今年6月のミズノオープンで、プロ10年目のツアー初優勝を挙げた阿久津未来也。「変化」への熱望、勝てそうで勝てない時期を経て、30歳で勝利をつかんだ。2年半前から師事するドラコンプロの山崎泰宏は何を伝えてきたのか、週刊ゴルフダイジェスト9月9日号では、彼から話を聞いた。「みんゴル」では2回に分けてご紹介。【2回中1回目】
画像: 左が山崎泰宏、真ん中が阿久津未来也

左が山崎泰宏、真ん中が阿久津未来也

阿久津未来也
あくつみきや/1995年生まれ。栃木県出身。3歳でゴルフを始め、作新学院高を経て日大へ。4年時に日本学生で優勝。16年にプロ転向し、21年に初シード獲得。25年ミズノオープンでツアー初優勝。24年からJGTO選手会の副会長としても活躍。

山崎泰宏
やまざきやすひろ/1969年生まれ、長野県出身。小学校から高校までは野球に取り組み、スキーの指導員の資格も持つ。33歳で始めたドラコン選手としての競技を続けながら、ツアープロ含む多くのゴルファーをレッスン。日本ドラコンシニアチャンピオン7回。

低い球から高い球へ。次の課題に向かっている

2人の出会いは22年12月。コーチを探していた阿久津が知人から紹介を受けた。

「シード権はあるけど、優勝するためには何かを変えないといけないと思っていました。ザキ(山崎)さんには、飛ばしたいから習ったわけではなく、どうしたら効率よくスウィングができて長い期間戦っていけるか。本質的なことを学びたかった。でも正直、かなり大きな転換でした。最初は肯定から入っていただいた。僕はトップで間があって、それが嫌いで直したかったけど、『世界にはいくらでもいるし、それは特徴だから生かしていこう』と」

画像: 30歳の全英。ゴルフの幅と視野が広がった

30歳の全英。ゴルフの幅と視野が広がった

山崎はコーチの仕事を「選手を勝たせることではない。何かあれば短期間で直してあげる修理工場であり、よき相談相手でありたい」という。自身もスウィングで悩み、寝る時間以外は勉強に割いてきた。

「オタクのように」研究してきたからこそ、人が悩む感覚はすぐに理解できる。

「ツアープロは教えなくても上手い。だからまず何を悩んでいるのか、どんなイメージでどんな球が出るのかを聞きます。そのうえで、僕はこうしていると伝えたり、クセをどう変えていったらいいか考えたりするんです」

画像: コーチは、研究と選手目線でよき相談者たれ 本やSNSで学び、自身でも発信する。「引き出し(答え)が何個もあって、苦しみを和らげられることも必要。相談を受けたら、良いことは良い、賛成できないことはできないときちんと伝えます」

コーチは、研究と選手目線でよき相談者たれ
本やSNSで学び、自身でも発信する。「引き出し(答え)が何個もあって、苦しみを和らげられることも必要。相談を受けたら、良いことは良い、賛成できないことはできないときちんと伝えます」

自分の考えを実際に“できる”ことが現役ドラコン選手、山崎の強みだ。

「ティーチングの資格は持っていないけど、3年前と言うことが変わらない。それだけ研究して知識があって“選手”としての信頼度もあるんです」(阿久津)

「一番最初、『今までやってきたことと真逆です』と未来也くんに言われました。でも、体の構造や動かし方を物理学的に言ったとき、『やってみます』と言って」(山崎)

阿久津は23年途中のシード確定後、さらに思い切って変化を加えたという。これが今年の初優勝とそれに伴う初の海外メジャー、全英オープン出場につながった。その全英は予選落ちに終わった。

「万全な態勢と体調で臨んだつもりでしたが、反省点は気合いを入れて練習をしすぎたこと。木曜日は少し疲労があったかもしれません。練ランでいろいろ考えたけど、試合では思わぬところに飛んだりミスが出たり。1日であれだけ洋服を替えたこともない。キャリーが240Yでランが40Y出ることも、グリーン周りから7Iか5Iどちらでアプローチしようか悩むことも日本ではほぼない。楽しかったけどかなり悔しい気持ちが残った。経験値しか積めなかった」

画像: ソール幅が狭いローバウンスのウェッジ、2Iなどを準備し挑んだ。「難しい1番で、また象徴的な16番パー3でも風のなか4Iを使ってバーディが取れた。準備も含め、ゴルフの幅や視野が広がったのは間違いない」(阿久津)

ソール幅が狭いローバウンスのウェッジ、2Iなどを準備し挑んだ。「難しい1番で、また象徴的な16番パー3でも風のなか4Iを使ってバーディが取れた。準備も含め、ゴルフの幅や視野が広がったのは間違いない」(阿久津)

その経験値こそ、阿久津のゴルフを次に向かわせる。全英の風は、これまで自分を助けてくれた風とは違った。

「初日後半など、こんなにもパーが取れないのかと……心を折られました。でも、30歳というこの段階で1つ経験できたことは何よりも大きい。海外メジャーに出た選手に、アメリカや欧州でプレーしたいという思いが起きることが本当にわかる。“病みつきになる”という意味は現場に行かなきゃわからないですよね」

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PHOTO/Tadashi Anezaki、Hiroyuki Okazawa、Hiroaki Arihara
※週刊ゴルフダイジェスト9月9日号より一部抜粋

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