PGAツアーのプレーオフシリーズ第2戦「BMW選手権」の記者会見では、シーズンの最終盤を迎え、最終戦「ツアー選手権」での優勝者が年間王者「フェデックスカップ」の栄冠を手にする現行の制度について、選手たちの見解が問われた。彼らの回答からは、この制度に対する賛成と反対、そしてその根底にあるゴルフという競技への深い洞察が垣間見えた。
画像: BMW選手権の試合前記者会見でマキロイやローズは新しいフェデックスカップの制度について何を語ったのか(撮影/姉崎正、岩本芳弘)

BMW選手権の試合前記者会見でマキロイやローズは新しいフェデックスカップの制度について何を語ったのか(撮影/姉崎正、岩本芳弘)

パトリック・カントレーの見解:「シーズンを通じた活躍」と「最終週の勝利」の融合

2021年にフェデックスカップを獲得した経験を持つパトリック・カントレーは、この制度を肯定的に捉えている。彼は、シーズンの成績が最終戦の出場資格を決定する重要な要素であることを強調した。「ツアー選手権は、シーズンを通じたプレーがなければ出場すらできない。そして、そこで最高のゴルフをしなければ勝つことはできない」と語り、年間を通じて良いプレーをすることの重要性を指摘している。
 
また、カントレーは、他のスポーツのチャンピオンシップと比較しながら、「レギュラーシーズンで最高の成績を収めたチームが、決勝でハンディキャップを得るわけではない」と述べ、最終戦で全員が横並びで最高のプレーをした者が勝つという公平なシステムを支持している。最終的に、年間を通じて上位30名に入った選手たちが、最終週にすべてをかけて戦い、勝利を収めることは「大きな偉業だ」と結論付けた。

ローリー・マキロイの見解:「最高の選手が勝つとは限らない」というジレンマ

3度のフェデックスカップ優勝を誇るローリー・マキロイは、この問題に対し、より複雑な感情を抱いている。彼はまず、以前採用されていたハンディキャップ制(スタートストローク)が廃止されたことを「良いことだ」と評価。しかし、現行の「ツアー選手権」が独自のイベントとして独立しているように感じられると述べ、その優勝者が必ずしもシーズン全体のベストプレーヤーを意味するわけではないと指摘している。
 
マキロイは、もしスコッティ・シェフラーのように圧倒的な成績を収めている選手が優勝すれば、彼は文句なしの年間王者だという前提を置いたうえで、「ツアー選手権は、シーズン全体の集大成というよりは、単発のイベントのように見える」と話す。彼はまた、フットボールのプレミアリーグの例を挙げ、シーズンを通じて圧倒的な強さを見せたチームが文句なしの王者になることこそが、スポーツのあるべき姿だと示唆している。

ジャスティン・ローズの見解:公平な競争への回帰と高まる価値

2018年にプレーオフイベントでの優勝なしでフェデックスカップを手にした経験を持つジャスティン・ローズも、マキロイと同様に、現行の制度を「クリーンな」終わり方だと評価。彼は、以前の制度では「最高のプレーをした者が、必ずしもトロフィーを手にできるわけではなかった」と述べ、スタートストローク制の不公平感を強調した。
 
「今では、アトランタで全員が顔を合わせ、『さあ、今週は誰がやるんだ?』という状況になる」と語り、最終戦で最高のパフォーマンスを発揮した者が勝者になるという、純粋な競争の形を歓迎しているようだ。彼は、これにより「ツアー選手権」の価値がさらに高まり、選手にとって最大の目標の一つになっていると話している。

キーガン・ブラッドリーの見解:レギュラーシーズンの評価と最終戦のドラマ

ライダーカップの主将も務めるキーガン・ブラッドリーは、レギュラーシーズンの戦いをより評価する現行制度を「素晴らしい」と称賛した。「スコッティ・シェフラーがナンバーワンであるべきだ。なぜなら彼が最高のプレーをしたからだ」と述べ、シーズンを通じた一貫した強さを称えた。
 
その一方で、最終戦の「ツアー選手権」については「誰かが一週間でフェデックスカップを勝ち取ることになるだろう。本当に興味深い」と、そのドラマチックな展開に期待を寄せている。「最高の選手たちが最大のイベントで常に顔を出す」と語り、この新しい形式がゴルフに新たな興奮をもたらすと考えているらしい。

デニー・マッカーシーの見解:「実力者が競い合う公平な場」

デニー・マッカーシーは、プレーオフ制度の調整を「よりシンプルで公平」なものと捉えている。「全員がゼロからスタートする。シンプルであり、最後まで戦うだけだ」と語り、現在の制度がより分かりやすくなった点を強調した。
 
彼はまた、ゴルフコースの難易度について問われた際、「公平で挑戦的な」コースを好むと述べ、最終的に実力のある選手が上位にくるべきだという考えを披露した。これは、プレーオフの決定方式においても、シーズンを通じて結果を残した選手たちが、最終的に最高の舞台で公平に競い合うべきだという彼の信念と重なるだろう。

進化するフェデックスカップ、選手たちの多様な意見

PGAツアーの年間王者「フェデックスカップ」を巡る議論は、常に進化している。今回、各選手のコメントから明らかになったのは、最終戦の優勝者が年間王者を兼ねる現行制度が、多くの選手に受け入れられつつあるということだ。それは、シーズン全体を通じた努力を最終戦の出場権という形で報いつつ、最後に最高のパフォーマンスを発揮した者に栄冠を与えるという、公平かつドラマチックな要素を兼ね備えているからだと思われる。
 
しかし、マキロイが指摘するように、圧倒的な強さを見せた選手が必ずしも報われるとは限らないというジレンマも依然として存在する。それでも、選手たちは皆、最終戦「ツアー選手権」が最高の舞台であり、そこで戦うこと自体に大きな価値を見出している。フェデックスカップの歴史は浅いが、今後も議論と変化を繰り返しながら、より洗練された「年間王者」のあり方を模索していくことになるだろう。

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