ツアー解説でおなじみの佐藤信人プロ。今回は、ノルウェーの27歳、クリストファー・レイタンについて語ってもらった。
画像: 「7月、4位となったドイツのBMW後、『技術というよりメンタル的なことだが、いかに硬くならずに解放するかが重要と気づいた』。硬い思考に陥りがちなゴルフ。リミッターを外して飛ばす、曲げるを大胆にやってみるのも殻を打ち破る方法なんでしょう」(佐藤プロ)

「7月、4位となったドイツのBMW後、『技術というよりメンタル的なことだが、いかに硬くならずに解放するかが重要と気づいた』。硬い思考に陥りがちなゴルフ。リミッターを外して飛ばす、曲げるを大胆にやってみるのも殻を打ち破る方法なんでしょう」(佐藤プロ)

5月のベルギーでDPワールド(欧州)ツアー初優勝、現在レース・トゥ・ドバイで3位につけており、来季はPGAツアーでのプレーが確実に見られそうです。 

同じノルウェーのビクトール・ホブランとは同学年。ジュニア時代から共に〝すごい選手〞として欧州では注目を集めてきました。ノルウェーのみならずスペイン、スウェーデンなどの大きな大会で優勝、アメリカでも伝統あるジュニアオレンジボールで優勝。14年にはトヨタジュニアカップで来日、ホブランと共に団体優勝に貢献しました。18年にはジュニアライダーカップにも選出されています。 

理由は不明ですが、予定していたテキサス大へは進学せずアマチュアで戦う道を選びます。18年のシネコックヒルズGCで開かれた全米オープンでは、予選会を突破しノルウェー人初の出場者となりました(ホブランは19年初出場)。ノルウェーのメディアが興奮気味に「レイタンについてどう思うか」と他の選手に聞いていた光景をボクも鮮明に覚えています。 

同年、Qスクールを26位で通過し、翌19年から欧州ツアーに参戦。しかし25試合で予選通過はわずか10試合でランクは144位と跳ね返されます。Qスクールも82位と失敗し、20年からはチャレンジツアーを主戦場に戦いますが、結果が出ません。23年は23試合とフル参戦しますが、予選通過は10試合でランクも88位。かつての天才も、真剣に引退を考えたようです。 

転機となったのが、気の合う仲間との遊びのゴルフ。YouTube動画を撮影しながら、ゴルフを楽しむマインドを思い出したといいます。すると翌24年は最終戦で優勝。ランクは一気に9位まで上がり、今季は19年以来の欧州ツアーへの復帰を果たしました。そして現在、19試合に出場して予選通過が16試合、うちベスト10フィニッシュが優勝(5月のスーダルオープン)を含む6試合と、キャリアでベストシーズンとなっています。 

レイタンが気づいたのは「ゴルフの楽しさは遠くに飛ばすことと、ボールを曲げて遊ぶこと」。ボクなどは成績が出ないと負の連鎖になりがちですが、レイタンの場合、ゴルフが嫌いにならなかった。〝ゴルフの楽しさ〞を思い出したことが、復活劇につながったようです。 

さて、実はレイタン家はノルウェーでは知らない人がいない大富豪。北欧でレーマトゥセンというディスカウント系スーパーを900店舗展開し、また小売、流通、不動産など手広くビジネスをしているようです。創業者にして一代で財を築いた祖父のオッド・レイタンさんは、ノルウェーのスティーブ・ジョブズと呼ばれる辣腕の経営者。そのレイタン家の御曹司でありながら、自分の道を進む3代目の生きざまも国民には好意的に映ってもいるようです。すでに莫大な遺産が贈与されているとも……。 

かつての天才少年が、改めてその実力を世界に知らしめる日々も遠くはないかもしれません。 

This article is a sponsored article by
''.