
25年全英オープンでメジャー4勝目を挙げたスコッティ・シェフラー。全米オープンを勝利するとグランドスラム達成する(撮影/姉崎正)
こんにちは。SPORTSBOX AI 日本アンバサダーの北野達郎です。今回は海外男子メジャー「全英オープン」で、メジャー4勝目を挙げたスコッティ・シェフラー(以下シェフラー)の後方からのアイアンスウィングをスポーツボックスAIのデータと共に解説させて頂きます。シェフラーのスウィングの特徴は、以下の2点です。
①右足を左後方に引くことで、骨盤が前に出ない
②似ているノーマンとの違いはフォロースルーの手の位置と、骨盤の回転角度
また中盤では、シェフラーから学べるアーリーエクステンションとの比較についてもご紹介しています。それでは早速チェックしてみましょう!
右足を左後方に引くことで、骨盤が前に出ない
まずはトップとインパクトに注目しましょう。シェフラーといえば、右足を左後方に引く独特のフットワークが特徴的ですが、この動きは実は骨盤が前に出るスウィングエラーの1つ「アーリーエクステンション」防止に役立ちます。それを裏付けるデータがあります。「PelvisThrust」は、骨盤がアドレスの位置から前後にどれだけ移動したか? の距離を表します(プラスはボール側の前方へ、マイナスは背中側の後方への移動距離)。シェフラーのトップとインパクトでの骨盤のデータを見ると、トップとインパクトともにマイナス1.9cm(後方)で、常に骨盤がアドレスより前方に出ず、むしろ後方に下がっていることがわかります。

画像①トップとインパクトの比較/ともにアドレスより後方に下がっていることがわかる
スポーツボックスAIが独自で調査した、インパクトでの骨盤の前後の移動距離における海外男子ツアーレンジは、マイナス2.3cm~プラス4.3cmですので、シェフラーはツアープロの中でも骨盤があまり前に出ないタイプであることがわかります。シェフラーの右足を左後方に引く動きは、骨盤が前に出にくくなる効果があることが、このデータによってわかりますね。
骨盤が前に出るスウィングエラー「アーリーエクステンション」とは?
ここで、「アーリーエクステンション」について解説します。アーリーエクステンションとは、骨盤がアドレスの位置より前に出る動きのことで、この動きは手元が通るスペースを狭めてしまうので、骨盤と同じく手元も前に出てインパクトすることになります。「Hand Thrust」は手元がアドレスの位置から前後にどれだけ移動したか? の距離を表します(マイナスは右、プラスは左)。画像②は左がアーリーエクステンションの傾向があるアマチュアゴルファーで、右がシェフラーの3Dアバターですが、インパクトでの骨盤と手元の位置が大きく異なるのがわかります。

画像②アマチュア(左)とシェフラー(右)の3Dアバター比較/骨盤と手元の位置にかなりの違いがある
このアーリーエクステンションによって骨盤と手元の位置が前に出ると、まずクラブのトウダウンが大きくなりますので、適正なインパクトライを保つのが難しくなり、ミスショットの確率が高くなります。この記事をご覧の皆様でアーリーエクステンションの傾向がある方は、シェフラーのように右足を左後方に引くフットワークを試してみると良いでしょう。
似ているノーマンとの違いはフォロースルーの手の位置と、骨盤の回転角度
最後に、右足のフットワークが似ているといわれるシェフラーとノーマンを比較してみましょう。1986年と1993年の全英オープン優勝者であるグレッグ・ノーマンは、全盛期にシェフラーと同じくダウンスウィングからフォロースルーにかけて右足を左後方に引く動きがあり、シェフラーが頭角を現してきたときに「ノーマンと似ている」と話題になりました。確かに、シェフラーもノーマンも右足のフットワークは似ていますが、フォロースルーの手の位置に違いがあります。

画像③シェフラー(左)とノーマン(右)の比較/骨盤の回転角度が多いシェフラーは、手を左に振るのに対して、ノーマンは手がより目標方向に振っている
シェフラーは、フォロースルーで手がマイナス13.4cm(後方)と、より左に手を振り抜いているのに対して、右のノーマンは手がマイナス10.1cm(後方)と、シェフラーに比べるとより目標方向に手を振り抜いています。これは骨盤の回転角度(PelvisTurn)が関係しています。もし右足を引く動きを試す際には、「骨盤の回転が多いタイプ」なら、シェフラーのように手は左に振ってフェードボール、「骨盤の回転が標準または少ないタイプ」なら、ノーマンのように手は目標方向に振ってドローボールが出るように練習すると良いでしょう。
今回はスコッティ・シェフラーの後方からのアイアンスウィングを解説させて頂きました。今回の優勝でシェフラーが唯一まだ勝っていない全米オープンに勝てば、マキロイに続くキャリア・グランドスラマーになるチャンスが出てきました。ミケルソンと同様に残すは全米オープンとなったシェフラーのキャリアグランドスラムはあるのか!? 注目ポイントがまたひとつ増えましたね!