8月1~2日、「JAPAN WR4GD TOUR SERIES」の「東海マスターズ WR4GD カップウイークエンドシリーズ」が岐阜の麗澤瑞浪GC高原Cにて開催されました。この大会は日本障害者ゴルフ協会(DGA)主催のシリーズの第1戦目。本ツアー名に入る「WR4GD」とは、世界障害者ゴルフランキングのこと。2019年1月、ゴルフをパラリンピックの正式種目にすることを目指して、R&AとUSGAが設定しました。
実は日本では、WR4GDの対象試合は現在3試合しかなく(「日本障害者オープンゴルフ選手権」、毎春各地方で行われる「障害者オープンゴルフ選手権・日本片マヒ障害オープンゴルフ選手権」、「グリコパラゴルフ選手権」)、もっと増やしたいという思いが主催者にも選手にもありました。また、ツアーと名付けられているのは、日本がアジアの障害者ゴルフの基点と認められ、将来的にはアジアで行うツアーにしたいと考えているからだと言います。

グロスの部優勝の小山田雅人さん(右/71・79/HC0)とネットの部優勝の伊藤寿さん(左/77・76/HC9.2)「第1回で優勝したくて来てそれを実行できて嬉しい」(小山田)「小山田さんと2打差だったので、もうちょっと頑張れれば……でもネットで優勝することができて嬉しい。次回も頑張ります」(伊藤)
本ツアーの創設に携わったDGAの石塚義将さんによると、
「きっかけは今年の5月にイギリスで開催された『The G4D Open』の際、R&A、DPワールドツアー、EDGA(ヨーロッパ障害者ゴルフ協会)とのミーティングで、日本がアジア圏でWR4GDの対象となる試合をもっと増やすべきだという議題が上がりました。現在世界各国で140試合以上の世界ランキング対象試合が毎年開催されています。しかし、アジア圏ではたったの3試合でそのすべてが日本国内での試合。ヨーロッパ圏では毎週のようにWR4GDツアーが開催されており、ランキングを上げるチャンスが多くあります。その一方で日本は年間たったの3回。これでは選手にとっては“運試し”をしているに等しく、実力がランキングに表れないといった現象が起きてしまいます。そこで誕生したのが『JAPAN WR4GD ツアーシリーズ』です。小規模ではありますが世界ランキング対象トーナメントを月1ペースで開催することを目標にし、アジア圏の選手にランキングをもっともっと上げられる機会を作りたいと考えたのです」。

記念すべきシリーズ初戦に参加した選手とスタッフたち。「感謝のひと言に尽きます。6月に企画を立ち上げてから、わずか2カ月という非常に短い準備期間のなかで、この大会が実現できたのは、皆さまの迅速かつ柔軟なご対応とご協力があってこそでした」(石塚)
この“想い”が急ピッチで実現されました。「世界ランキング対象ツアー」となると、その開催基準をしっかり満たすべく、数多くのレギュレーションが存在します。そのハードルを越えるため、ツアープロ経験と海外留学経験がある石塚さんの知識や英語力が生きました。
「特に難しかったのが、通常営業中のゴルフ場で、世界基準に適合したトーナメント環境を整えることです。人数的にもコースを完全貸し切りにすることは難しいため、一般営業を続けながら世界水準の競技環境を整備するには、ゴルフ場側の深い理解と協力が不可欠でした。そんななか、非常にありがたかったのが、東海エリアで『月刊ゴルフマスターズ』を発行されている株式会社D&Hさまのご支援です。麗澤瑞浪GC高原Cでの開催が実現し、スタッフの皆様にも全面的にご協力いただきました。当初は障害者ゴルフへの理解がどれほどあるのか不安もありましたが、実際には想像以上に快く受け入れてくださり、真夏の時期にも関わらずコースを最高の状態に整備してくださいました」

麗澤瑞浪GC高原Cで開催。「試合当日にペナルティエリアや修理地のマーキングがすべて明確に補正されていたり、細やかなご配慮に、心から感謝しています」(石塚)
さて、最終的に12名が参戦した本大会(結果は11名のみ)。想像を超える猛暑の今年ですから、気温は40度近くになったようですが……熱中症対策をしっかり取りながら無事終了。
岐阜在住の車椅子ゴルファー、藤田宏さんは、「ランキングの対象になる試合なら日本、アジアの選手は嬉しいと思います。僕自身は、ゴルフをひとつの楽しみとしてやっているのでランキングはあまり気にしませんけど、すでに趣味の域を超えていますね(笑)。でもこういう試合は増えてほしいですし、もちろん近くで開催されてありがたいですけど、関東でも関西でも参加したいと思います」。
最近の大会で常に上位に食い込む、好調の伊藤寿さん(右下腿切断)は、「すごくいい大会です。休みが土日なので土日開催はありがたい。平日だとしょっちゅう有給は取れないんです。僕は海外遠征が目標です。その権利に影響するポイントのためのランキングですからがんばりたいですし、こういう試合がもっと増えてほしいですね!」。

開催コースは、全国的に見ても暑い地域にあるが、熱中症対策を行い、夏ラフにも負けず、全国から集まった障害者ゴルファーたちが競った
日本の障害者ゴルファーは世界で戦える実力を持っているという石塚さん。
「その可能性を発揮するためには、戦う”場”が必要です。JAPAN WR4GDツアーシリーズは、まさにその”世界への玄関口”として今後も継続的に開催していきます。また、国内ランキング制度の構築やジュニア障害者ゴルファーの発掘・育成など、次世代を見据えた仕組み作りにも着手していく予定です。日本から世界へ――障害があっても挑戦し続けられる環境を、これからも一歩ずつ形にしていきます」

「同じ組の人の参考になるように回ろうと思った」という小山田(右前腕切断)。「最近不調だった原因は、義手の小指が邪魔していることだとわかった。これを課題にまた取り組んでいきたいです」と常に見せる向上心こそゴルファーの鏡となる
本シリーズの2戦目はウイークデイシリーズと銘打ち、8月28~29日に岐阜の恵那峡CCで開催されます。まだ空きがあるとのこと(参加希望はこちらへ)。8月以降は、11月に日本障害者オープンがあるのでいったんお休みし、12月に今年ファイナルの大会を開催したいということです。
日本からアジアへ、そして世界へ。夢は広がっていきます。
PHOTO/DGA