タイ初といえる本格的リンクスタイプのバリシアーゴルフリンクスは、緩やかな起伏を持つ大地にレイアウトされ大きな池と広いウェイストエリア、そして個性的なグリーンにより見た目よりもはるかに難易度は高い。だが、それだけに「何度も挑戦したくなる」コースだと断言できる。

1打目をミスすると長い旅路になる
17番ホール/616・585・416ヤード
パー5(LONG)

18ホール中、最も距離がある打ち上げ右ドッグレッグのパー5。

果敢に攻めることを要求するホールであり、1打目で大きなウェイストエリアを飛び越す必要がある。ウェイストエリアを越えたフェアウェイには、6個のバンカーが横一列に待ち構えている。18番フェアウェイのバンカーを入れると合計7個のバンカーとなり、そこに入れるミスは避けたい。

2打目以降の右サイドには、18番ホールと隔てるウェイストエリアがグリーン近くまで伸びていてスライスは打ちたくない。グリーン手前にバンカーとマウンドがあるがグリーン左側にはバンカーはない。

距離のあるパー5なので無理をせず確実にショットをつなげて攻めるホールだ。リドーCCの17番(563ヤード/パー5)は、セントアンドリュースの14番(567ヤード/パー5/LONG)を参考にしてマクドナルドが考案したとされ、HC2の難ホールだった。終盤の難ホールでしかも距離もある。

レイアウト図を見ると、18番フェアウェイと共有するフェアウェイ右サイドに打つことができれば、距離が短くなり飛ばし屋なら2オンも可能と思われる。スライスして右方向に打ってしまってもウェイストエリア越しに攻めることもできる。

画像5: 17番ホール/616・585・416ヤード/パー5(LONG)

17番ホール/616・585・416ヤード/パー5(LONG)

グリーンは巨大(1375m²)だが、大きな起伏があり他のグリーン同様にボールの落とし場所によりパットの難易度が大きく異なる。距離と方向性の両方が求められ、非常に手強いホールだ。レギュラーから543ヤードだが、実際のプレーではかなり距離を感じるホールだった。

A・マッケンジー博士の2ショットホールを体験
18番ホール/498・468・416ヤード
パー4(HOME)

距離のあるパー4だ。1打目はウェイストエリアを越えてフェアウェイに落とした上で、右方向へ打っていくルートが用意され、自分の飛距離と攻める気持ちとの相談で攻めていくルートを決めればよい。

グリーンの右側に大きなバンカー、左角にもバンカーがある。パー4ながら498ヤードと距離があるので、このホールも無理をせず確実なショットをつないでいきたい。リドーCCにおける18番(424ヤード/パー4)のデザインソースは、同時期に活躍し多くの名コースを残しているアリスター・マッケンジーが、1914年カントリーライフ誌の「理想の2ショットデザインコンテスト」で優勝した時のアイデアを実現させたもの。

つまり、このホールに限ればマクドナルド、レイナー、マッケンジー、そしてハンスと出会い、対峙できる最高のフィニッシングホール(HOME)だといえる。

ホールは打ち上げでフェアウェイ左が高く、右方向へと傾斜がある。グリーン方向は全体の起伏のため視認できないが、最短のルートとなる右の島状のフェアウェイにボールを運べば、丘の上にピンフラッグを見つけることができる。ホールの左は道路がありコース外扱いのOBエリアなのでフックボールは避けたい。

2打目は打ち上げになり、グリーンはかなり大きくうねりもあることから正確な距離のショットが求められる。ゴルフのセオリーのひとつ「手前から攻める」ことの大切さを教えてくれるホールでもあった。

◆インをプレーして思ったこと

アウトコースは全体的に難易度が高く感じ、インコースは各ホールに変化がある面白さがあった。

アウトの4番(586・532・450ヤード/パー5)は攻略ルートが2つあるにもかかわらず、どちらから攻めても難易度が高く、まるで前に進まない気がしたが、これに似た難易度の高さを感じたのがインの17番(585・543・451ヤード・パー5)だった。17番には攻略ルートが2つあると明確にしていないが、18番のフェアウェイが広く共有している部分があることから飛距離が出せるゴルファーには右から攻めると2オン可能と思われる。

アウト、インとも共通しているのは、1ホールたりとも気を抜くことができないこと。だが「そんなに難しい」と誤解しないでほしい。なぜなら、距離の短いホールも用意され、パー3ではグリーンオンすればパーという報酬も手にすることは可能だからだ。

アベレージゴルファーの自分でも、パーが3ホールあり、うねるグリーンながらも1パットのホールが4回あり、2パットは12ホールあった。飛距離不足の場合、広大なウェイストエリア、深いバンカー、想定外の転がりと警戒を促す池などによって難しい印象を与えるが、その反面、攻める面白さ、上手くいった時の満足度があり、ミスしても自分の技量を超えるコースだからと納得でき、次回の挑戦時の糧にすることができる。

「打ちのめされても、諦めずに挑む」ことを教えてくれるコースなのだ。結果オーライでスコアが良くても、満足度はそれほどではないだろう。バリシアーGLは「良いコースが良いゴルファーを育てる」という名言に相応しいコースだと思う。

ギル・ハンスが描いたバリシアーGL(10~18番ホール)の設計図

リンクスで始まり、
リンクスで技量を育む。
その大切さを再認識できた

今回、バリシアーGLを訪れて一番感じたことは「ゴルフゲームはリンクスで始められ、時代が変わってもリンクスはリンクスであり続け、永遠にゴルファーの挑戦を待ち続けている」というもの。

リンクスは決して色褪せることなく、ゴルフというゲームに命を与え続けていく。リンクスに挑むことは自然との対峙でもあり、ゴルファーは楽しみながらも悩み、その中で喜びを見出していくものだとも思った。だからゴルフは終わりのないゲームなのだ。

今、世界の潮流は間違いなくリンクスタイプのコースだと言える。アメリカゴルフ誌のあるパネリストが「日本は100年遅れている」と言い放ったが、海に囲まれているが日本には挑戦意欲を限りなく喚起させてくれるような本格的な“リンクス”はひとつもない。

その意味では、バリシアーGLをプレーできるゴルファーは幸せだと言える。「林間でフラットなコース」が高く評価される日本独自の価値観を外し、バリシアーGLのような、世界基準といえる難易度の高い本格的リンクスが、この国にも出現すればよいと切に願う。

プレー後に暮れなずむバリシアーGLに佇み、ギル・ハンスそして「本物」に出会えてゴルファーとして至福なひと時に身を委ねることができ、1860年に第1回全英オープンが行われたプレストウィックを初めて訪れた時と同じように「驚きと感動、言葉で表現できない満ち足りた気持ち」になれたのは、終生忘れ得ぬ出来事だった。

画像: 親しみやすい木を基調としたハウスはシンプルながら居心地が良く個室も用意されている

親しみやすい木を基調としたハウスはシンプルながら居心地が良く個室も用意されている

画像: 芝から打てる練習場は300ヤードと距離がある

芝から打てる練習場は300ヤードと距離がある

バリシアーGL アウトコース編はこちら

This article is a sponsored article by
''.