、そのうち「飛び過ぎない安心感」から、逆にしっかりヘッドを振れるようになり、ザックリも減るはずです。
初速の速さで出球も変わる
初速を上げる要素
●手首のコック
●左への重心移動
●ハンドファーストインパクトなど
初速を落とす要素
●ノーコック
●センター重心
●シャフトを垂直にしてヒットなど

ミート率をいかに「下げるか」を追求する
「初速が速い」
コンタクト重視のスティープスウィング
ボールを右足寄りに置き、積極的に左に踏み込んで入射角をスティープ(鋭角)にする打ち方。スピンロフト(インパクトロフトと入射角の差)が増大してスピンが増えるが、初速は速くなる。

初速が速い
ボール初速 | キャリー | ミート率 | 入射角 |
---|---|---|---|
約9.5m/s | 約7.5Y | 1.0以上 | 約7度ダウン |
「初速が遅い」
初速を出さないシャロースウィング
バウンス(ソール)を滑らせ、フェースの上に柔らかくボールを乗せて運ぶような打ち方。しっかり振ってもボールはゆっくり飛び出す(ミート率が低い)ので、カップが近くても安心。

初速が遅い
ボール初速 | キャリー | ミート率 | 入射角 |
---|---|---|---|
約7.5m/s | 約6.5Y | 0.9未満 | 約2度ダウン |
スティープvsシャロー正解はどっち?
ビクトール・ホブランのコーチ、ジョー・マヨ氏は「スティープ派」の代表格。対してマクラクリン氏は「シャロー派」。アメリカでは一種の論争状態が続いているが、決着はついていない。

打ち比べ
TEXT/Daisei Sugawara
PHOTO/Yasuo Masuda、Hiroaki Arihara
THANKS/上総モナークCC、学芸大ゴルフスタジオ
※週刊ゴルフダイジェスト7月8日号「寄せるアプローチ」より一部抜粋