
「ライダーカップの普段の試合とは違う激熱ぶりは、なかなか日本人には伝わりにくいですが、その熱さがライダーカップなのです」(佐藤プロ)
"今週"(大会前)行われるライダーカップ。一番最近で接戦になったのは12年のメダイナCC(イリノイ州)での大会。アウェイの欧州チームが最終日シングルスで4ポイント差をひっくり返した大会です。
しかし最近の流れはホーム側の圧勝ですから、ペスページステートパーク・ブラックC(ニューヨーク州)で開催される今大会は、アメリカ選抜の圧勝というのがオーソドックスな見方かもしれません。ところが今回は、アメリカ有利という報道がほとんど見られず、しかし欧州有利という予想が多いわけでもなく、これは接戦が期待できる証しかもしれません。
欧州選抜といっても、LIVゴルフに移籍したジョン・ラームとティレル・ハットンを除けば、全選手がPGAツアーを主戦場にしています。さらに今年はローリー・マキロイのキャリアグランドスラム、トミー・フリートウッドのツアー選手権でのPGA初優勝&年間王者獲得など、多くの話題を提供しました。
欧州メンバーは、23年のイタリアでの前大会からはニコライ・ホイガードが双子の弟のラスムスに入れ替わっただけ。欧州のチームワークのよさを考えれば、ホームであるアメリカの圧勝とはメディアも軽々に断言できない状態にあるのでしょう。ライダーカップ史に残る手に汗握る名勝負が生まれると期待しています。
さて米国選抜のキャプテンは、ミスターライダーカップともいうべきキーガン・ブラッドリー。前出の12年大会で、大逆転負けしたときの選抜選手でした。雪辱を果たすべく臨んだスコットランド、グレンイーグルスの14年大会。最終日のシングルスでジェイミー・ドナルドソンに敗れ、目の前で欧州選手の歓喜する姿を見たのがブラッドリー。実は彼の自宅には、解錠されていないスーツケースがあります。13 年前のメダイナに持参、持ち帰ったもので、今もあのときの屈辱を抱き続けることを示すものです。彼が、ブレンダン・スティール、キャメロン・トリンゲールという一緒に練ランする仲間がLIVゴルフに移籍してもPGAに踏みとどまったのはライダーカップへの思いから。
昨年はBMW選手権、今年はトラベラーズ選手権で優勝。フェデックスランク7位、世界ランク11位の39歳は、自らをキャプテンピックしてもおかしくない成績を残しましたが、今大会はキャプテンに徹します。これもライダーカップへの熱い思いの表れでしょう。
熱い思いといえば、ギャラリーのやじやブーイングを含む声援もライダーカップの見どころのひとつ。特にニューヨーカーの声援は味方にも容赦がありません。ニューヨークで開催されるのは95年以来30年ぶりですが、ホームで敗れた米国代表、特に主将のラニー・ワドキンスの采配には容赦のない言葉が投げつけられたものです。
16年大会はマキロイとP・リードが大声で叫びすぎて声が枯れ、18年はフリートウッドとモリナリの活躍が〝モリウッド〞という新語になり、21年はシングルスで敗れたマキロイの涙ながらのインタビュー、23年はマキロイとP・カントレーのキャディによる〝帽子事件〞とそれに端を発してJ・トーマスのキャディとの間で〝場外乱闘〞に発展するなど、プレー以外でも数々の伝説とドラマが作られてきました。今年はどんな伝説が作られるのか、楽しみです。(大会前)
撮影/岩本芳弘
※週刊ゴルフダイジェスト2025年10月7日号「さとうの目」より
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