昔の300㏄とは根本的に製法と設計が違う
GD 今日は「ギア問答#37」では触れられなかったミニドライバー界隈の話を深掘りしていきたいと思います。テーラーメイドから『r7クワッドミニ』が出たことでブームは継続中という見方ができますが、一番疑問である「誰が」、「どのような目的で使用するのか」、この部分からお聞かせいただけますか?
長谷部 ちょっと古い話になりますが、テーラーメイドが十数年前にロフト12度の『SLDR Sミニドライバー』を作りました。今回のミニドライバーの起点がそこにあるかどうかは断定できないんですけど、460㏄が標準となってきていたドライバー開発の中で取りこぼしてしまっていた小さいヘッドを好むプロが少なからずいました。日本で言えば宮里優作プロとか宮本勝昌プロのように、大型ヘッドに柔軟に対応できなかったゴルファーがいるんですが、今回のミニドライバーは、それとは違って「フェアウェイドライバー」のような感じで開発が進んでいると思います。

左から「SLDR Sミニ」、「r7クワッドミニ」
GD 今回のミニドライバーはヘッドサイズでいえば300ccだとした場合、昔の300ccの時はすでに45インチに到達していたわけなんですよ。それに対してミニドライバーは45インチ以下と長さが短く、単純にヘッドサイズを昔に戻しただけではない。
長谷部 その通りだと思います。ヘッド重量でいうと210グラムより重いのが今のミニドライバーの標準的な重さになっていると思います。長さは43.5インチ、ロフトも11度から13度の設定なので、そういう意味でいうと昔のドライバーに戻ったわけではありません。たまに「中古市場に似たようなヘッドサイズがあるじゃん。あれでいいんだよ」みたいなことを言う人がいますが、まったく違うモノになります。
GD 昔の300ccのドライバー設計と今の300ccのドライバー設計は根本的に何が違うんですか?
長谷部 昔の300㏄の頃は、チタンフェースの製法とか設計といった部分では、まだ始まったばっかりだったので、今のような様々な工夫ができませんでしたが、今はフェースの反発とか設計に関しては非常に優れています。フェース形状の違い見て欲しいんですけど、昔は反発を良くするためディープフェースにせざるを得なかった。ドライバーなのでティーアップして打つのだから、フェースの下めではなく上めで打つことを考えていた。今のミニドライバーはむしろフェアウェイで打つことを考えたときに、フェースの下めでも打てる工夫がされていると見たらいいんじゃないですかね。
GD そうするとミニドライバーはフェアウェイウッド設計なわけですか?
長谷部 スプーン(3W)とは違うので、低重心にしすぎないように工夫をしていたりしています。あくまでも短いドライバーという見方でいいと思うんですね。昔ほどディープフェースにしていない、むしろシャローで扁平に見えて体積は小さいけど大きく見える工夫をしている。昔の300ccの物と比べれば、投影面積は大きくなっているはずです。
すべて計測しているわけではないので推測ですが、フェース面のロールも大きめにしてフェースの下めで打ってもボールが拾いやすいなどの工夫がされていています。ティーショットで打つことを考えながらも、「ちょっと頑張ればフェアウェイからでも打てますよ」というクラブじゃないですかね。
GD それって技術的にかなり上手い人の話であって、大慣性モーメントでも打てる、打てないで言ったら、“打とうと思えば打てちゃう”わけじゃないですか。大慣性モーメントが打てないからミニドライバーにいくという理由にはならないように思います。
長谷部 打てないじゃなくて、大慣性モーメントのドライバーの曲がらなさとか飛びすぎとか、そういったところに危惧を持っているツアープレイヤーがある一定数いて、常に320ヤードを超えてしまうようなプロからすると、280ヤードぐらいを点で狙っていきたいときに使うものだったりするかもしれません。
アダム・スコットがドライバーとミニドライバーを2本入れていることを考えると、ただ単に真っすぐ遠くに飛べばいいということではなく、コースレイアウトやコンディションに合わせた使い方をしているという考え方ができます。