鍋谷太一は現在29歳。高校在学中のジュニア時代、男子ツアーに出場し予選を突破、高校生でプロ宣言した時は業界で話題になったが、プロ転向後の鍋谷に華々しい活躍はなかった。各メーカーからすれば使用契約を交わす存在ではなかったとも言える。

ヨネックスと男子のプロゴルファーとして契約するのは鍋谷太一だけ。契約に至った経緯ではなく心意気が今どきのアスリートにしては珍しい
鍋谷がシード権を手にしたのはプロ10年目、初優勝は翌年、2023年のカシオワールドオープン。キャリアとしては遅咲きだが〝この優勝をきっかけに新契約〟のパターンにもならずにいた。「初優勝の前はもちろん、優勝した後も、『クラブ契約をしたい』という想いは変わらずにいました」。かつてのゴルフ業界とは違って一部のプロを除けば、今は〝契約すれば即契約金〟という時代ではなく、当然、鍋谷もそれが目的ではなかった。
ヨネックスのゴルフ担当者に聞くと、「昨年、石川遼選手が2年ぶりに優勝した時に、『契約メーカーの人たちが自分のことのように喜んで祝福しているシーンが目に焼き付いています』と話していました。『あれをプロゴルファーとして目指したい』と改めて感じ、気持ちを強くしていたようです」
一人のプロとして勝っていく個人スタイルよりも、チームとしてプレーして勝ち、様々な相乗効果を生み出すプロになりたい。鍋谷はそう考えたようだ。
チームヨネックスとして
頑張りたい
「そういったタイミングで、ヨネックスさんからドライバーのテストをしてみないかとお話をいただいたのがきっかけです。今年(4月)からヨネックスさんと契約させていただき、より一層がんばろうという気持ちでいます」
続けて、「ヨネックスの女子プロには活躍中の岩井姉妹がいますが男子プロは自分だけ。ブランドを背負って活躍して、ヨネックスの看板選手と言われる選手を目指したいです。プロゴルファーとして、それを強いモチベーションのひとつにしたいと、ずっと想っていました」
〝勝つためにメーカーに縛られず戦いたい〟というのもプロらしいが、〝契約メーカーと切磋琢磨しながら勝って喜びを分かち合いたい〟という鍋谷。今ではその姿勢がむしろ新鮮だ。JGTOツアー前半を終えて鍵谷の賞金ランクは47位、後半戦からの巻き返しに注目したい。