
堀越良和
豊富な試打経験に裏打ちされた知識と試打技量から大手メーカーのシャフトやヘッドの開発に携わる、“キング・オブ・試打”。クレアゴルフフィールド所属
そもそも「コンポジットシャフト」って?
スチールなどの金属素材とカーボン素材を複合させて、それぞれの特徴を併せ持ったアイアン用のシャフト。

スチールとカーボンの両方の良さを併せ持つシャフト
ネリー・コルダ(画像左)はスチールファイバーを使用。渋野日向子(画像右)はフジクラのMCIを使用

ツアーでも使用している選手が増加中!
体力が衰え、カーボンシャフトを検討するゴルファーも多いだろうが、スチールとカーボンを複合させた“コンポジットシャフト”の存在を知らない人は意外と多い。今回、堀越良和プロにコンポジットシャフトについて聞いてみた。
「アイアンでスチールを当たり前のように使っていた人が、重く感じてしまうことによって、思い描
くショットとかけ離れた球が出るようになってしまうことがあると思います。そうなった場合に、カーボンを検討したくなりますが、その前にコンポジットシャフトを検討したほうがいいです」
カーボンではなく、なぜコンポジットシャフトのほうがいいのか?
「長年スチールを使用してきた人がカーボンに替えた場合、振り抜きやすさから最初は手応えを感じやすいですが、スチールとは特徴が全く違うため、出球や弾道の変化が良くも悪くも大きいです。コ
ンポジットはスチールとカーボンの特徴を併せ持つので、いきなりカーボンに移行するよりも変化が限定的でスムーズに移行できます」
では、コンポジットシャフトとはどういったシャフトなのか。
「スチールは剛性が高く、しなりが少ないことで、弾道が安定しやすく、コントロール性が高いです。多くのスチールが100~130グラムほどで、この重量帯が年齢とともに重く感じてしまいます。対して、カーボンは軽くて振り心地が良くなり、しなりやすいです。また、打ち出しが高く、キャリーも出やすい。反面、しなりが大きいことで、球が上がり過ぎてしまいキャリーにバラつきが起き、ショットの安定性が乱れることがあります。コンポジットはスチールのしっかり感もあってショットをコントロールしやすく、カーボン特有のやさしさも兼ね備えていて、スチールからスイッチしても、すんなり入りやすいです」
では、どういった場合にコンポジットシャフトを検討すべきか。
「まずは、シニア世代になりアイアンのヘッドスピードが落ちた場合や球を打ち込めなくなった場合
などスチールが“しんどい”と感じるようになったら。また、スピン量が減少し、ランが多く出てしまう場合やキャリーが落ちた場合と、従来より球が上がらなくなった場合もそうです。これらはオーバースペックなクラブを使用した場合に陥りがちで、コンポジットシャフトへの変更を検討するべきです。加えて、ケガを抱えている人も、衝撃を抑えた素材が使われているので、体への負担が少なく、おすすめです」
素材別の特徴
スチールは比較的重く硬いため、ねじれが少なく、挙動が安定し、ショットのコントロール性が高い。対して、カーボンは軽量でしなりやすく、球を拾いやすい。それに伴って、打ち出しが高くなり、球が上がりやすくキャリーが出やすい。

カーボン(写真上)はしなりやすく、球が上がりやすい。スチール(写真下)はねじれにくく、弾道が安定しやすい。そのいいところどりがコンポジットシャフトだ
アイアンシャフトを変更する時の重要なポイント!
「アイアンのシャフトを変更する場合、まず目を向けてほしいのがスピン量です。特に、スチールからカーボンに移行する場合に多くの人が打ち出し角やキャリーに目がいきがちですが、どのシャフトもアイアンは“グリーンで止める”目的のクラブであることは変わりません。番手×800~1000回転程度のスピン量が確保できていれば、グリーンでボールは止まりますし、ある程度の高さも出ます。フィッティングの際はくれぐれも気を付けましょう」

「打ち出し角よりスピン量が重要です」(堀越プロ)