
8本の指でクラブを握る「エイトフィンガー」の高校生3人。右から加藤蓮くん、大地陸遥くん、久我健心くん
日本のジュニア日本一を決める、この大舞台に、果たして「エイトフィンガー」なる不思議なグリップでプレーしているジュニアはいるのか。霞ヶ関CCで開催された15~17歳(高校生)の部で3人の“桜美ジュニア”を直撃した。
「エイト」とは数字の「8」。右手の人差し指と中指の間にシャフトを置き、8本の指で握るイメージになるグリップである。考案者である桜美式ゴルフの篠塚武久コーチはこう説明する。

左手5本指と右手の小指、薬指、中指の3本でクラブの握る「エイトフィンガー」グリップ
「一番大きな効果は、右手を3本の指と2本の指に分けるので、“握らなくなる”こと。だから体全体がリラックスし、筋肉に頼らず振れるからスムーズなスウィングになり故障しません。そして、ゴルフの敵、“ねじり”がなくなるので、飛んで曲がりません」
桜美式ゴルフの代名詞といえば、週刊ゴルフダイジェストの連載でお馴染みの(我らが!)ゲンちゃんこと、時松源藏プロたちも使う「テンフィンガー」だが、今やそれがさらに進化しているのだ。
3人のグリップをよーく見てみると、確かにクワガタ虫のような形で握っている。しかし、振っている姿にはまったく違和感はなく、むしろスムーズでダイナミックなスウィングだ。

個性的なグリップだが、飛距離が出て方向性が安定するという
加藤蓮くん(沖学園高1年)は、「右手を使わないので、自然に振り抜けている感じがします。かといって、飛ばないわけではないんです。手を使わないから体が使えてインパクトにエネルギーを集約できる。だからボールが飛んで曲がりません」。本大会1、2日目はFWキープ率、パーオン率ともに100%。最終日は「どちらも40~50%と崩れました。でもグリップのせいではないです(笑)」。ゴルフを始めたのは11歳と早くはない。最初から「エイトフィンガー」だったので「これが普通」。憧れのプロを聞くと、「高校の先輩、出利葉太一郎さんです」と言って、来週の団体戦優勝へ向かっていった。
大地陸遥(オオチ リクト)くん(沖学園高3年)は、体は決して大きくないが、ドライバーで290~300ヤード飛ばす。
「これで握ると“クラブが飛んで行きそう”という大人がいますけど、そのイメージこそがいいんです。だって力を抜くことが目的なんですから。力が入るとミスするし絶対飛びません」
ゴルフを始めた7、8歳頃はテンフィンガーだったが、「もう戻さないと思います。ケガもないですし」。憧れのプロはいない。自分が唯一無二のプロになるべく、来週からQTへの挑戦が始まる。

久我くんは親指と人差し指を握らない「エイトフィンガー」!(撮影/週刊GDツアー担当)
久我健心くん(熊本国府高3年)は、他の2人とは少し違い、親指と人差し指を握らない「エイトフィンガー」。「力を抜くのがこのグリップの目的ですから、これでも同じ効果があるんです」。最初はオーバーラッピングで握っていたが、小学生時代に左手の甲を疲労骨折、体にやさしいスウィングを求めて12歳で桜美式ゴルフの門を叩いた。「振りやすくて曲がり幅が減りました。力が抜けて軽く振れるのでケガもないですね」。高校卒業後は九州東海大に進み、ゴルフ部で修業を積み、プロになりたい。「カッコいいフェードを打つコリン・モリカワが好きです」。
試合後、篠塚武久さんに電話すると、「皆、元気やったですか? 成績はどうでした?」と心配そうな声。「暑いなか、全員、しっかり予選通過していましたよ」と伝えながら「エイトフィンガー」についてのジュニアたちのしっかりした受け答えを話すと、嬉しそうに「誰もがラクに上達するエイトフィンガーでゴルフが変わるし、ゴルフ界が発展するんです。『みんなが、ゴルフ改革者の1人になるんぞ』といつも伝えているんで、そんな答えが出るんやろね」
エイトフィンガーは、不思議なグリップではなくて、ゴルファーそれぞれの夢を叶えるグリップだった!
撮影/大澤進二