
縁のある日本開催の「ベイカレント C レクサス」でPGAツアー通算10勝目を挙げたザンダー・シャウフェレ(撮影/岡沢裕行)
こんにちは。SPORTSBOX AI 日本アンバサダーの北野 達郎です。今回は横浜CCで開催されたPGAツアー「ベイカレント C レクサス」で、PGAツアー10勝目を挙げたザンダー・シャウフェレ(以下シャウフェレ)のアイアンスウィングをスポーツボックスAIのデータと共に解説させて頂きます。初日の3番ホールパー3で撮影したシャウフェレのスウィングを分析して判明した特徴は、以下の3点です。
①バックスウィングとダウンスウィングでクラブの傾きがほぼ同じ
②アドレスとインパクトで骨盤と手元の位置がほぼ同じ
③両手が体から遠く、コンパクトなトップ
それでは早速チェックしてみましょう!
バックスウィングとダウンスウィングでクラブの傾きがほぼ同じ
まずはバックスウィングとダウンスウィングに注目しましょう。「Shaft DTL Angle」(以下、シャフトアングル)は、プレーヤー後方から見て地面と垂直のラインからクラブがどれだけ傾いたか? の角度を表します(「BCV」はバックスウィング、「DCV」はダウンスウィング)。シャウフェレのシャフトアングルはバックスウィングが31度、ダウンスウィングは32度で、ほぼ同じクラブの傾き方をしています。

画像①バックスウィングとダウンスウィングの比較/クラブの傾き方はほぼ同じ
このクラブの傾き方でもう1つの特徴は、バックスウィングとダウンスウィングともに手元とグリップエンドがボール付近を指していることです。特にダウンスウィングでは、手元とグリップエンドがボールより前を指すとシャロー、逆に手元とグリップエンドがボールとスタンスの間を差すとスティープと言いますが、シャウフェレはシャローでもスティープでもないオンプレーンでクラブが下りています。バックスウィングとダウンスウィングでクラブが近い軌道を通れば、それだけ再現性が高まります。
アドレスとインパクトで骨盤の位置がほぼ同じ
続いて、アドレスとインパクトを比較してみましょう。「Pelvis Thrust」は、骨盤がアドレスの位置から前後にどれだけ移動したか? の距離を表します(マイナスは背中側へ、プラスはボール側へ)。シャウフェレの骨盤の位置を比較すると、アドレスとインパクトでわずか0.5cmしか前に移動していないことがわかります。

画像②アドレスとインパクトの比較/アドレスとインパクトで骨盤の位置がほとんど変わらない
骨盤の位置が変わらないことは前傾のキープにもつながりますので、アドレスとインパクトでの手元とクラブの位置を見ても角度がほとんど変わらないことがわかります。骨盤の位置がボール側に向かって前に出てしまうと、前傾が起き上がって手元も浮いてしまうので、インパクトの再現性が下がってしまうのですが、シャウフェレのインパクトは骨盤や手元が浮くことなくアドレスに近い位置でインパクトしています。先ほどのスウィングプレーン、そしてこのインパクトなど、非常に再現性が高いスウィングは、まさに「究極のシンプル」と言えます。さすがは世界ランク4位のメジャーチャンピオンです!
両手が体から遠く、コンパクトなトップ
最後に、シャウフェレからアマチュアが学べるポイントを1つご紹介します。それは「両手が体から遠く、コンパクトなトップ」です。「ShaftAngle Face On」(以下、シャフトアングル)は、プレーヤー正面から見てアドレスでシャフトが地面と垂直のラインから左右にどれだけ回転したか? の角度を表します(マイナスは右、プラスは左。例えば、トップでシャフトが地面と平行ならマイナス270度)。シャウフェレの正面からのトップはマイナス218度です。スポーツボックスAIが独自で調査した、トップでの正面からのシャフトアングルの海外男子ツアーレンジは、マイナス234度~マイナス259度ですので、シャウフェレのアイアンスウィングはかなりコンパクトです。

画像③トップ/両手が体から遠く、クラブの位置もコンパクト
トップの位置がコンパクトになれば、ハーフスウィングの延長のように打てますので、それだけで再現性は高まりますが、とはいえ「コンパクトなトップとはどこを基準にすべきか?」が難しい人も多いと思います。私のお勧めは、「両手が体から遠い位置にトップを収める」ことです。「Hand Sway」(以下、両手の位置)は、両手がアドレスの位置から左右にどれだけ移動したか? の距離を表します(マイナスは右、プラスは左)。シャウフェレの両手の位置はマイナス51.5cmで、これはアドレスの位置よりかなり手は右側にとどまっています。もし手でクラブを持ち上げたり、両腕が曲がってしまうとトップは大きくなりますが、シャウフェレのように両腕の長さと三角形を保ったまま体から遠い位置でトップを収められると、コンパクトなトップでショットの再現性を高められます。
今回はザンダー・シャウフェレの現地でのアイアンスウィングを解説させて頂きました。今年は初日に視察したこともあり、半数以上の選手のスウィングを撮れましたので、それらは各選手が話題になった際に改めてご紹介したいと思います!