昨年11月、有名ショートゲームコーチのパーカー・マクラクリン氏が初来日し、日本のコーチ向けセミナーを開催した。週刊ゴルフダイジェスト7月8日号では、セミナーに参加した兼濱開人プロが世界最先端とも言えるアプローチ技術をやさしく解説する。「みんゴル」では2回に分けてご紹介。【2回中2回目】
▶失敗要素を極限までそぎ落としたアプローチ法

兼濱開人プロ
かねはまかいと。90年生まれ、沖縄県出身。プロコーチ・森守洋氏の一番弟子で、プロからアマチュア、ジュニアまで幅広い層を指導する。「学芸大ゴルフスタジオ」ヘッドコーチ
ライが悪いとき限定テク
第3の構え 「ハンドダウン」
フェースを開き、第1の構えよりボールから離れ、手元を下げて構える。フェースは開くと右に向くが、手元を下げるとスクエア方向に戻る(つま先上がりでフェースが左を向くのと同じ原理)

ハンドダウン
これまでの2つの構え(と打ち方)は、手首を使わずに体の回転で打つので、必然的に入射角がシャロー(緩やか)になります。しかしそれだと、ライによっては対応しきれない状況が、実際のラウンドでは出てきます。たとえば、深いラフにボールが沈んでいるようなとき。
この場合は、これまでとは正反対に、テークバックで手首をしっかりコックし、左への体重移動も使ってなるべくスティープ(鋭角)にヘッドを入れていく必要があります。アドレスでは十分にフェースを開きますが、そのままだとボールが右に出てしまうので、ボールから離れて手元を下げ(ハンドダウン)、フェースの向き自体はスクエアでロフトだけが増えた状態を作ります。ラフからボールを出すにはヘッドスピードが必要なので、最初に「飛ばない構え」を作っておくことはとても重要です(安心して速く振れる)。
インパクトはソール全面ではなく、ヒール側のバウンスから入れる(エンゲージする)イメージを持ってください。ボールに当たってもすぐにヘッドを抜こうとするのではなく、ソールをずっと地面に押し当てるように手元を下げ続けることで、フワッとしたボールで安全に寄せることができます。
「飛ばない構え」を 作ってサッと振り抜く

深いラフからは速く振らないと脱出できないが、単に速く振ると飛びすぎてしまう。ゆえに構えに工夫が必要となる
ポイント フェースを開いてヒール側から入れる
フェースを開いてロフトを寝かせることでキャリー飛距離を落とす。また、ヒール側のソールから接地させると、芝の抵抗を軽減でき、フォローの抜けがよくなる

ヒール側から入れる
アプローチ名人への道「必修ドリル集」
右肩支点で片手打ち
右肩を支点に、腕とシャフトが「一直線」のイメージをずっと保って振る。手首を使って「タメ」を作るのはNG。振り子のような軌道でシャローに当てる感覚がわかる

右肩が支点
左つま先のボールを「踏まずに」打つ
左足つま先の下にボールを置き、テークバック~フォローでそれを「踏まないで」打つ。左に踏み込まず、重心をセンターに保ったままスウィングする感覚がつかめる

左明日つま先のボールは踏まない
右足かかとを上げて打つ
ダウンスウィングで上体を右に倒してしまうクセがある人は、右足かかと下にボールを置くドリルでクセを軽減できる。上体を真っすぐに保つことで最下点が安定する

かかとにボールを踏む
ライにボールを合わせて微調整
低く転がしたいときはボールを右足寄りに、高く上げたいときは左足寄りに置くのがセオリーですが、それだけでなく、ボールを右足寄りにした場合は、最下点より手前でヒットできるので、たとえば、密集したラフにボールが浮いているような状況に最適です。
ティーアップしているのと同じなので、通常のボール位置だと下をくぐりやすいですが、右足寄りに置くとそれを防げるということです。また左足上がりでは、最下点付近にボールがあると当たってすぐにヘッドが斜面に刺さりやすいですが、左足寄りに置くことで抜けをよくすることができます。
ボールを右に置くケース「たとえばラフに浮いたボール」
ヘッドがボールの下をくぐってしまう「だるま落とし」に警戒が必要。回避するには、最下点の手前でインパクトを迎えられる右右足つま先に 足寄りのボール位置がいい。

右足つま先にボールをセット
最下点手前で打つとボールの下をくぐりにくい
ボールが右足寄りになるだけで入射角は勝手にスティープになるので、自分で上から打つ必要はない。最下点の位置にある仮想ボールを打つイメージ

最下点の手前ならボールの下をくぐらない
ボールを左に置くケース
左足上がりでボールが右足寄り~真ん中だと、クリーンに当てやすいものの、その後すぐにヘッドが斜面に刺さってしまう。左足寄りにすると斜面に沿ってヘッドを振り抜きやすい。

左足下がりはボールを左に置く
TEXT/Daisei Sugawara
PHOTO/Yasuo Masuda、Hiroaki Arihara
THANKS/上総モナークCC、学芸大ゴルフスタジオ
※週刊ゴルフダイジェスト7月8日号「寄せるアプローチ」より一部抜粋